<収録曲>
1. フランス軍中尉の女 The French Lieutenant's
Woman
2. (TV)秋のホテル Hotel du lac
3. (TV)高慢と偏見 Pride and Prejudice
4. (TV)クランフォード Cranford
カール・デイヴィスがスコアを作曲した映画・TVドラマにおけるヒロインたちに焦点を当てた新録音コンピレーション(2010年10月にロンドンで録音)。「フランス軍中尉の女」以外の3作品は、いずれもスー・バートウィスルが製作している。
1. フランス軍中尉の女 The French Lieutenant's Woman
1981年製作のイギリス映画。監督は「裸足のイサドラ」(1968)「熱い賭け」(1974)「ドッグ・ソルジャー」(1978)等のカレル・ライス。出演はメリル・ストリープ、ジェレミー・アイアンズ、リンジー・バクスター、ピーター・ヴォーン、リズ・スミス、ペイシェンス・コリアー、ジョン・バレット、レオ・マッカーン、デヴィッド・ワーナー他。「コレクター」(1965)「(未公開)怪奇と幻想の島」(1968)等のジョン・ファウルズの原作を基に「さらばベルリンの灯」(1966)「ラスト・タイクーン」(1976)「スルース」(2007)等のハロルド・ピンターが脚本を執筆。撮影はフレディ・フランシス。映画“フランス軍中尉の女”に出演する不倫関係の男女が、映画のストーリーに沿うように繰り広げる愛のドラマ。1981年度アカデミー賞の主演女優賞(ストリープ)、脚色賞、美術監督・装置賞、衣装デザイン賞、編集賞にノミネートされた他、1981年度英国アカデミー賞の作品賞、主演男優賞(アイアンズ)、監督賞、脚本賞、撮影賞にノミネートされ、同賞の主演女優賞(ストリープ)、作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)、音響賞を受賞している。デイヴィスの受賞スコアは、過去に米DRGレーベルからサントラLP/CDが出ていたが、ここではデイヴィス自身が2010年に新たに編曲した8曲から成る『A Musical Portrait』を収録。「Sarah's Walk」は、寂寥感に満ちた繊細で美しいメインの主題。「Proposal」は、デイヴィスらしい明るく躍動的でチャーミングな主題で、「Her Story」「Love Scene」はそのバリエーション。「The Cob」は、ダークでメランコリックなタッチ。「Escape」は、うねるようなストリングスの激しくダイナミックな曲。「Rendezvous」は、メインの主題のバリエーション。「Search and Discovery」は、ドラマティックなタッチから最後は静かに締めくくる。ストリングスとハープのみの構成による演奏で、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのソロを含む。新録音の場合、サントラより上品で大人しい演奏になることが多いが、ここでのフィルハーモニアの演奏はサントラより遥かに情感がこもっている。
2. (TV)秋のホテル Hotel du lac
1985年製作のイギリスのテレビ映画(日本ではビデオ発売済み)。監督は「(TV)サイラス・マーナー/ラヴィローの織り工」(1985)「身代りの樹」(1988)「(TV)ジム・ヘンソン アワー/モンスター・メーカー」(1988)等のジャイルズ・フォスター。出演はアンナ・マッセイ、デンホルム・エリオット、グーギー・ウィザース、ジュリア・マッケンジー、パトリシア・ホッジ、アイリーン・ハンドル、バリー・フォスター他。アニタ・ブルックナーのブッカー賞受賞原作を基に「危険な関係」(1988)「キャリントン」(1995)「つぐない」(2007)「わたしの可愛い人―シェリ」(2009)等のクリストファー・ハンプトンが脚本を執筆。撮影はケネス・マクミラン。イギリス人の恋愛小説作家イディス(マッセイ)と、彼女が滞在中のジュネーヴ湖のほとりにあるホテルで知り合った中年男性ネヴィル(エリオット)との関係を描くドラマ。ここでは、11分ほどの「Nocturne based on themes from Hotel du lac」を収録。ジェントルでリリカルなピアノの主題から情感豊かなオーケストラによる主題、エイミー・ディクソンのアルト・サックスによる快活な主題、大らかでドラマティックな主題等へと展開。
3. (TV)高慢と偏見 Pride and Prejudice
1995年製作のイギリスのテレビ映画(日本ではNHK衛星第2で放映)。監督は「(TV)カサノバ」(1987)「(TV)紅はこべ」(1999)「(TV)コナン・ドイルの事件簿/謎のミイラ」(2001)等のサイモン・ラングトン。出演はコリン・ファース、ジェニファー・イーリー、クリスピン・ボナム=カーター、アンナ・チャンセラー、スザンナ・ハーカー、ジュリア・サワラ、アリソン・ステッドマン、ベンジャミン・ホイットロー他。「いつか晴れた日に」(1995)「Emma エマ」(1996)等のジェーン・オースティンの原作を基にアンドリュー・デイヴィスが脚本を執筆。18世紀末のイギリスを舞台に、田舎町に暮らすベネット家5人姉妹の次女エリザベス(イーリー)の恋の行方を描くドラマ。同じ原作が「(未公開)高慢と偏見」(1940/監督:ロバート・Z・レオナード、出演:グリア・ガーソン、ローレンス・オリヴィエ、モーリン・オサリヴァン)、「プライドと偏見」(2005/監督:ジョー・ライト、出演:キーラ・ナイトレイ、マシュー・マクファディン、ドナルド・サザーランド)等、何度も映画化/TVドラマ化されている。ここでは3曲から成る組曲を収録。「Meet the Family」は、メルヴィン・タンのピアノとオーケストラによる快活でチャーミングなメインの主題。名曲。「Canon Collins and Lady Catherine de Bourgh」は、ジェントルで牧歌的な主題からドラマティックなタッチへ展開。「Elizabeth and Mr. Darcy」は、モーツァルトの「フィガロの結婚」の引用をはさんだメインの主題のジェントルなバリエーション。このスコアは米AngelレーベルからサントラCDがリリースされていた。
4. (TV)クランフォード Cranford
2007/2009年製作のイギリスのテレビドラマ(日本では2011年4月2日よりLaLa TVで放映)。監督は「(TV)プリンスは大学生」(1997)「(TV)デビッド・コパーフィールド」(1999)等のサイモン・カーティスとスティーヴ・ハドソン。出演はジュディ・デンチ、アイリーン・アトキンス、リサ・ディロン、フランチェスカ・アニス、クローディー・ブレイクリー、ジョン・バウ、アンドリュー・バカン、セリーナ・グリフィス、イメルダ・ストーントン、マイケル・ガンボン他。エリザベス・ガスケルの原作を基にスー・バートウィスル、スージー・コンクリンとハイディ・トーマスが脚本を執筆。撮影はベン・スミサード。保守的な田舎町クランフォードを舞台に、そこで暮らす人々の日常と変わりゆく社会との葛藤を描いたヒューマンドラマ。このCDと同じ英Carl Davis CollectionレーベルからサントラCDが既にリリースされているが、ここでは7曲から成る組曲を収録。「Hanbury en Fete」は、躍動的でクラシカルなタッチ。「Procession of Guests」「Amazons」は、明るくジェントルな曲。「Two Funerals」は、メランコリックなタッチ。「May Day」は、快活で躍動的。「Sophie and Dr. Harrison」は、ジェントルに締めくくる。
(2011年5月)
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