チャーリーとチョコレート工場 CHARLIE AND THE CHOCOLATE FACTORY

作曲:ダニー・エルフマン
Composed by DANNY ELFMAN

指揮:リック・ウエントワース
Conducted by RICK WENTWORTH

(米Warner Sunset / 72264)

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2005年製作のアメリカ映画。監督は「マーズ・アタック!」(1996)「スリーピー・ホロウ」(1999)「PLANET OF THE APES 猿の惑星」(2001)「ビッグ・フィッシュ」(2003)等のティム・バートン。出演はジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、デヴィッド・ケリー、ヘレナ・ボナム=カーター、ノア・テイラー、ミッシー・パイル、ジェームズ・フォックス、ディープ・ロイ、クリストファー・リー、アダム・ゴッドレイ、フランジスカ・トローグナー、アンナソフィア・ロッブ、ジュリア・ウインター、ジョーダン・フライ、フィリップ・ウィーグラッツ他。ロアルド・ダールの原作『チョコレート工場の秘密』を基にジョン・オーガストとパメラ・ペトラーが脚本を執筆。撮影はフィリップ・ルースロ。製作はブラッド・グレイとリチャード・D・ザナック。チャーリーは、チョコレート工場のそばの小さな粗末な家で、おかあさん(ボナム=カーター)、おとうさん(テイラー)やおじいさんおばあさんに囲まれ、貧しいながらも愛情を一心に受けて暮らしていた。ある日、チョコレート工場のウィリー・ ウォンカ(デップ)は、ウォンカのチョコレート・バーの中に隠された金のチケットを見つけた5人の子供たちに“チョコレートの秘密と魔法を明かす”と発表する……。

原作者のロアルド・ダール(1916〜1990)は、“奇妙な味”や“異色作家”といった表現で紹介されることの多いイギリスのミステリ作家で、私も大好きな小説家である。『飛行士たちの話』『あなたに似た人』『キス・キス』『来訪者』『オズワルド叔父さん』『王女マメーリア』等の短編集が日本でも出版されているが、賭けにのめり込む人の心理や人間の想像力の恐怖をアイロニカルに描いたユニークな短編を得意としており、『南から来た男』『牧師のたのしみ』『味』『おとなしい凶器』『ビクスビー夫人と大佐のコート』等が有名。これらの短編小説をTVドラマ化し、ダール自身がホストを務めた「ロアルド・ダール劇場〜予期せぬ出来事」(1979)というイギリスのグラナダTV製作のシリーズもあった(日本でTV放映、DVD発売済)。『少年』『単独飛行』という自伝も翻訳・出版されている。1953年に女優のパトリシア・ニールと結婚して子供ができたので、自分の子供のために最初の児童文学を書いた。それ以降、この映画の原作である『チョコレート工場の秘密』をはじめ、『おばけ桃の冒険』『魔法のゆび』『父さんギツネ バンザイ』『ガラスのエレベーター宇宙にとびだす』『魔女がいっぱい』『ぼくらは世界一の名コンビ』『ヘンリー・シュガーのわくわくする話』『マチルダはちいさな大天才』等の子供向けの本を執筆し、『魔女がいっぱい』ではウィットブレッド賞児童文学部門を受賞している。映画との関わりも多く、親友のイアン・フレミングの原作を基に脚本を執筆した「007は二度死ぬ」(1967)「チキ・チキ・バン・バン」(1968)があるほか、彼自身の原作を映画化した作品にも「36時間」(1964)「ダニー/ぼくらは世界一の名コンビ!」(1989)「(未公開)ジム・ヘンソンのウィッチズ」(1989)「ジャイアント・ピーチ」(1996)「マチルダ」(1996)等がある。『チョコレート工場の秘密』は1964年に出版されて以来32ヶ国語に翻訳され、1300万部の販売実績を上げているベストセラーで、1971年に「(未公開)夢のチョコレート工場(WILLY WONKA & THE CHOCOLATE FACTORY)」として一度映画化されている(監督:メル・スチュアート、脚本:デヴィッド・セルツァー、出演:ジーン・ワイルダー、ピーター・オストラム、ジャック・アルバートソン、ロイ・キニア他)。 今回のティム・バートン版「チャーリーとチョコレート工場」は、ダールのすっとぼけたシニカルさというか、残酷だけど笑ってしまうような感覚を見事に再現していると思う。ジョニー・デップ扮するウィリー・ウォンカの父親をクリストファー・リーが演じてるのもファンとしては嬉しい。バートンは、デップと初めて組んだ「シザーハンズ」で主人公の生みの親である発明家役にヴィンセント・プライスを起用したが、リーやプライスといったホラー映画の名優に対する彼の敬意と愛情を常に感じる。この映画でのリーの演技も素晴らしい。

この「チャーリーとチョコレート工場」の音楽は、ティム・バートンの盟友ダニー・エルフマンが作曲。冒頭にロアルド・ダールの原作中の詩をベースにした歌「Wonka's Welcome Song」「Augustus Gloop」「Violet Beuregarde」「Veruca Salt」「Mike Teavee」が収録されているが、 後の4曲はチョコレート工場に招かれた問題児たちがこっぴどい目に合う場面の歌で、いずれもエルフマンらしい陽気でファンタスティックでワイルドな曲(歌はすべてエルフマン自身のヴォーカル を何重にもミックスしている)。「Main Titles」は、シニカルでダイナミックなタッチのメインタイトル。ダークな「The Indian Palace」、ジェントルでファンタスティックな「Wheels in Motion」、サスペンスフルな「The Golden Ticket/Factory」、ダイナミックな「Loompa Land」、不気味な「The River Cruise」、豪快なアクション音楽「Up and Out」等、カラフルなスコアが展開し、ラストはジェントルな「Finale」で締めくくる。最後にスコア中の様々な主題をメドレーにした「End Credit Suite」が収録されている。まさにエルフマンのために用意されたような題材で、期待を裏切らないスコアを提供している。
(2005年8月)

Danny Elfman

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