SAYURI MEMOIRS OF A GEISHA

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS

チェロ:ヨーヨー・マ
Cello Solos by YO-YO MA

ヴァイオリン:イツァーク・パールマン
Violin Solos by ITZHAK PERLMAN

(米Sony Classical/ 82876-74708-2)

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2005年製作のアメリカ映画。監督は「(TV)アニー」(1999)「シカゴ」(2002)ロブ・マーシャル。出演はチャン・ツィイー、渡辺 謙、コン・リー、ミシェル・ヨー、役所広司、桃井かおり、工藤夕貴、大後寿々花、ケネス・ツァン、マコ岩松、サマンサ・フターマン、エリザベス・サン、トーマス・イケダ、ゾー・ワイゼンバウム、ケイリー=ヒロユキ・タガワ他。アーサー・ゴールデンの原作『さゆり』を基にロビン・スウィコードとダグ・ライトが脚本を執筆。撮影はディオン・ビーブ。製作はスティーヴン・スピルバーグ、ルーシー・フィッシャーとダグラス・ウィック。貧しい漁村に生まれ、9歳で花街の置屋に売られた少女の千代(大後)は、ある時“会長”と呼ばれる紳士(渡辺)に優しく声をかけられ、それ以来、芸者になって彼にもう一度逢いたいと夢見るようになる。一流の芸者、豆葉(ヨー)の厳しい指導の末に千代は“さゆり”(ツィイー)となり、やがて花街一の芸者へと花開いていく……。この映画はドリームワークス、コロンビア・ピクチャーズ他の共同製作となっており、日本での配給はソニーが担当することになっていたが、撮影現場を訪問し、中国人の女優が英語で日本人芸者を演じているのを見たソニーは、この作品を日本で配給することを断念した。その理由はソニーが“日本企業”だから。その結果、日本での配給はブエナ・ビスタが担当することになった (ブエナは過去に「パール・ハーバー」を日本でヒットさせている)。

音楽はジョン・ウィリアムスが作曲しており、彼と「セブン・イヤーズ・イン・チベット」で組んだヨーヨー・マ(チェロ)と、「シンドラーのリスト」で組んだイツァーク・パールマン(ヴァイロリン)が演奏に参加している(ウィリアムスはこのスコアを担当したために「ハリー・ポッターと炎のゴブレット」の仕事を引き受けることができなかった)。「Sayuri's Theme」は、チェロをフィーチャーしたやや物悲しく美しいさゆりの主題。尺八を加えて日本的な雰囲気を出してはいるが、旋律自体は特に日本的ではない。「The Journey to the Hanamachi」は、アブストラクトな尺八のフレーズから、さゆりの主題へと展開。「Going to School」はリリカルで軽快なタッチ。なぜか中国風に聞こえる。「Brush on Silk」は三味線による曲だが、こういう曲はウィリアムスの個性が殆ど感じられない。「Chiyo's Prayer」は、千代の祈りを表現した幻想的なチェロによる曲。「Becoming a Geisha」は、ドラマティックでサスペンスフルなさゆりの主題のバリエーション。「Finding Satsu」は、尺八と琴をフィーチャーした曲。「The Chairman's Waltz」は、ヴァイロリン・ソロが美しいややトラジックな“会長さん”のワルツ。「The Rooftops of the Hanamachi」はサスペンス調。「The Garden Meeting」は、会長のワルツからさゆりの主題へと展開。「Destiny's Path」もさゆりの主題のバリエーション。「The Fire Scene and the Coming of War」はサスペンス調の曲で、邦楽の「扇の的」が引用されている。「Confluence」は、ドラマティックで美しいチェロによるさゆりの主題。「Sayuri's Theme and End Credits」は、さゆりの主題のリプライズによるエンドクレジット。日本の楽器を使ってはいるが、敢えて“エキゾチック”なタッチを避けて、オーソドックスなドラマティック・アンダースコアとなっているところが、ベテランのウィリアムスらしい。
(2005年12月)

John Williams

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