スコルピオ SCORPIO

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 69)


1973年製作のアメリカ映画。監督は「脱走山脈」(1968)「追跡者」(1970)「メカニック」(1972)「シンジケート」(1973)「狼よさらば」(1974)「リベンジャー」(1979)「ロサンゼルス」(1982)「スーパー・マグナム」(1985)等のマイケル・ウィナー。出演はバート・ランカスター、アラン・ドロン、ポール・スコフィールド、ジョン・コリコス、ゲイル・ハニカット、J・D・キャノン、ジョアンヌ・リンヴィル、メル・ステュワート、ヴラデク・シェイバル、メアリー・モード、ジャック・コルヴィン、ウィリアム・スミサーズ他。デヴィッド・W・リンテルズの原案を基にジェラルド・ウィルソンとリンテルズが脚本を執筆。撮影はロバート・ペインター。CIAのベテラン諜報員クロス(ランカスター)は、“スコルピオ”と呼ばれるフリーランスの殺し屋ジャン・ローリエ(ドロン)と中東某国首相暗殺の任務を遂行するが、クロスには二重スパイの嫌疑がかけられており、ローリエはクロスを抹殺せよとの指令を受ける……。この映画のタイトルは当初「Dangerfield」だったが、監督のウィナー、プロデューサーのウォルター・ミリッシュ、主演のランカスターとドロンの全員が偶然にも“さそり座”だったため、「スコルピオ」に変更されたという。

音楽は「追跡者」(1970)「妖精たちの森」(1971)「チャトズ・ランド」(1972)「メカニック」(1972)「(未公開)大いなる眠り」(1978)でもマイケル・ウィナー監督と組んでいるジェリー・フィールディング。この「スコルピオ」はフィールディングのベスト・スコアの1つで、映画の舞台となるワシントン D.C.、ロンドン、パリ、ウィーンといった各都市の舞台背景を情感豊かなオーケストラ・サウンドによって描写すると共に、シャープなジャズによりアクションとサスペンスを盛り上げている。「Main Title」は、パリを描写した情感豊かで、ややメランコリックなタッチのメインタイトル。この主題は、「Reflections of Cathood」「I Have to Go Deep」「I Picked You Up」「Boiler Room」等で様々なバリエーションにより登場する。「Target Zim」は、ダークでサスペンスフルな曲。「In the Aircraft」「Susan's Apartment」等は、イージーリスニング風のジェントルな曲。「C.I.A. Tail」は、ジャズ・ベースのハイテンションなサスペンス音楽。「The Big Wheel」は、遊園地風のフレーズや、ロシア色の主題を織り込んだサスペンス音楽。「"Un Dia de Julio"」は、カルロス・リエラの歌詞によるマーチ風の歌曲。「The Imperial Vaults」は、有名なワルツ「Die Flendermaus」を織り込んだ曲。「In the Greenhouse」は、ミリタリスティックなタッチのサスペンス音楽。「Zharkov Wags His Tail」は、メランコリックなタッチからビジーなサスペンス音楽へ展開。「Into the Underground」は、7分に及ぶダイナミックでハイテンションなアクション音楽で、フィールディングの本領発揮。「Zharkov Bites His Tail」は、ビジーなピアノをフィーチャーしたサスペンス音楽。「All Fall Down」は、ダークなエンディング。

この「スコルピオ」のサントラについては、1977年に「Elmer Bernstein's Film Music Collection」シリーズの1枚として、フィールディング自身の編集によるサントラLP(FMC-11)がリリースされており、その後、米Bay Citiesレーベルが1991年にこれをCD化している(1500枚限定プレス)。今回の米IntradaレーベルのCDは、オリジナル・ステレオ・セッション・マスターによるコンプリート・スコア(22曲/60:28)の初リリースで、1500枚の限定プレス。

ところで今回の限定盤CDは、Intradaが自社サイトでリリースを告知してからわずか数時間で売り切れてしまい、その後「eBay」等のオークションサイトにプレミアム価格で売りに出されるという事態が発生した。この手の現象は1000枚程度の限定プレスCDでは最近よく起こることだが、この「スコルピオ」は(スコア自体は非常に優れているものの)過去に一度CDがリリースされており、それほどCD化の希望が多かったスコアではないと思う。それが異常なスピードで売り切れたのは、投機的な目的でおろらく10枚以上のバルクで買い占める者がいるからで、彼らは、過去にIntradaがリリースした「追跡者」「メカニック」「チャトズ・ランド」といったフィールディングの限定盤CDがいずれもすぐに売り切れていることから、フィールディングをプレミアムが付きやすい“銘柄”と考えたのだろう。こういった連中はフィールディングのスコアや映画音楽そのものにも特に興味はなく、この映画を見たこともないのだろうが、彼らの投機的な買占めのために、純粋にこのスコアを楽しもうとしているファンが入手できなかったり、高額で買わなければならなくなるのは非常に迷惑な話だと思う。

因みに、1991年のBay Cities盤の収録曲は以下の通りで、「ジョニーは戦場へ行った」(1971)と「(未公開)A War of Children」(1972)の組曲を含む。

「Jerry Fielding Film Music 2」(米Bay Cities / BCD-LE 4003)

SCORPIO (1973)
1. The Parisian Connection 2:28
2. Reunion in Washington 2:16
3. On the Plane from Paris 3:03
4. Two Ways to Walk 1:58
5. A Wag of a Tail 4:09
6. Hello and Farewell 1:49
7. The Vienna Wheel 3:34
8. The Lincoln Brigade 1:38
9. The Imperial Vaults 3:36
10. A Russian Wags His Tail 3:20
11. In the Winter Garden 3:04
12. Flowers 2:22
13. Hide and Seek 5:59
14. All Fall Down 4:22

JOHNNY GOT HIS GUN (1971)
15. Suite 13:39

A WAR OF CHILDREN (1972)
16. Suite 12:10

(2008年7月)

Jerry Fielding

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2008  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.