2010年製作のフランス映画。監督は「グラン・ブルー」(1988)「ニキータ」(1990)「レオン」(1994)「フィフス・エレメント」(1997)「ジャンヌ・ダルク」(1999)「アンジェラ」(2005)「アーサーとミニモイの不思議な国」(2006)等のリュック・ベッソン。出演はルイーズ・ブルゴワン、ジル・ルルーシュ、ジャン=ポール・ルーヴ、マチュー・アマルリック、フィリップ・ナオン、ニコラ・ジロー、ジャッキー・ネルセシアン、ムーサ・マースクリ、ロール・ドゥ・クレルモン=トネール、ジェラール・シャイユー、グレゴリー・ラゴ、フレデリック・ベル、クリストフ・ディミトリ・ルヴェイユ、ユーセフ・ハジディ、スワン・アルロー他。(ジャック・)タルディの原作コミックを基にリュック・ベッソンが脚本を執筆。撮影はティエリー・アルボガスト。製作はヴィルジニー・ベッソン=シラ。「レオン」「フィフス・エレメント」「ジャンヌ・ダルク」「アーサーとミニモイの不思議な国」と英語作品を監督してきたベッソンが、「アンジェラ」に引き続きフランス語で製作した監督作品。1911年のエジプト。世界中の秘宝を集めてきたジャーナリストのアデル・ブラン=セック(ブルゴワン)は、テニス中の事故で死に瀕している双子の妹アガット(クレルモン=トネール)の命を救う古代エジプトの“復活の秘薬”を手に入れるため、灼熱の砂漠を越えてラムセス二世に仕えた医者のミイラへとたどり着く。そこで黄金を横取りしようとする盗賊たちの襲撃をかわしたのも束の間、いつも彼女の邪魔をする残忍で冷徹なマッドサイエンテスト、デュールヴー(アマルリック)に捕えられてしまう。一方パリでは、ジュラ紀の化石から翼竜プテロダクティルスが孵化し、街の上空を飛びまわるという事件が起こっていた。捜査を担当することになったカポニ警部(ルルーシュ)は、博物館のメナール教授(ナオン)からジュラ紀の専門家エスペランデュー教授(ネルセシアン)を紹介されるが……。主演のルイーズ・ブルゴワンは、仏テレビ局カナル・プリュスのお天気キャスターで注目を浴び、「(未公開)La fille de Monaco」(2008)で第34回セザール賞の有望若手女優賞にノミネートされた新星で、アデル役を好演している。「世の中が不況で暗く沈んでしまっているときこそ、楽しく軽やかな映画を作るべきだと思った」というリュック・ベッソン監督の言葉通り、かなりコメディ色の強い軽快なエンタテインメントになっている。
音楽は、「アーサーとミニモイの不思議な国」(2006)「アーサーと魔王マルタザールの逆襲」(2009)に引き続きベッソン監督の盟友エリック・セラが担当。短めの49曲がほとんど途切れなく続く。冒頭の「L'Adele」は、カトリーヌ・リンジェールのヴォーカルによる明るく躍動的で少しレトロなタッチの主題歌。このメインのアデルの主題は「J
comme Jardin」「La valse d'Adele」「L'ogre de Garbarie」「Marijo en prison」「Adele et
le president」「Crapodak Nelson et la Baballe」「Le bouquet」等でも登場する。「Hieroglyphes」は、アラビックなタッチの躍動的な曲。「Ferdinand
Titubant」は、陽気なダンスミュージック風の曲。「Un Pterodactyle est ne」「Inspecteur Caponi」「Un
etrange invite」「Dieuleveut le malefique」「Justin a la chasse」「Preparation au
rituel」等は、サスペンス調の曲。「Petrodak attaque」「Souvenir d'Adele」「Trukenplum」等は、ビジーなアクション音楽。「Les
lettres de Zborowsky」「La becquee」等は、ジェントルで大らかな曲。「Mehara」「La malediction
de Wadjet」「Le bal des momies」「Momies en goguette」等は、アラビックなタッチの躍動的な曲。「Le
tombeau de Patmosis」は、アラビックなタッチのサスペンス音楽。「Appelez-moi
l'interieur」「Crapodak a la Tour Eiffel」「L'art du camouflage」等は、コミカルなタッチ。「Nonna」は、メインの主題の賛美歌風コーラス。「Pterolovshak」は、幻想的なタッチ。「Temps
mort」「Axidan」「Le Pharaon et le sac en toile」は、メランコリックで美しい曲。「Le chemin de
la guillotine」は、ミリタリスティックなサスペンス音楽。「Un petit tour de Pterodactyle」「Ma
soeur ma jumelle」「Les soeurs Blanc-Sec」「La dame au chapeau vert」は、ジェントルな曲。「Rituel
de resurrection」は、幻想的なコーラスによる荘厳な主題から後半はメランコリックな主題へ。「Une nuit au Louvre」は、コーラスによるサスペンス調から後半壮大に盛り上がる。「Bon
Voyage Mademoiselle Blanc-Sec」は、メインの主題のリプライズ。ラストの「Adele Blanc-Sec」は、トマ・デュトゥロンと主演のルイーズ・ブルゴワンのデュエットによる明るく軽快なシャンソン。レトロなワルツ調のアデルの主題とアラビックなタッチを組み合わせたオーケストラル・スコア。最近のベッソン監督作品でのエリック・セラのスコアは、明快でオーソドックスなオーケストラ音楽が主体になっており、かつての「グラン・ブルー」「ニキータ」「レオン」のイメージとはかなり異なる。
(2010年6月)
Éric Serra
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