(未公開/TV)秘録:第二次世界大戦  THE WORLD AT WAR

作曲・指揮:カール・デイヴィス
Composed and Conducted by CARL DAVIS

演奏:プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the City of Prague Philharmonic Orchestra

(英Silva Screen / FILMCD 370)

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イギリスのテムズTVが1973年に製作した52分×26話の第二次世界大戦ドキュメンタリー。シリーズの製作総指揮はジェレミー・アイザックス。監督はヒュー・ラゲット、デヴィッド・エルスタイン、テッド・チャイルズ、マーティン・スミス、ジョン・ペット、マイケル・ダーロウ。脚本はニール・アシャーソン、ローレンス・トンプソン、ピーター・バッティ、ジェローム・キュール、J・P・W・マラリュー、チャールズ・ダグラス・ホーム、ジョン・ウィリアムス、アンガス・カルダー、チャールズ・ブルームバーグ、コートニー・ブラウン、ステュアート・フッド、デヴィッド・ホイーラー、デヴィッド・エルスタイン、ジェレミー・アイザックス。ローレンス・オリヴィエエリック・ポーターがナレーションを担当している。日本では以下の13巻から成るビデオとしてリリースされていたが、これらサブタイトルを見ると内容が大体わかる。

@「新しいドイツ/独軍ヨーロッパを蹂躙」
A「フランスの崩壊/ロンドン大空襲」
B「独ソ全面戦争へ/日米全面戦争へ」
C「太平洋戦争、アメリカ参戦/砂漠の狐、ロンメル戦車隊」
D「スターリングラード攻防戦/大西洋海域、Uボートの栄光と悲劇」
E「レニングラード攻防戦/凄絶!ベルリン空爆」
F「シシリー島攻防戦/ビルマ戦線、死のインパール作戦」
G「戦時下のイギリス/暴露されたヒットラー暗殺計画」
H「史上最大の作戦、ノルマンディ上陸/ドイツ占領下オランダの惨状」
I「死の収容所アウシュビッツの悲劇/太平洋海域の戦い」
J「解放されるヨーロッパ/ヒットラーの最期」
K「一億玉砕・日本銃後の記録/原爆投下」
L「総決算/レクイエム」

音楽はカール・デイヴィスが手がけており、過去にDeccaレーベルから4楽章から成る交響楽のLPが出ていたが、この「30周年エディション(30th Anniversary Edition)」と銘打った新録音CDは、第二次大戦中の各国の流行歌・軍歌と、チャーチル、モントゴメリー、アイゼンハワー等による当時の重要なスピーチの実録音がその大半を占めており、デイヴィスによるオリジナルスコアは全27トラック中以下の10トラックのみとなっている。

・The World at War - Main Theme & German March (3:56)
・France Falls - Suite: Tha Maginot Line / Paris Demo / Mobilisation / The Ardennes / Panic in Paris / Prisoner / Refugees / Hitler in Paris (10:53)
・Red Star (4:07)
・G.I. Blues (3:05)
・Arnhem Airlift (1:03)
・Warsaw Aftermath (2:34)
・Turkey Shoot (4:44)
・Blood, Sweat and Tears (3:46)
・Reckoning - Freed Prisoners/Missing People (3:20)
・The World at War - End Titles Theme (1:07)

ネヴィル・チェンバーレンによる「我々はドイツと戦争状態に突入した」というスピーチに続いて、メインテーマ「The World at War - Theme」が始まるが、力強くドラマティックなメインの主題から、ドイツ軍を描写した軽快なマーチへと展開し、メインの主題に戻って感動的に締めくくる力作。「France Falls -Suite」は、ピアノとアルト・サックスによるメランコリックな主題を中心に、ドイツ軍に侵攻され陥落するパリを描いたオーケストラとオルガンによる暴力的なフレーズが途中に挿入される組曲で、この2つの対立するトーンの対比が面白い。「Red Star」はロシア軍を描いた悲劇的でドラマティックな主題。「G.I. Blues」はテナー・サックスによるアメリカ軍の主題で、ジャズ・ベースとなっている。「Arnhem Airlift」は「遠すぎた橋」という映画でも描かれたアーンヘムでの連合軍の敗退を描写したサスペンスフルな曲。続く「Warsaw Aftermath」はピアノとストリングスによるトラジックなタッチ。「Turkey Shoot」は太平洋戦争でアメリカ空軍が日本軍の戦闘機を全滅させるシーンの曲で、暗く不吉なタッチ。「Blood, Sweat and Tears」は、アフリカの砂漠での戦いや連合軍によるノルマンディ上陸を描いた、明るく躍動的なタッチの曲。「Reckoning」はメインの主題の静かなアレンジメント。最後はメインの主題のリプライズ「The World at War Theme」により締めくくる。カール・デイヴィスらしいソリッドなドラマティック・スコアだが、上述の通り途中にスピーチや流行歌が入るのでアルバムとしては少し聴きづらい。デイヴィスによると、今回プラハでこのスコアを録音したのは、ヨーロッパでの戦争時に東西の中心となった象徴的な都市だからだという。
(2003年12月)

Carl Davis

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