カールズ・ウォー:カール・デイヴィス戦争映画音楽 集 CARL'S WAR

作曲・指揮:カール・デイヴィス
Composed and Conducted by CARL DAVIS

演奏:チェコ国立交響楽団
Performed by the Czech National Symphony Orchestra

(英Carl Davis Collection / CDC009)

cover
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<収録曲>

1. (未公開/TV)秘録:第二次世界大戦 The World At War
2. (未公開/TV)Goodnight Mr. Tom
3. (未公開/TV)Echoes That Remain
4. (未公開)Anne Frank Remembered
5. (未公開/TV)白い渡り鳥 The Snow Goose

カール・デイヴィス作曲による第二次世界大戦をテーマにした作品のスコアを集めた新録音コンピレーション(2010年6月にプラハで録音)。デイヴィスのベストスコアの1つである「(未公開/TV)白い渡り鳥」が収録されており、これだけでも非常に価値のあるアルバム。

1. (未公開/TV)秘録:第二次世界大戦 The World at War

イギリスのテムズTVが1973年に製作した52分×26話の第二次大戦ドキュメンタリー(エミー賞を受賞)。製作総指揮はジェレミー・アイザックス。監督はヒュー・ラゲット、デヴィッド・エルスタイン、テッド・チャイルズ、マーティン・スミス、ジョン・ペット、マイケル・ダーロウ。ローレンス・オリヴィエエリック・ポーターがナレーションを担当。ここでは、2010年に新たに編曲された5分11秒のコンサート用組曲を収録。力強くトラジックなタッチのメインの主題から、ドイツ軍を描写した軽快なマーチをはさんでメインの主題で締めくくる。このスコアは、過去にDeccaレーベルより4楽章から成る交響楽のLPが出ていた他、英Silva Screenレーベルからデイヴィス指揮プラハ市フィルハーモニー管弦楽団の新録音による1枚もののCDがリリースされており、同じ内容のCDがCarl Davis Collectionレーベルからも再発されている。

2. (未公開/TV)Goodnight Mr. Tom

1998年製作のイギリスのTV映画。監督は「スカイエース」(1976)「(未公開)恐怖の魔力/メドゥーサ・タッチ」(1978)「(未公開)かまきり」(1982)「(TV)帰郷/荒れ地に燃える恋」(1994)等のジャック・ゴールド。出演はジョン・ソウ、ニック・ロビンソン、アナベル・アピシオン、トーマス・オレンジ、ウィリアム・アームストロング、ジェフリー・ビーヴァーズ、モッシー・スミス他。ミッシェル・マゴリアンの原作『Good Night, Mr. Tom』を基にブライアン・フィンチが脚色。撮影はクリス・オデル。第一次大戦で妻と子供を亡くしたことを今でも悔やんでいる気難しい老人のトム・オークレー(ソウ)は、ダンケルクの戦いの前夜にロンドンからイギリスの小村に疎開してきた10歳の少年ウィリアム(ロビンソン)の面倒を見ることになる。トムは、聡明ながらも寡黙で読み書きすらできないウィリアムが、両親から酷い虐待を受けてきたことを悟る。やがてウィリアムはトムに心を開くようになり、二人は幸せなひと時を過ごすが、少年の母親からロンドンに戻るようにとの連絡が届く……。デイヴィスのスコアは、「Arrival」が、ダークで重厚なイントロから明るく快活な主題、サスペンス調の主題、ジェントルな主題へと展開する曲。「Going Fishing」は、明るく快活な主題からジェントルなワルツの主題へ。「Return to London」は、ドラマティックでダークな主題からジェントルで優雅な主題へ。「Finale」は、荘厳で躍動的なフィナーレ。

3. (未公開/TV)Echoes That Remain

1991年製作のアメリカのドキュメンタリー映画。監督は「(未公開)ジェノサイド ナチスの虐殺 ホロコーストの真実」(1981)「(未公開)リベレーション 自由と解放 終戦を迎えて」(1994)等のアーノルド・シュワルツマン。脚本はマーヴィン・ハイアーとアーノルド・シュワルツマン。撮影はマイケル・アンダーソン。マーティン・ランドーミリアム・マーゴリスがナレーションを担当。「ナチ・ハンター」として知られたサイモン・ヴィーゼンタールの名前を冠するアメリカのユダヤ人組織サイモン・ヴィーゼンタール・センターの製作によるドキュメンタリーで、ナチス・ドイツによる大量虐殺前のチェコスロヴァキア、ハンガリー、ポーランド、ルーマニアのユダヤ人たちの生き様を描く。デイヴィスのスコアは、イディッシュ民謡を織り込んだダークで感動的なタッチ。「Theme」は、メランコリックなメインの主題。「Shtetl Main Street」は、ストイックでドラマティックな主題。「Pogrom I」は、トラジックなイントロからメランコリックで美しい主題へ。同じ主題が「Pogrom II」「Names and Saying」でも繰り返される。「Spring Cemetery」「Holidays I」「Holidays II」「Remember」も、ストイックでドラマティックな主題。

4. (未公開)Anne Frank Remembered

1995年製作のイギリス=アメリカ=オランダ合作映画。「アンネの日記」で有名なアンネ・フランクの生涯を描いたドキュメンタリー(1996年度アカデミー賞のドキュメンタリー賞を受賞)。製作・監督・脚本は、南アフリカ出身のジョン・ブレア。撮影はバリー・アックロイド。ケネス・ブラナーがナレーション、グレン・クローズが日記の朗読を担当。デイヴィスのスコアは、「Disappearance」がトラジックでドラマティックな曲。「Attic」は、リリカルで美しい主題から後半明るくドラマティックな主題へ。「Death of Anne Frank」は、力強いフィナーレ。

5. (未公開/TV)白い渡り鳥 The Snow Goose

1971年製作のイギリス=アメリカ合作TV映画(日本では劇場未公開でTV放映済)。監督はパトリック・ガーランド。出演はリチャード・ハリス、ジェニー・アガター、グレアム・クロウデン、フリーダ・バムフォード、ノエル・ジョンソン、ウィリアム・マーロウ、リュドミラ・ノヴァ他。「打撃王」(1942)「ポセイドン・アドベンチャー」(1972)「マチルダ」(1978)等のポール・ギャリコの原作を基にギャリコ自身が脚本を執筆。撮影はレイ・ヘンマン。エセックスの古い灯台に住むフィリップ・ラヤダー(ハリス)は、沼地の渡り鳥を愛する孤独な画家だった。ある日ラヤダーは、猟師に撃たれて傷ついたカナダ雁を抱えた孤児の少女フリス(アガター)と出会い、彼女を灯台に連れて行って、鳥の怪我の手当てをしてやる。冬の間、ラヤダーとフリスは雁を介抱しながら友情を育むが、春になると回復した雁は北へと飛び去っていき、フリスもラヤダーの前から姿を消す。それから3年が経ち、再び孤独になったラヤダーのもとに雁とフリスが戻ってくるが、ダンケルクの海岸でイギリス軍が足止めされていると知ったラヤダーは、戦地へと向う決意をする……。ジェニー・アガターがエミー賞の助演女優賞を受賞。ここでは、デイヴィスのスコアを基にした18分16秒の「Rhapsody on Themes from The Snow Goose」を収録。情感豊かで美しい「雁」の主題で始まり、激しくダイナミックな主題、牧歌的でジェントルな主題、リリカルで美しいラヴテーマへと展開し、最後はドラマティックに盛り上がる。デイヴィスのベストスコアの1つで、非常に感動的。このスコアはデイヴィスがロイヤル・フィルを指揮した以下のコンピレーションLPにも一部が収録されていたが、このアルバムは残念ながら今のところCD化されていない。

「カール・デイヴィス TV映画音楽集 CARL DAVIS: MUSIC FOR TELEVISION」
  作曲・指揮:カール・デイヴィス
  Composed and Conducted by Carl Davis (英EMI / INS 3021) LP
  演奏:ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団
  Performed by the Royal Philharmonic Orchestra
  ・The Snow Goose (未公開/TV)白い渡り鳥
  ・Our Mutual Friend (未公開)われらが友
  ・Wuthering Heights (未公開)嵐ヶ丘
  ・The Mayor of Casterbridge (未公開)
  ・Marie Curie (未公開)キューリー夫人
  ・The Long Search (未公開)

(2010年11月)

Carl Davis

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