風とライオン(完全盤) THE WIND AND THE LION (Complete Score)

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

演奏:グランケ交響楽団
Performed by the Graunke Symphony Orchestra

(米Intrada / MAF 7101)

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1975年製作のアメリカ映画。監督・脚本は「デリンジャー」(1973)「ビッグ・ウェンズデー」(1978)「コナン・ザ・グレート」(1982)「若き勇者たち」(1984)「戦場」(1989)「イントルーダー/怒りの翼」(1990)等のジョン・ミリアス。出演はショーン・コネリー、キャンディス・バーゲン、ジョン・ヒューストン、ブライアン・キース、ジェフリー・ルイス、スティーヴ・カナリー、ヴラデク・シェイバル、ナディム・サワルハ、ロイ・ジェンソン、デボラ・バクスター、ジャック・クーリー、クリス・アラー、サイモン・ハリソン、ポリー・ゴッテスマン他。撮影はビリー・ウィリアムズ。1904年のモロッコを舞台に、アメリカ人の未亡人イーデン(バーゲン)とその息子ウィリアム(ハリソン)、娘ジェニファー(ゴッテスマン)を誘拐したリフ族の首長ムレイ・アクメッド・モハメッド・エル=ライズリ(コネリー)と、人質救出のために米国艦隊を派遣するセオドア・ルーズベルト大統領(キース)との駆け引きを描いたエピック・ドラマ(実際にエル=ライズリに誘拐されたのはギリシャ人の初老の男性だったという)。監督のミリアスは、デヴィッド・リーン監督の「アラビアのロレンス」を意識して、当初ライズリ役にオマー・シャリフ、ルーズベルト役にアンソニー・クインを希望していたという。この作品は、1975年度アカデミー賞の作曲賞と音響賞にノミネートされている。

音楽を作曲したジェリー・ゴールドスミスのベスト・スコアの1つ。公開当時の1975年に米Aristaレーベルから38分の音楽を収録したサントラLPが出ており、1989年に米Intradaレーベルが同じ内容のCDをリリースしている。今回、2007年に米Intradaレーベルがリリースした完全盤サントラは、CD2枚組で、1枚目には63分(全25曲)のコンプリート・スコア、2枚目には新たにリマスターされた1975年版のプログラムと、アレクサンダー・カレッジ編曲による全てのソース音楽を収録。まさにファン待望のリリースと言えよう。Intradaとは本来競合関係にある米Film Score Monthlyレーベルの主宰ルーカス・ケンドールが、ワーナー・ブラザース保管の音源からのレストレーションを監修している。

ゴールドスミスのスコアは、フル・オーケストラと多様なパーカッションを駆使したダイナミックなエピック・アドヴェンチャー・スコアで、圧倒的迫力。「Main Title」は、鋭いパーカッションとフレンチホルンによるパワフルなイントロから、ヒロイックなライズリの主題へと展開。ゴールドスミスの作品中でも最も男性的でマッチョな主題で、「Mercy」「The Legend」等、スコア全体を通して様々なアレンジメントで登場する。「The Horsemen」「The Horsemen Arrive」は、ライズリの騎馬兵がイーデンたちを誘拐するシーンのバーバリックでパワフルなアクションスコア。「The Raisuli / Mr. President」は、ライズリの主題に引き続き、荘厳なルーズベルトの主題が展開。「Morning Camp」「The Camp」「Seat of the Sultan」は、アラビックな舞踏音楽風の曲。「The Riff / The Well」は、ラヴ・テーマをフィーチャーしたドラマティックな曲。「The Tent」は、抑制されたサスペンス音楽。「No Respect / The True Symbol」は、後半コープランド風のヒロイックな盛り上がりからルーズベルトの主題へと展開。「The Palace」は、重厚なマーチ風からライズリの主題へ。「The Fleet's In」は、コープランド風の荘厳でミリタリスティックなファンファーレ。「The Blue People」は、イーデンと子供たちが深夜に脱走し、邪悪な海賊たちに拉致されてしまうシーンのサスペンス音楽。「Raisuli Attacks / Guests of Raisuli (True Feelings)」は、ライズリの部隊が海賊を襲撃し、イーデンたちを奪還するシーンのダイナミックなアクションスコア。中盤でラヴ・テーマを挿入。「Lord of the Riff」は、ライズリの主題のダイナミックなアレンジメントで、スコア全体の白眉。「The Raiding Party」「Demands」は、パーカッション主体の曲。「Times Remembered」「A Bid for Freedom (Something of Value)」は、ラヴ・テーマをフィーチャーした曲。「The Letter」は、ルースベストの主題によるジェントルな曲。「End Title」は、メインタイトルのリプライズ。1枚目のラストの「I Remember (Love Theme From The Wind and the Lion)」は、ラヴ・テーマのアルバム用フル・ヴァージョン。ゴールドスミスの書いた最も美しい主題の1つだろう。ゴールドスミスはこのスコアで上述の通りアカデミー賞の作曲賞と、英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)にノミネートされている。映画音楽史上に残る傑作。必聴盤。
(2007年8月)

Jerry Goldsmith

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