危険がいっぱい LES FELINS

作曲・指揮:ラロ・シフリン
Composed and Conducted by LALO SCHIFRIN

(仏Universal / 982 458 8)

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1964年製作のフランス映画(アメリカ公開題名は「Joy House」、イギリス公開題名は「The Love Cage」)。監督は「鉄路の闘い」(1945)「禁じられた遊び」(1951)「しのび逢い」(1954)「太陽がいっぱい」(1960)「パリは燃えているか」(1966)「雨の訪問者」(1970)「狼は天使の匂い」(1972)「危険なめぐり逢い」(1975)等の名匠ルネ・クレマン。出演はアラン・ドロン、ジェーン・フォンダ、ローラ・アルブライト、ソレル・ブック、カール・ステュダー、アンドレ・ウマンスキー、アーサー・ハワード、ジョージ・ゲインズ、アネット・ポワーヴル、ベレット・アルカヤ、マルク・マッザ、ジャック・ベザール、ジャン=ピエール・オノレ、ジョルジュ・ドゥーキング、デル・ネグロ他。デイ・キーンの原作「Joy House」を基にルネ・クレマン、パスカル・ジャルダンとチャールズ・ウィリアムズが脚本を執筆。撮影はアンリ・ドカエ。衣装デザインはピエール・バルマン。助監督として「Z」「戒厳令」等の監督で知られるコスタ=ガヴラスが参加している。南仏を舞台に、アメリカのマフィアに追われる男(ドロン)と、彼が逃げ込んだ家に住む2人の女性(フォンダ、アルブライト)との関係を描く犯罪スリラー。

音楽はラロ・シフリン。これは彼が映画音楽作曲家としてのキャリアの初期に手がけた作品で、後の「ブリット」「ダーティハリー」「燃えよドラゴン」といった代表作の基礎となったスコア。ジャズがベースだが、オーケストラやオンド・マルトノによるアンダースコアとの組み合わせになっており、実に面白い。「Les Felins (theme principal)」はシフリンらしいクールでシンフォニックなジャズ。中盤からアブストラクトなサスペンス調に展開。「Premices d'une decouverte」もジャズ+オーケストラによるアンダースコアで、凝ったアレンジが面白い。「La decision」は、一転してストリング・カルテットによるクラシカルでドラマティックな曲。「Poursuite mediterraneenne」は、明るく軽快なイントロからサスペンスフルなアクション・スコアに。後にシフリンが担当したドン・シーゲル監督の「マンハッタン無宿」でのバイク・チェイスの音楽に似ている。「Le telegramme」はサスペンスフルでダイナミックなアンダースコア。「Theme des Felins」はメインテーマのリプライズ。「Blues pour un enterrement」は、葬式のシーンに流れるニューオリンズ・スタイルのジャズ。「Marc et son invitee」はサスペンス調。「Melinda」は、リリカルで美しいストリングスによる主題からアブストラクトなサスペンス音楽に。「Les Felins (generique fin)」は、サスペンス調のジャズからメインテーマのリプライズへと展開するエンド・タイトル。

1963年当時、MGM傘下のVerveレーベルと契約していたラロ・シフリンは、MGMレコードの社長だったアーノルド・マキシムの紹介でフランスの映画プロデューサー、ジャック・バールと出会い、この「危険がいっぱい」の音楽を担当することになった。ルネ・クレマン監督のファンだったシフリンは、迷わずこのプロジェクトに参加したが、彼が後に担当したピーター・イエーツ監督の「ブリット」でカー・チェイスが始まる瞬間に音楽を切る、といったスコアリングのタイミングの妙をクレマンとのコラボレーションから学んだという。当時はシンセサイザーがまだなかったためオンド・マルトノを使用しているが、演奏法を学ぶために発明者のモーリス・マルトノ本人に会いに行った。ここでオンド・マルトノを演奏しているのはオリヴィエ・メシアンの義理の妹であるジャンヌ・ロリオッドである。ラロ・シフリンのファンにとっては重要なスコアの初CD化。
(2004年12月)

Lalo Schifrin

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