633爆撃隊 633 SQUADRON 潜水艦X-1号 SUBMARINE X-1 作曲・指揮:ロン・グッドウィン (米Film Score Monthly / FSM Vol.8 No.4) |
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ロン・グッドウィンがスコアを作曲した戦争映画2作をカップリングにしたCD2枚組リリース。「633爆撃隊」は過去にもサントラLP/CDが出ていたが、「潜水艦X-1号」については今回が初アルバム化。
「633爆撃隊」は1964年製作のイギリス映画で、監督は「ブルーライト作戦」(1966)「掠奪戦線」(1970)「(TV)愛は暗闇をこえて」(1980)「(TV)新・刑事コロンボ/マリブビーチ殺人事件」(1990)等のウォルター・E・グローマン。出演はクリフ・ロバートソン、ジョージ・チャキリス、マリア・パーシー、ハリー・アンドリュース、ドナルド・ヒューストン、マイケル・グッドリッフ、ジョン・メイロン、ジョン・ボニー、アンガス・レニー、スコット・フィンチ、ジョン・チャーチ、バーバラ・アーチャー、ショーン・ケリー、ジュリアン・シェリアー、ジェフリー・フレデリック、スーザン・ファーマー、ジョニー・ブリッグス、アン・リドリー他。フレデリック・E・スミスの原作を基にジェームズ・クラヴェルとハワード・コッチが脚本を執筆。撮影はエドワード・スケイフとジョン・ウィルコックス。第二次大戦中のノルウェーを舞台に、ロイ・グラント隊長(ロバートソン)率いるイギリス空軍の633爆撃隊によるドイツ軍重水工場の爆撃作戦を描いた戦争アクション。目標となる工場が複雑に入り組んだフィヨルドの中にあり、イギリス空軍のモスキート爆撃機がドイツ軍の対空砲火を振り切りつつ、フィヨルドの奥に隠れた工場を爆撃するシーンがクライマックスとなっているが、この設定はマイケル・アンダーソン監督の「暁の出撃(The Dam Busters)」(1954)とよく似ている上、後にジョージ・ルーカスが監督した「スター・ウォーズ」(1977)のクライマックスでのデス・スター攻撃シーンのベースにもなっている。この映画の撮影にはデ・ハヴィランド社製DH-98モスキート爆撃機の実機が5機使用されており(内、実際に飛行可能だったのは3機)、航空機ファンにも人気のある作品。主演のクリフ・ロバートソンはパイロットの資格をもっており、撮影後にモスキートの1機を購入したという。
音楽はロン・グッドウィンの代表作の1つ。この映画のサントラ盤は、過去にUnited ArtistsレーベルとMCAレーベルからLPが、後にEMIレーベルからCDが出ていたが、今回Film Score MonthlyレーベルがリリースしたCDは、過去のサントラLP/CDと同様のステレオ音源と、ロン・グッドウィン自身が所有していた1/4インチ・テープのモノラル音源からの組曲が収録されている。「Main Title - 633 Squadron」は、勇壮かつダイナミックでパワフルなメインタイトル。有名な6拍+3拍のフレーズはタイトルの“633”から取ったという。「Memories of Norway」は、ノルウェー人のレジスタンス、ベルイマン(チャキリス)がグラントとの過去を思い出すシーンの大らかなタッチの主題から、ベルイマンがノルウェーにパラシュート降下し、仲間の戦闘員と落ち合うシーンのダイナミックな音楽へと展開。「Love Theme」はグラントと、ベルイマンの妹ヒルデ(パーシー)とのロマンティックなラブテーマ。「The Attack Begins」は、ドイツ軍に捕らえられたベルイマンが拷問で口を割る前に抹殺せよとの指令を受けたグラントが飛び立つシーンの勇壮な音楽。後半はメインの主題に展開。「Murder Mission」は、ベルイマンが捕らえられたドイツ軍の基地をグラントが爆撃するシーンのダイナミックな音楽。「Crash Flight」は、爆撃隊がフィヨルドの地形に似たスコットランドの渓谷地帯で飛行訓練をするシーンの音楽で、メインの主題のバリエーション。「Escape from Norway」は、ベルイマン率いるノルウェーのレジスタンス部隊がドイツ軍を襲撃するシーンのアクション音楽。「Peace and War」は、グラントがヒルデとピクニックに行くシーンの平和で大らかな音楽から、ベルイマンがドイツ軍との戦闘で捕獲されるシーンのアクション音楽へと展開。「Apprehension」は、グラントが上司から捕らえらたベルイマンの命を犠牲にするしかないと伝えられるシーンの音楽。「End Title - Love Theme - 633 Squadron」は、グラントがドイツ軍に撃墜され、戦友の前で息絶えるシーンの音楽から、ラブテーマがドラマティックに盛り上がるフィナーレへと展開。この後にソース音楽の「Public House Jazz」と、グッドウィン所有のテープからの8分24秒の組曲「Bonus Suite」が収録されている。真にスペクタキュラーでパワフルなスコア。
「潜水艦X-1号」は1967年製作のイギリス映画で、監督は「(TV)夜空の大空港」(1966)「荒野の隠し井戸」(1967)「風に向って走れ」(1972)「(TV)テロリスト・黒い九月」(1976)「(TV)ムッソリーニ/愛と闘争の日々」(1985)等のウィリアム・グレアム。出演はジェームズ・カーン、デヴィッド・サムナー、ノーマン・ボウラー、ブライアン・グレリス、ポール・ヤング、ウィリアム・ダイサート、ジョン・ケランド、ケネス・ファーリントン、キース・アレクサンダー、カール・リッグ、スティーヴ・カービー、ニック・テイト、ジョージ・プラウダ、ルパート・デイヴィス他。ジョン・C・チャンピオンとエドマンド・H・ノースの原案を基にドナルド・S・サンフォードとガイ・エルムズが脚本を執筆。撮影はライオネル・ベインズとポール・ビーソン。海戦で自らの潜水艦と50人のクルーを失ったイギリス海軍のカナダ人艦長リチャード・ボルトン(カーン)が、生き残った部下と対立しながらも、新型の小型潜水艦の艦長となってノルウェーのフィヨルドに侵入し、ドイツ軍艦リンデンドルフを撃沈する。ここで海兵の1人を演じているオーストラリア人俳優のニック・テイトは、この後に「(TV)スペース1999」等に出演しているが、現在でもハリウッド映画の予告編のナレーション等の声優として活躍している。
ロン・グッドウィンは、ここでも勇壮でサスペンスフルな戦争アクション音楽を提供している。「Main
Title」は、大海原を想起させる壮大で勇壮なメインタイトル。「Secret Arrival」は、スコットランド北部の秘密基地に潜水艦のクルーたちが到着するシーンの勇壮な音楽。「Training
Begins」は、ボルトンの指揮によりクルーたちが潜水訓練をするシーンの音楽で、メインの主題のバリエーション。「Quentin's Rescue
/ Quentin's Bolt / Bolt His Mirror」は、疲労困憊した隊員クエンティン(ヤング)に、ボルトンが何度も潜水のやり直しを強いるシーンのサスペンス音楽。「Air
Raid」はドイツ空軍による攻撃のシーンのアクション音楽だが、映画では使用されなかった。「X-Craft Introduced / X-Craft
Dives / X-3 Through Net」は、新型の小型潜水艦が紹介されるシーンのジェントルなタッチの音楽。「X-3 Hits
Net」「X-3 Recovered」は小型潜水艦での訓練のシーンのサスペンス音楽。「German
Parachutist」「Defeat」「Bolton Defeats Parachutist」は、密かにパラシュート降下したドイツ軍部隊がイギリス軍の基地を襲撃するシーンのアクション音楽。「Operation
Jonah」「Jonah's Journey / Minefield」「X-1 Escapes」「Sognefjord」は、小型潜水艦がドイツ軍艦を攻撃するために機雷を避けつつフィヨルドに侵入していくシーンの音楽で、メインの主題が繰り返される。「E-Boat
Patrol」は、ドイツ軍のフロッグメン・チームが、ボルトンたちを阻止するために襲撃してくるシーのアクション音楽。「Depth Charge
Attack」「Target Directly Above / Hesitation」はクライマックスの戦闘シーンのアクション音楽。ボルトンは敵艦に捕らえられた味方のクルーを犠牲にしても、戦艦を撃沈する決断を下す。「Homeward
Bound - End Title」はメインの主題リプライズによるエンドタイトル。これはグッドウィン自身が所有していた1/4テープ音源をベースにしたコンプリート・スコア(1箇所だけ欠落している短いキューあり)の初アルバム化。
(2005年4月)
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