危険な場所で  ON DANGEROUS GROUND

作曲・指揮:バーナード・ハーマン
Composed and Conducted by BERNARD HERRMANN

(米Film Score Monthly / Vol.6 No.18)

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1951年製作のアメリカ映画。監督は「大砂塵」(1954)「理由なき反抗」(1955)「キング・オブ・キングス」(1961)「北京の55日」(1963)等のニコラス・レイ。出演はロバート・ライアン、アイダ・ルピノ、ウォード・ボンド、エド・ベグリー、サムナー・ウィリアムス、クレオ・ムーア、チャールズ・ケンパー他。ジェラルド・バトラーの原作「Mad with Much Heart」を基にA・I・ベゼリデスとニコラス・レイが脚本を執筆。製作はジョン・ハウズマン、撮影はジョージ・E・ディスカント。相棒を射殺された刑事ジム・ウィルソン(ライアン)は、容疑者の青年を殴ったことで非難され、田舎に飛ばされて少女のレイプ殺人事件を担当させられる。ウィルソンは少女の父ブレント(ボンド)と共に犯人らしき男を追跡するうちに、一軒家で盲目の女性メアリー(ルピノ)と出会うが・・。所謂“フィルム・ノワール”のジャンルに分類されているクラシック作品。

音楽は、この映画のプロデューサーのジョン・ハウズマンとは「市民ケーン」でも組んだ巨匠バーナード・ハーマン。冒頭の「Prelude」から、彼の個性が明確に表れた非常に緊迫感のあるビジーなオーケストラル・スコアが展開。「Solitude」は、主人公のウィルソンの孤独を描いた気だるいタッチのジャズで、「Nocturne」でも登場する。「Pastorale」は、田舎に左遷されたウィルソンが雪景色の中を車で走るシーンの曲で、後にハーマンが「北北西に進路を取れ」でも流用している主題。「Hunt Scherzo」もハーマンらしいサスペンスフルな追跡のシーンのスケルツォで、「The Snowstorm」も吹雪の中を追跡が続くシーンの音楽。「Blindness」は、犯人を追跡するウィルソンたちが一軒家でメアリーに出会うシーンのジェントルな主題で、ヴァージニア・マジュウスキーの演奏による“Viola d'amore”のソロが挿入される。彼女の美しいソロは「Faith」「The Searching Heart」「The Whispering」「The Parting」等でも登場する。「The Death Hunt」は、8本のホルンが唸る、極めてサスペンスフルでヴァイオレントな追跡シーンのスコア。まさに“ヴィンテージ・ハーマン”でスコア全体の白眉。チャールズ・ゲルハルトがナショナル・フィルを指揮した新録音によるハーマンの作品集では、この曲が冒頭に演奏された。「Finale」は、ハリウッド・エンディング的にハッピーなトーンで終わる。

このスコアは、現存するマスターがカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校に保管されていたアセテート・ディスクしかなく、一部のカットにはサーフェイスノイズが顕著だが、ハーマンのスコアは音質の悪さを凌駕する内容で圧倒される。傑作。
(2004年1月)

Bernard Herrmann

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