(TV)武蔵 MUSASHI

作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by ENNIO MORRICONE

演奏:ローマ交響楽団、ローマ市合唱団、オペルトン合唱団
Performed by Orchestra di Roma, Coro citta' di Roma, Coro Operton

(ビクター / VICP-62176)

cover
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2003年1月5日より放送のNHK大河ドラマに、イタリアのベテラン作曲家エンニオ・モリコーネが書いたスコア。吉川英治の原作を基に鎌田敏夫が脚本を執筆。出演は市川新之助(宮本武蔵)、堤 真一(本位田又八)、内山理名(朱実)、仲間由紀恵(八重)、米倉涼子(お通)、松岡昌宏(佐々木小次郎)、藤田まこと(柳生石舟斎)、渡瀬恒彦(沢庵)、中井貴一(柳生宗矩)、高嶋政伸(柳生兵庫助)、かたせ梨乃(お甲)、中村玉緒(お杉)、宮沢りえ(お篠)、阿部 寛(祇園藤次)、寺島しのぶ(亜矢)、江守 徹(あかね屋絃三)、ビートたけし(新免無二斎)、西田敏行(内山半兵衛)、中村勘九郎(池田輝政)他。

このアルバムのライナーにあるチーフ・プロデューサーのコメントによると「武蔵の一途で孤独な生き方はマカロニ・ウエスタンに登場するガンマンに通じるものがある」との考えからモリコーネにスコアを依頼しようということになったらしいが、モリコーネはこれに対して「強いヒーローのためには激しい曲ではなく、その精神性や心のひだに触れるような穏やかなメロディが良い」と提案したという。実際にモリコーネが書いたスコアはマカロニ・ウエスタン調のものではなく、冒頭の「メイン・テーマ(Brividi di guerra)」から、ゆったりとした情感豊かなストリングスとコーラスによる主題にトランペットの朗々とした響きが加わり、まぎれもないモリコーネ・サウンドが展開していく。日本の時代劇であるということを全く意識しないアプローチを取っているところがいかにも彼らしく、モーリス・ジャールの「将軍」やジョン・スコットの「兜」とは明らかにスタンスが異なる(モリコーネは、ライナーに掲載されたインタビューでも「私が依頼されたのは私の音楽、つまり西洋音楽を書くことだと思った」と語っている)。「ロマンス(La sua donna)」もしっとりとしたヨーロッパ映画風の曲。「友情と決意(Musashi e l'amicizia)」はストイックなタッチ。「希望(Musashi e l'attesa)」もモリコーネらしいドラマティックな曲。「哀愁(Tre volte amore)」の美しいヴァイロリン・ソロもまさにモリコーネそのもの。「決闘(Musashi lotta)」「対決(Musashi attacca)」「戦乱(Musashi e la vendetta)」でのサスペンス音楽もいつもの独創的なタッチで面白い。ラストの「永遠の旅立ち(Reazione riflessiva)」はメインの主題の異なるアレンジによるリプライズ。

ところで、エンニオ・モリコーネは2003年秋に初来日し、東京、大阪など2、3ヶ所でコンサートを開くことになっている。実現すれば素晴らしいことだが、上記インタビューでも「是非日本に行ってみたい」と語っており、また、飛行機嫌いのモリコーネが「船で行くわけにもいかないから・・」と笑顔で来日の決意を見せたという話もある。ファンとしては大いに期待したい。
(2003年2月)

Ennio Morricone

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