Date of Birth: 1936/10/28
Place of Birth: Brooklyn, New York, USA
Date of Death: 2023/8/3
Mini Biography:
Davis studied composition with Paul Nordoff and Hugo Kauder, and subsequently with Per Norgaard in Copenhagen. His early work in the USA provided valuable conducting experience with organizations such as New York City Opera and the Robert Shaw Chorale. In 1959 the revue "Diversions", of which he was co-author, won an off-Broadway Emmy and subsequently traveled to the 1961 Edinburgh Festival. As a direct result of its success there, he was commissioned by Ned Sherrin to write music for "That Was The Week That Was". Since then he has been enormously successful in the world of theatre, composing scores for the Royal Shakespeare Company and the National Theatre, and working closely with artists of the calibre of Laurence Olivier, John Gielgud, Joan Littlewood, Jonathan Miller, John Wells, Barry Humphries and Billy Connolly. Throughout his career, he has composed concert works, among which a Clarinet Concerto, Fantasy for Flute, Strings and Harpsichord and a Symphony are particularly notable. In 1991 he collaborated with Paul McCartney to produce "Liverpool Oratorio" which was performed in many countries throughout the world.Official website of Carl Davis: http://www.carldaviscollection.com/
オペラの怪人 THE PHANTOM OF THE OPERA 作曲・指揮:カール・デイヴィス 演奏: プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
(英Silva Screen / FILMCD193) |
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これは新作映画のサントラではなく、1925年にユニヴァーサルが製作したロン・チャニー主演のサイレント映画を、1997年にイギリスのテレビ局Channel+4がデジタル処理により修復してリバイバル公開した際に、カール・デイヴィスが全く新しく作曲して付けた音楽のCDである。
フランスの作家ガストン・ルルーが1910年に発表した「Le fantome de l'opera」はこれまでに何度も映画化されており最近ではミュージカル版が有名だが、このロン・チャニーが怪人に扮したサイレント映画は欧米では有名な作品であり、特に怪人の仮面が剥がされておぞましい素顔を露わにするシーンに当時の観客は震え上がったという(このシーンは今見てもかなりこわい)。
音楽を担当しているカール・デイヴィスはNY出身のアメリカ人作曲家だが、イギリスを本拠地として活躍しており、「チャンピオンズ」「フランス軍中尉の女」「レインボウ」等、クラシック音楽の手法を取り入れた格調高い映画音楽を数多く作曲している実力派で、サイレント映画のリバイバルでは今回の作品以外にも「ナポレオン」「ベン・ハー」「イントレランス」等に音楽を新たに書き起こしており、どの作品も独立したクラシック音楽として成立し得る素晴らしいスコアである。あのポール・マッカートニーとのコラボレーションで「リヴァプール・オラトリオ」を作曲し、ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したことでも有名。
今回の「オペラの怪人」には、グノー作曲のオペラ「ファウスト」の音楽を取り入れた極めて上質なスコアを書いており、とても怪奇映画の音楽とは思えない風格のある作品となっている。デイヴィスは日本ではあまり知られていないが現代映画音楽界においては最も重要な存在となっている作曲家の一人である。
(1998年2月)
(未公開)THE UNDERSTUDY 作曲・指揮:カール・デイヴィス (英Carl Davis Collection / CDC002) |
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2008年製作のアメリカ映画。製作・監督・脚本はデヴィッド・コノリーとハンナ・デイヴィス。出演はマリン・アイアランド、ポール・スパークス、アーシフ・マンドヴィ、リチャード・カインド、トム・ウォパット、グロリア・ルーベン、レイコ・アイルスワース、ニッキー・アレズ・アクマル、アシュリー・アドラー、エマニュエル・アンコリーニ、スティーヴン・アノローソ、パン・バンデュー、ケリー・ビシェ、ジーン・ボート、ルイーズ・ブラウン、ケリー・ギディッシュ他。撮影はジョー・フォリー。売れない脚本家のサーフラス(マンドヴィ)と部屋をシェアしている売れない女優のレベッカ(アイアランド)は、スター女優シモーヌ(ギディッシュ)の代役としてキャストされる。シモーヌがインフルエンザで倒れたことで主演のチャンスがレベッカに回ってくるが……。このサントラCDのブックレットを開いたページには美男美女カップルの写真が掲載されており、てっきり主演俳優のコンビかと思ったら、監督・脚本を担当しているデヴィッド・コノリーとハンナ・デイヴィス夫妻だった。しかもハンナ・デイヴィスは、この映画のスコアを作曲しているカール・デイヴィスの娘であり、コノリーと彼女は俳優としてこの映画に出演もしている。また、製作総指揮にカール・デイヴィスと彼の妻(ハンナの母)で女優のジーン・ボートが参加しており、この2人も脇で出演している……、という具合に、家族ぐるみで製作されている作品。
カール・デイヴィスは、ここでは1960年代風のジャズと、ストリングスを主体としたヒッチコック・タッチのサスペンス音楽でスコア全体を構成している。「Opening Titles - A New Day」は、ライトなジャズによるオープニング。「Davidovitch」は、デイヴ・ホワイトの気だるいテナーサックス・ソロによるダヴィドヴィッチの主題で、このサックス奏者の役は映画の中でカール・デイヴィス自身が演じている。「Blind Vertigo」は、ヒッチコックの名作「めまい」でのバーナード・ハーマンのスコアを意識したストリングスによるサスペンス音楽。「Casual Bossa」「Restaurant」は、カジュアルなダンス音楽。「Released」「Dead Mouse」は、サックス・ソロのインプロヴィゼーション。「Fireman」「Won't Stop」「Electioneering」の3曲は、ライトなピアノ・ジャズとサックス・ソロが途切れなく続く。「Arrest」は、ピアノ、ストリングス、サックスによるメランコリックなタッチ。「Rebecca's Waltz」は、ジェントルなワルツ。「The La La La Song (Vocal Version)」は、メアリー・ケアウィのヴォーカルによるノスタルジックな歌曲。「First Night」「The Coin」は、ストリングスによるドラマティックでサスペンスフルな曲で、実に巧い。「"I'm On"」は、明るく躍動的なオーケストラ音楽。「Greta」「Nutcake」「Detectives」等は、クールなジャズ。「Retrieval」は、マーチ風のサスペンス音楽。「Greta's Death」は、メランコリックな曲。「Waking」は、重厚なサスペンス音楽で、後半はドラマティックでメランコリックなタッチに。「Last Victim and End Roller」は、サスペンス調からライトなジャズによるエンドクレジットへ。このCDはカール・デイヴィスが彼の妻ジーン・ボートとレコード会社役員のチャールズ・パドレーと共に立ち上げたレーベル「Carl Davis Collection」からリリースされている。
カール・デイヴィスが手がけた作品には
「(未公開/TV)Armchair Theatre - His
Polyvinyl Girl」(1961)
「(未公開/TV)Schaufensterpuppen」(1964)
「(未公開/TV)The
Other World of Winston Churchill」(1964)
「(未公開/TV)Theatre 625 - The Seekers
#1: The Heretics, - The Seekers #2: The Idealists, - The Seekers #3: The
Materialists, - Focus」(1964〜1966)
「(未公開/TV)The Wednesday
Play」(1965〜1969)
「(未公開/TV)Five More - Strangers」(1966)
「(未公開/TV)The World
of Coppard」(1968)
「(未公開)The Bofors Gun」(1968)
「(未公開)Praise Marx and Pass
the Ammunition」(1970)
「(未公開/TV)Mad Jack」(1970)
「(未公開)The Only
Way」(1970)
「(未公開/TV)Play for Today」(1970〜1982)
「(未公開)Up
Pompeii」(1971)
「(未公開)Up the Chastity Belt」(1971)
「(未公開)怪奇!二つの顔の男(I,
Monster)」(1971)
「(TV)白い渡り鳥(The Snow
Goose)」(1971)
「(未公開)Rentadick」(1972)
「(未公開)What Became of Jack and
Jill?」(1972)
「(未公開/TV)War & Peace」(1972)
「(未公開)Arturo
Ui」(1972)
「(未公開)The Lovers!」(1973)
「(未公開)The National
Health」(1973)
「(TV)秘録:第二次世界大戦(The World at War)」(1973)
「(未公開/TV)ITV
Saturday Night Theatre - Catholics」(1973)
「(未公開/TV)What's
Next?」(1974)
「(未公開/TV)The Cay」(1974)
「(未公開)Man
Friday」(1975)
「(未公開/TV)The Naked Civil Servant」(1975)
「(未公開/TV)Shades of
Greene」(1975〜1976)
「(未公開/TV)Our Mutual Friend」(1976)
「(未公開/TV)Where Adam
Stood」(1976)
「(未公開/TV)Lorna Doone」(1976)
「(未公開/TV)NBC Special Treat - Big
Henry and the Polka Dot Kid」(1976)
「(未公開/TV)Out of
Bounds」(1977)
「(未公開/TV)Marie Curie」(1977)
「(未公開/TV)Treasure
Island」(1977)
「(未公開/TV)Horse in the
House」(1977〜1979)
「(TV)キャスターブリッジの市長(The Mayor of
Casterbridge)」(1978)
「(未公開/TV)BBC2 Play of the Week - Langrishe Go
Down」(1978)
「(未公開/TV)Wuthering Heights」(1978)
「(未公開)The Sailor's
Return」(1978)
「(未公開/TV)The Light Princess」(1978)
「(未公開/TV)BBC Play of the
Month - Marya」(1979)
「(未公開/TV)Prince Regent」(1979)
「(未公開)Birth of the
Beatles」(1979)
「(未公開/TV)The Old Curiosity
Shop」(1979〜1980)
「(未公開/TV)Private Schulz」(1981)
「(未公開/TV)BBC2 Playhouse -
Speed King, - Hallelujah, Mary Plum, -
Marriage」(1979〜1981)
「(未公開/TV)Hollywood」(1980)
「(未公開/TV)Moving
Pictures」(1980)
「(未公開/TV)Oppenheimer」(1980)
「(TV)ベニスの商人(The Merchant of
Venice)」(1980)
「(未公開/TV)Staying On」(1980)
「フランス軍中尉の女(The French
Lieutenant's Woman)」(1981)
「(未公開/TV)Winston Churchill: The Wilderness
Years」(1981)
「(未公開/TV)かまきり(Praying Mantis)」(1982)
「(未公開/TV)La
ronde」(1982)
「(未公開/TV)Arena - Mike Leigh Making Plays」(1982)
「(未公開/TV)The
Hound of the Baskervilles」(1982)
「(未公開/TV)Unknown
Chaplin」(1983)
「(未公開/TV)Macbeth」(1983)
「(未公開/TV)The
Aerodrome」(1983)
「(未公開/TV)愛と叛乱の大地(The Far Pavilions)」(1984)
「(未公開/TV)The
Weather in the
Streets」(1984)
「チャンピオンズ(Champions)」(1984)
「(TV)サハロフ/愛と自由を求めて(Sakharov)」(1984)
「(未公開)George
Stevens: A Filmmaker's Journey」(1984)
「(未公開/TV)A Song for
Europe」(1985)
「(TV)ピックウィック・ペーパーズ(The Pickwick
Papers)」(1985)
「(未公開/TV)Oscar - Gilded Youth, - Trials, - De
Profundis」(1985)
「キング・ダビデ/愛と闘いの伝説(King David)」(1985)
「(未公開/TV)The Day the
Universe Changed」(1985)
「(TV)サイラス・マーナー/ラヴィローの織り工(Silas Marner: The Weaver of
Raveloe)」(1985)
「(TV)エド・マロー/テレビを変えた男(Murrow)」(1986)
「(TV)秋のホテル(Hotel du
Lac)」(1986)
「(未公開/TV)Fire & Ice」(1986)
「(未公開/TV)Buster Keaton: A Hard
Act to Follow」(1987)
「(未公開/TV)The First Eden - The Making of the
Garden」(1987)
「(未公開/TV)ジャーニーズ・エンド(Journey's End)」(1988)
「(未公開)白い記憶の女(The
Girl in a Swing)」(1988)
「(未公開/TV)Somewhere to Run」(1989)
「(未公開)Fragments
of Isabella」(1989)
「(未公開)The
Accountant」(1989)
「スキャンダル(Scandal)」(1989)
「レインボウ(The
Rainbow)」(1989)
「(未公開/TV)Skulduggery」(1989)
「(未公開/TV)American Masters -
Harold Lloyd: The Third Genius」(1989)
「(未公開/TV)The Yellow
Wallpaper」(1989)
「(未公開)They Never Slept」(1990)
「(TV)スパイメーカー(The Secret
Life of Ian Fleming)」(1990)
「(未公開/TV)Crossing to
Freedom」(1990)
「(未公開)フランケンシュタイン/禁断の時空(Frankenstein
Unbound)」(1990)
「(未公開/TV)The Black Velvet
Gown」(1991)
「(TV)裁かれた壁〜アメリカ・平等への闘い〜(Separate But
Equal)」(1991)
「(未公開/TV)Ghosts of the Past」(1991)
「(未公開/TV)The Crucifer of
Blood」(1991)
「(未公開/TV)Covington Cross」(1992)
「(未公開/TV)A Sense of
History」(1992)
「(TV)南仏プロヴァンスの12か月(A Year in Provence)」(1993)
「(未公開)D.W.
Griffith: Father of Film」(1993)
「トライアル/審判(The
Trial)」(1993)
「(TV)デスクルーズ/欲望の嵐(Voyage, aka Cruise of
Fear)」(1993)
「(未公開/TV)Genghis Cohn」(1993)
「(未公開)リベレーション 自由と解放
終戦を迎えて(Liberation)」(1994)
「(未公開)Widows' Peak」(1994)
「(未公開/TV)Hope in the
Year Two」(1994)
「(未公開/TV)George Stevens: D-Day to
Berlin」(1994)
「(未公開/TV)Lie Down with Lions」(1994)
「(未公開/TV)The Buried
Mirror」(1994)
「(未公開)Le radeau de la Meduse」(1994)
「(未公開/TV)Performance -
Message for Posterity」(1994)
「(TV)帰郷/荒れ地に燃える恋(The Return of the
Native)」(1994)
「(未公開/TV)Oliver's Travels」(1995)
「(未公開)Anne Frank
Remembered」(1995)
「(未公開/TV)Cinema Europe: The Other
Hollywood」(1995)
「(TV)高慢と偏見(Pride and Prejudice)」(1995)
「(未公開/TV)Coming
Home」(1997)
「(未公開)A Life in a Day」(1997)
「(未公開/TV)A Dance to the Music of
Time」(1997)
「(未公開/TV)Seesaw」(1998)
「(未公開/TV)Cold
War」(1998)
「(未公開/TV)Real Women」(1998)
「(未公開/TV)The Face of
Russia」(1998)
「(未公開/TV)The Queen's Nose」(1998〜2003)
「(未公開/TV)Goodnight,
Mister Tom」(1999)
「(未公開/TV)Comedy Lab - Heart and Sole」(1999)
「(未公開/TV)The
Greatest Store in the
World」(1999)
「(未公開)トプシー・ターヴィー(Topsy-Turvy)」(1999)
「(TV)華麗なるギャツビー(The Great
Gatsby)」(2000)
「(未公開/TV)Back Home」(2001)
「(TV)タイム・トラベラー 〜戦場に舞い降りた少年〜(An
Angel for May)」(2002)
「(未公開)The Book of Eve」(2002)
「(未公開/TV)Promoted to
Glory」(2003)
「(未公開)Mothers and
Daughters」(2004)
「(未公開)Garbo」(2005)
「(未公開)I'm King Kong!: The Exploits of
Merian C. Cooper」(2005)
「(TV)クランフォード(Cranford)」(2007〜2009)
「(未公開)The Understudy」(2008)
「(未公開/TV)Upstairs Downstairs」(2010)
「(未公開)Three Hours That Shook the World:
Observations on Intolerance」(2013)
「(未公開/V)The Music of Pride and
Prejudice」(2014)
「エセルとアーネスト ふたりの物語(Ethel & Ernest)」(2016)
「(未公開)Brexicuted」(2018)
等がある。
また、カール・デイヴィスは、フランスのアベル・ガンス監督による1927年製作のサイレント映画「ナポレオン」が1980年にリバイバル上映された際に新たな劇伴スコアを作曲して以来、「イントレランス(Intolerance: Love's Struggle Throughout the Ages)」(1916/1989)「黙示録の四騎士(The Four Horsemen of the Apocalypse)」(1921/1993)「ロイドの要心無用(Safety Last!)」(1923/1990)「荒武者キートン(Our Hospitality)」(1923/1984)「バグダッドの盗賊(The Thief of Bagdad)」(1924/1984)「グリード(Greed)」(1924/1986)「オペラの怪人(The Phantom of the Opera)」(1925/1996)「ビッグ・パレード(The Big Parade)」(1925/1988)「荒鷲(The Eagle)」(1925/1985)「ベン・ハー(Ben-Hur: A Tale of the Christ)」(1925/1987)「当りっ子ハリー(The Strong Man)」(1926/1985)「キートンの大列車追跡(The General)」(1926/1987)「田吾作ロイド一番槍(The Kid Brother)」(1927/1990)「思ひ出(The Student Prince in Old Heidelberg)」(1927/1986)「群衆(The Crowd)」(1928/1981)「(未公開)Show People」(1928/1982)「風(The Wind)」(1928/1983)「恋多き女(A Woman of Affairs)」(1928/1983)「鉄仮面(The Iron Mask)」(1929/1999)等のサイレント映画に新たなスコアを作曲している(年次は製作年/リバイバル公開年)。これらのスコアの内、「ナポレオン」「イントレランス」「オペラの怪人」「ベン・ハー」はデイヴィス指揮による演奏のCDが出ている他、英Silva Screenレーベルからリリースされた「THE SILENTS」というコンピレーションCDに主要な作品が収録されている。
映画音楽以外でもポール・マッカートニーとのコラボレーションによる「The Liverpool Oratorio」や、「A Simple Man」「A Picture of Dorian Grey」「Fire and Ice」「A Christmas Carol」「Aladdin」「Alice in Wonderland」等のバレエ音楽を手がけており、その大半がCDとしてリリースされている。
カール・デイヴィスは1981年の「フランス軍中尉の女」で英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)を受賞している。
(2009年8月)
(2023年8月)
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