(未公開)ロバート・アルトマンのイメージズ IMAGES
作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS
パーカッション・ソロ:ツトム・ヤマシタ
Percussion Solos: STOMU YAMASH'TA
(ベルギーPrometheus / LPCD 163)
1972年製作のイギリス=アイルランド=アメリカ合作映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済み)。監督は「M★A★S★H マッシュ」(1970)「ロング・グッドバイ」(1973)「ナッシュビル」(1975)「三人の女」(1977)「ザ・プレイヤー」(1992)「プレタポルテ」(1994)「ショート・カッツ」(1994)「ゴスフォード・パーク」(2001)「今宵、フィッツジェラルド劇場で」(2006)等のロバート・アルトマン。出演はスザンナ・ヨーク、ルネ・オーベルジョノワ、マルセル・ボズッフィ、ユーグ・ミレー、キャスリン・ハリソン、ジョン・モーレイ、バーバラ・バックスレイ。主演のスザンナ・ヨークの原作『In Search of Unicorns』を基にロバート・アルトマンが脚本を執筆。撮影はヴィルモス・ジグモンド。昔の恋人の幻覚に悩まされるキャスリン(ヨーク)は、夫のユーグ(オーベルジョノワ)と2人で田舎へ静養にいくが、そこでも幻覚症状は治まらず、昔の恋人や自分にそっくりな女の幻覚を見てしまう……。統合失調症の女性をテーマにした作品で、主演のスザンナ・ヨークは1972年度カンヌ国際映画祭の女優賞を受賞、ヴィルモス・ジグモンドは英国アカデミー賞の撮影賞にノミネートされた。
音楽はロバート・アルトマン監督の「ロング・グッドバイ」も手がけたジョン・ウィリアムスで、彼はこのスコアで1972年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。主人公のキャスリンが現実と幻覚を行き来する展開に合わせ、彼女が現実世界で児童小説を書いている場面ではピアノ(ウィリアムス自身の演奏)とストリングス(BBC交響楽団)によるリリカルでややメランコリックな曲を、幻覚を見る場面ではツトム・ヤマシタのパーカッションをフィーチャーしたアブストラクトでワイルドに歪んだ曲を展開している。冒頭の「In Search of Unicorns」は、キャスリンが自作の児童小説を朗読するシーンに流れるピアノとストリングスによるメランコリックな主題に、アブストラクトなパーカッションによるパッセージが挿入されるメインタイトル。「The House」は、夫と田舎へドライブする際にキャスリンが幻覚を見るシーンのアブストラクトな曲。「Dogs, Ponies & Old Ruins」は、キャスリンが森の中で小説の構想を練りながら散歩するシーンの、ギターとストリングスによるメインの主題。「Visitations」は、キャスリンが過去の恋人マルセル(ミレー)や、自分とそっくりの女性を見るシーンのアブストラクトな曲で、ヤマシタの不気味な唸り声まで挿入される。「Reflections」は、ストリングスによるサスペンスフルな曲(映画では未使用)。「The Killing of Marcel」は、キャスリンがマルセルをナイフで刺し殺すシーンのサスペンス音楽で、ここでも唸り声が登場。「The Love Montage」は、混乱したキャスリンが、夫、マルセル、愛人のルネ(ボッズフィ)の3人の男と愛し合うシーンのアブストラクトな曲。「Blood Moon」は、ストリングスによるクラシカルでトラジックな曲(映画では未使用)。「Land of the Ums」は、キャスリンがルネをショットガンで射殺するシーンのアブストラクトな曲。「The Night Witch Ride」は、キャスリンが森の中で自分のダブルを見るシーンのアブストラクトな曲で、呼吸音が挿入される。「The Waterfall / Final Chapter」は、クライマックスのサスペンスフルなパッセージから、ピアノとストリングスによるメインの主題のリプライズで締めくくる。
ジョン・ウィリアムスとロバート・アルトマンは、この「(未公開)ロバート・アルトマンのイメージズ」のスコアに、フランソワ & ベルナール・バッシェによる金属とガラスの音響彫刻(Sound Sculptures)を使用したいと考え、パリのバッシェのスタジオを訪問して相談したところ、ベルナール・バッシェは「ツトム・ヤマシタだけが触ることを許される」ことを条件に彫刻を貸し出したという。ヤマシタは、バッシェの音響彫刻の他に、ティンパニ、ハンドドラム、ブロック、ベル、マリンバ、歌舞伎打楽器、インカ・フルート等を演奏している。このベルギーのPrometheusレベールのサントラCDは、アカデミー賞選考評価用のLPアルバムをベースにCD化したもので、故ロバート・アルトマン監督(1925〜2006)に捧げられている。2000枚の限定プレス。
ツトム・ヤマシタ(1947〜)は、京都市出身の打楽器奏者(本名は山下
勉)。1964年に17歳で渡米し、ニューヨークのジュリアード音楽院、ボストンのバークレー音楽院で学んだ後、シカゴ室内管弦楽団との共演などを通じてキャリアを積み、1971年にアルバム「ツトム・ヤマシタ」を発表。映画音楽やバレエ音楽も手がけている。ツトム・ヤマシタが手がけた映画音楽には「(未公開)ロバート・アルトマンのイメージズ(Images)」(1972)「F1グランプリ/栄光の男たち(One
by One)」(1975)「地球に落ちて来た男(The Man Who Fell to
Earth)」(1976)「永遠なる武道」(1979)「(未公開)テンペスト(Tempest)」(1982)「空海」(1984)がある。
(2008年2月)
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