ヒッチコックのファミリー・プロット FAMILY PLOT
作曲・指揮:ジョン・ウィリムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS
(米Varese Sarabance / VCL 1110 1115)
1976年製作のアメリカ映画。製作・監督は「裏窓」(1954)「知りすぎていた男」(1956)「めまい」(1958)「北北西に進路を取れ」(1959)「サイコ」(1960)等のアルフレッド・ヒッチコックで、これは彼の遺作。出演はバーバラ・ハリス、ブルース・ダーン、ウィリアム・ディヴェイン、カレン・ブラック、エド・ローター、キャスリーン・ネスビット、キャサリン・ヘルモンド、ウォーレン・J・ケマーリング、エディス・アトウォーター、ウィリアム・プリンス、ニコラス・コラサント、マージ・レッドモンド、ジョン・レーン、チャールズ・タイナー、アレクサンダー・ロックウッド他。「二つの顔をもつ男」(1956)「潜行」(1965)「さそり暗殺命令」(1967)「(TV)ジョニーの旅立ち」(1975)等のヴィクター・カニングの原作『The Rainbird Pattern』を基に「麗しのサブリナ」(1954)「北北西に進路を取れ」(1959)「ウエスト・サイド物語」(1961)「サウンド・オブ・ミュージック」(1964)「(未公開)ブラック・サンデー」(1977)等のアーネスト・レーマンが脚本を執筆。撮影はレナード・J・サウス。衣装デザインはイーディス・ヘッド。いんちき霊媒師のブランチ・タイラー(ハリス)は、富豪の老婦人ジュリア・レインバード(ネスビット)から、彼女の唯一の相続人で行方不明になっている甥を探し出す仕事を引き受ける。一方、表向きは宝石商のアーサー・アダムソン(ディヴェイン)は、愛人のフラン(ブラック)と組んで、億万長者を誘拐し身代金としてダイヤを要求する営利誘拐を繰り返していた。ブランチとその情夫ジョージ・ラムレー(ダーン)は、レインバードの甥を探すうちにアーサーへとたどり着くが……。かつてはハリウッドきっての美男美女ばかりを起用してきたヒッチコックが最後に撮った映画は、個性派俳優たちのアンサンブル・キャストによるおっとりしたタッチのサスペンスで、彼の作品中では異色。日本でのテレビ放映時の吹替キャストはバーバラ・ハリス(小原乃梨子)、ブルース・ダーン(山田康雄)、ウィリアム・ディヴェイン(田中信夫)、カレン・ブラック(此島愛子)、エド・ローター(村松康雄)、キャスリーン・ネスビット(川路夏子)、キャサリン・ヘルモンド(鈴木れい子)、チャールズ・タイナー(北村弘一)、他。
音楽はジョン・ウィリアムスが作曲しており、時期的には「タワーリング・インフェルノ」(1974)「JAWS/ジョーズ」(1975)と「未知との遭遇」(1977)「スター・ウォーズ」(1977)の間に手がけたスコア。「The First Seance」は、冒頭のブランチによる降霊祭のシーンでの、オーケストラとコーラスにハープシコードを加えた幻想的でミステリアスな主題。「Blanche's Challenge」は、降霊祭の主題のバリエーションからメイン(ブランチ)の主題へ。このブランチの主題は、「Blanche and George」「The Search Montage」「Breaking into the House」等でも登場する。「The Mystery Woman」は、ミステリアスなアダムソンの主題によるサスペンス音楽で、この主題は「Nothing Held Back」「Share and Share Alike」等でも登場。「The Rescue of Constantine / The Diamond Chandelier」は、アダムソンの主題から後半は明るく盛り上がる。「Kitchen Pranks」は、ややコミカルで抑制されたサスペンス音楽から、メインの主題のバリエーションへ。「The Shoebridge Headstone」「Maloney's Visit to the Jewelry Store / Maloney's Knife / The Stake Out」「The Mondrian Shot / The Revealed Identity」「The Secret Door / Blanche Wakes Up」等は、アダムソンの主題によるサスペンス音楽。「The Second Seance」は、オーケストラとコーラスによる降霊祭の主題。「The White Mustang」は、メインの主題のバリエーションによるサスペンスアクション音楽。「Maloney's Exit」「Blanche Gets the Needle」は、ダイナミックなサスペンスアクション音楽。「End Cast」は、降霊祭の主題からメインの主題へと展開するエンド・クレジット。「Family Plot Theme」は、シングル盤のリリース用に録音されたと思われる明るくリリカルなポップ曲。ラストの「The Stonecutter」は、1970年代調ロックによるソース曲で、これもウィリアムスの作曲。 「スター・ウォーズ」以降、重厚路線になるウィリアムスのライトなタッチのブラック・ユーモアが楽しめるスコア。このスコアは、過去に海賊版CDがあったが、これはVarese CD Clubによる正規盤の初リリースで、5000枚限定プレス。
このCDのライナーノーツによると、ヒッチコックはこの映画のスコアにジェリー・ゴールドスミス、ラロ・シフリン、リチャード・ロドニー・ベネット、ミシェル・ルグラン、デヴィッド・ローズ、ローレンス・ローゼンタール、ミクロス・ローザ、モーリス・ジャールといった作曲家の起用を検討したが、当時ユニバーサルの音楽担当役員だったハリー・ガーフィールドの提案により「JAWS/ジョーズ」でアカデミー賞を受賞したばかりのジョン・ウィリアムスを抜擢することにしたと。ウィリアムスは、「引き裂かれたカーテン」のスコアのリジェクトが原因でヒッチコックと訣別したバーナード・ハーマンと旧知の仲であったため、「ファミリー・プロット」のスコアを手がけることにつき、敢えてハーマンの事前承諾を得たという。
(2011年1月)
John Williams
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