わらの犬 STRAW DOGS

作曲・指揮:ジェリー・フィールディング
Composed and Conducted by JERRY FIELDING

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 126)

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1971年製作のアメリカ映画。監督は「ワイルドバンチ」(1969)「砂漠の流れ者」(1970)「ゲッタウェイ」(1972)「ビリー・ザ・キッド/21才の生涯」(1973)「ガルシアの首」(1974)「戦争のはらわた」(1975)等のサム・ペキンパー。出演はダスティン・ホフマン、スーザン・ジョージ、デヴィッド・ワーナー、ピーター・ヴォーン、T・P・マッケンナ、デル・ヘネイ、ジム・ノートン、ドナルド・ウェブスター、ケン・ハッチソン、レン・ジョーンズ、サリー・ソムセット、ロバート・キーガン、ピーター・アーン、コリン・ウェランド、クロエ・フランクス他。ゴードン・M・ウィリアムスの原作『The Siege of Trencher's Farm』を基にサム・ペキンパーとデヴィッド・ゼラグ・グッドマンが脚本を執筆。撮影はジョン・コキロン。妻のエイミー(ジョージ)と彼女の故郷であるイギリスの片田舎に引っ越して来たアメリカ人の大学教授デヴィッド・サムナー(ホフマン)は、反暴力主義で対立を避けようとする性格から、粗暴な村の男たちの陰湿な嫌がらせにひたすら耐え続ける。ある夜、リンチされそうになった若者ヘンリー(ワーナー)を自宅にかばったことをきっかけに村の男たちから総攻撃を受けたデヴィッドは、暴力には暴力で対抗する決意をする……。クライマックスでの狂気に満ちたヴァイオレンス演出はペキンパーの本領発揮。暴力を肯定しているとの批判もあるが、むしろ暴力の醜さや恐怖を強調した演出だろう。「わらの犬」という題名は、老子の『天と地は無情で、人をわらの犬のごとく扱う』という言葉から引用したという。

音楽は「ワイルドバンチ」(1969)「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」(1972)「ガルシアの首」(1974)「キラー・エリート」(1975)「コンボイ」(1978)でもサム・ペキンパー監督と組んでいる盟友のジェリー・フィールディング。彼はこのスコアで1971年度アカデミー賞の作曲賞にノミネートされている。「Prologue」は、静かな夜明けのようなファンファーレ調のプロローグ。「Amy's Noise」は、エイミーがカーステレオでかけるアップビートでファンキーなソース曲。「Math Trick; Playing with the Help; Dinner Time」は、ヴァイオリン・ソロをフィーチャーした不吉なタッチから、中盤ストリングスによる快活で躍動的な主題に展開。この主題は何度も登場する。「Peeping Toms」「Don't Play Games; Window Display」は、抑制されたサスペンス音楽から躍動的な主題へ。「Dead Cat」「The Man Trap」「Did I Catch You Off Guard?」「Suffering Amy」等も、不吉なサスペンス音楽。「The Hunting Party」は、静かなファンファーレ調のイントロから躍動的な主題へ。「The Infamous Appassionata」は、ダークなサスペンス音楽。「Trencher's Farm」も、躍動的な主題のリプライズ。「The Wakely Arms; Janice Hedden's Death」は、ダイナミックなジャズのソース曲。「Death of the Major; Shotgun; David Vs. Charley」は、クライマックスの暴力描写が始まるシーンのダークなサスペンス音楽。「I Got 'Em All; David Vs. Riddaway」は、静かなファンファーレ調のイントロからダイナミックでビジーなアクション音楽へ。「Epilogue」は、静かなエピローグで締めくくる。激しい怒りと暴力を抑制されたクラシカルなタッチで表現した知的なスコア。このCDのライナーノーツによると、スコア中のヴァイオリン・ソロのモチーフはイゴール・ストラヴィンスキー作曲の「兵士の物語(Histore du Soldat)」からの引用らしい。

この「わらの犬」のサントラについては、米Citadelレーベルが1978年に「追跡者」「メカニック」「チャトズ・ランド」「わらの犬」の組曲を収録したLP2枚組のプロモーション盤をリリースしており、その後、米Bay Citiesレーベルが1990年に「追跡者」「メカニック」「(未公開)大いなる眠り」「わらの犬」「チャトズ・ランド」「妖精たちの森」の組曲を収録したCD2枚組/1500セット限定プレスのプロモーション盤をリリースしている。今回の米IntradaレーベルのCDは、オリジナルの2トラック・ステレオマスターによるコンプリート・スコア(16曲/41:53)の初リリースで、2000枚の限定プレス。

因みに、1990年のBay Cities盤の収録曲は以下の通り。

「Jerry Fielding Film Music」(米Bay Cities / BCD-LE 4001/02)

STRAW DOGS (1971)

・Prologue (1:45)
・Dialogues (4:20)
・Window Display (3:45)
・The Hunting Party (2:31)
・The Man Trap (4:14)
・The Infamous Apassionata (8:33)
・The Siege Begins (2:28)
・Coda (2:24)
・Epilogue (1:46)

(2010年4月)

Jerry Fielding

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