フライングハイ AIRPLANE!

作曲・指揮:エルマー・バーンステイン
Composed and Conducted by ELMER BERNSTEIN

演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony Orchestra

(米La-La Land / LLLCD 1093)

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1980年製作のアメリカ映画。監督・脚本は「ケンタッキー・フライド・ムービー」(1977/脚本のみ)「トップ・シークレット」(1984)「裸の銃を持つ男」(1988)等のデヴィッド・ザッカージム・エイブラハムズジェリー・ザッカーの“ZAZ”トリオ。出演はロバート・ヘイズ、ジュリー・ハガティ、ロバート・スタック、ロイド・ブリッジス、ピーター・グレイヴス、レスリー・ニールセン、カリーム・アブドル=ジャバール、ローナ・パターソン、スティーヴン・スタッカー、フランク・アシュモア、ジョナサン・バンクス、クレイグ・ベレンソン、バーバラ・ビリングスレー、モーリーン・マクガヴァーン、エセル・マーマン他。撮影はジョセフ・F・バイロック。アーサー・ヘイリー原作の「(未公開)ZERO HOUR!」(1957/監督:ハル・バートレット、出演:ダナ・アンドリュース、リンダ・ダーネル)のストーリーをベースに、「大空港」(1970)以降の「エアポート」シリーズ等のパロディを満載したスラプスティック・コメディの快作。ジェット旅客機内で集団食中毒が発生し、オーヴァー機長(グレイヴス)やマードック副操縦士(ジャバール)までもが倒れてしまう。客室乗務員を務めるかつての恋人エレイン(ハガティ)に会いたくてその機に乗っていた元戦闘機パイロットのテッド・ストライカー(ヘイズ)は、いきなり1人で旅客機を操縦する羽目になる……。「(TV)アンタッチャブル」のエリオット・ネス役のロバート・スタックや、「(TV)スパイ大作戦」のジム・フェルプス役のピーター・グレイヴス、「(TV)サンフランシスコ大空港」のジム・コンラッド役のロイド・ブリッジズ等“まじめ”な役者たちが脇でずっこけキャラを演じているのが最高に可笑しい。それまではいたってシリアスな役ばかりだったレスリー・ニールセンがこの作品でコメディ演技に開眼し、ZAZトリオの「(TV)フライング・コップ」(1982〜1984)「裸の銃を持つ男」シリーズ等に主演するきっかけにもなった。日本でTV放映された時の日本語吹替は、ロバート・ヘイズ(安原義人)、ジュリー・ハガティ(高島雅羅)、ロバート・スタック(小林清志)、ピーター・グレイヴス(若山弦蔵)、レスリー・ニールセン(中村 正)、ロイド・ブリッジス(寺島幹夫)等と秀逸だったが、日本でリリース済のDVDには残念ながら収録されていない。この作品は、1980年度ゴールデングローブの作品賞(ミュージカル・コメディ部門)、英国アカデミー賞の脚本賞にノミネートされており、1982年には続編「フライングハイ2/危険がいっぱい月への旅」が製作されている。

音楽はハリウッドを代表する名作曲家エルマー・バーンステイン(1922〜2004)が作曲しているが、彼はこの「フライングハイ」以外にも「アニマル・ハウス」(1978)「ゴーストバスターズ」(1984)「サボテン・ブラザース」(1986)等のコメディ映画のスコアを手がけており、いずれの作品もストレートにシリアスなアンダースコアを付けることでギャグがかえって強調されるとの手法が非常に効果的。「Main Title」は、ジョン・ウィリアムス作曲の「ジョーズ」の主題からディザスター映画のタッチを上手く再現したメインタイトルへと展開。「Kiss Off」は、実にロマンティックなラヴ・テーマで、ヴァイオリン・ソロが美しい。このラヴ・テーマは「Love Theme from AIRPLANE!」「From Here to There」「Head / Memory」「“Runway is Niner”/“The Gear is Down and We're Ready to Land”」等、主役のヘイズとハガティが登場するシーンで何度も繰り返される。「Ambulance Arrives」は、バーンステインらしいウエスタン調の主題。「Hari Krishna / Ticket / Nervous」は、サスペンス調の曲。「Lisa / Farewell / Take Off / Another Meeting」は、ピアノによるリリカルな曲からドラマティックな主題、ラヴ・テーマへと展開。「Fighting Girls」は、ダイナミックでミリタリスティックなアクション音楽。「Shimmer / Molumbo」は、アフリカ民俗音楽風の曲。後半の「Zip / Eggs / Roger, Take Over」「Wild Violins / Sickness / Idea」「Thar She Blows! / Flash / Panel」「“Where the Hell is Kramer?”/ Trouble」「Mayday」「Clumsy」「Crasher」等は、ディザスター映画調のシリアスなサスペンス音楽が連続。「Punch-Up / Kramer」は、ミリタリスティックなマーチ風の主題。「Dog Fight / Failure / Pep Talk / Notre Dame Victory March / Master」は、マーチの主題からサスペンス音楽、明るくヒロイックなノートルダム・ヴィクトリー・マーチ(ノートルダム大フットボール・チームの応援歌/作曲:マイケル・J・シア)へと展開。「News」は、メインの主題のマーチ風。「Resolution / Tag」は、優雅なマーチから女声コーラス入りのラヴテーマ、ヒロイックなマーチへと展開。ラストの「Notre Dame Victory March」も、ヒロイックなノートルダム・ヴィクトリー・マーチで締めくくる。最後に代替テイク等のボーナストラックが14曲収録されている。「Instruments」という13秒のビッグバンドジャズは、管制官のロバート・スタックが「コクピットの連中は一体何をやってるんだ!」と怒鳴るとコクピットで主役たちがジャズの演奏をしている短いショットに切り替わるという一発ギャグのソース曲で、こんなものまで入っている……。全37曲、52分以上収録のコンプリート・スコアで、3000枚の限定プレス。
(2009年6月)

Elmer Bernstein

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