フィリップ・サルド=ジョルジュ・ロートネル監督作品集
LE CINEMA DE GEORGES LAUTNER: MUSIQUE DE PHILIPPE SARDE

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ、ピーター・ナイト、ビリー・バイヤーズ、ロジェ・ベルティエ
Conducted by CARLO SAVINA, PETER KNIGHT, BILLY BYERS, ROGER BERTHIER

演奏:パリ管弦楽団(「LA MAISON ASSASSINEE」)
Performed by l'Orchestre de Paris

(仏Universal EmArcy / 276 979 0)

 ★TOWER.JPで購入

cover
このCD(輸入盤)を購入する

<収録曲>

1. (未公開)LA VALISE (1973)
 ・L'Arabe, par Serge Reggiani
 ・La Valise (suite)

2. 愛人関係 LES SEINS DE GLACE (1974)
 ・Les seins de glace
 ・Nice, l'hiver

3. (未公開)PAD DE PROBLEME! (1975)
 ・Ova tchauva (generique)
 ・Miou Miou

4. (未公開)ON AURA TOUT VU (1976)
 ・Bob Morlock présente...
 ・La vaginale
 ・On aura tout vu (final)

5. (未公開)ILS SONT FOUS CES SORCIERS! (1978)
 ・Ils sont fous ces sorciers!
 ・L'esprit de l'ile
 ・Envoûtement

6. (未公開)ATTENTION, UNE FEMME PEUT EN CACHER UNE AUTRE! (1983)
 ・Attention, une femme...(ouverture)
 ・...peut en cacher une autre

7. ソフィー・マルソー/恋にくちづけ JOYEUSES PAQUES (1984)
 ・Joyeuses Pâques
 ・Suspense et poursuite
 ・Stéphane sentimental

8. ラ・メゾン/惨劇の館 LA MAISON ASSASSINEE (1988)
 ・La maison assassinée
 ・Le retour de Séraphin
 ・Dénouement et final

TITRE BONUS:
 ・Pour Jean-Paul (variation sur le theme de Joyeuses Paques)
 ・Pour Georges (variation inedite sur le theme de La Valise)

 

「やるか、くたばるか」(1959)「スパイ対スパイ」(1962)「恋するガリア」(1965)「女王陛下のダイナマイト」(1966)「太陽のサレーヌ」(1966)「牝猫と現金」(1967)「パリ大捜査網」(1968)「渚の果てにこの愛を」(1969)「狼どもの報酬」(1972)「チェイサー」(1978)「警部」(1978)「(未公開)ジャン=ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ」(1980)「(未公開)ミュウミュウのスラップスティックはお好き?」(1981)「(未公開)プロフェッショナル」(1981)「ウエディングベル/Mr.レディMr.マダム3」(1986)「レプスキー絶体絶命/その男凶暴につき」(1989)等の娯楽作品で知られるフランスの監督ジョルジュ・ロートネル(1926〜)とフィリップ・サルドとのコラボレーション作品を集めたコンピレーション。尚、「チェイサー」「警部」「(未公開)ジャン=ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ」のカップリングは、同じ仏Universal EmArcyレーベルの「Ecoutez le Cinema!」シリーズから単独CDとしてリリースされている。

1. (未公開)LA VALISE

1973年製作のフランス映画(英語題名は「MAN IN THE TRUNK」)。出演はミレーユ・ダルク、ミシェル・コンスタンタン、ジャン=ピエール・マリエール、アミドゥ、ロベール・ダルバン、ラウール・サン=イヴ、ジャン・ルフェーヴル、ミシェル・ガラブル他。脚本はジョルジュ・ロートネルと、「奇人たちの晩餐会」(1998)「メルシィ!人生」(2000)「ルビー&カンタン」(2003)等を後に監督するフランシス・ヴェベール。撮影はアラン・ボワスナールとモーリス・フェルー。リビアで活動するイスラエル人の諜報員を国外に脱出させるために、彼をスーツケースに入れて運ぶことになったフランス人女性フランソワーズ(ダルク)を描くサスペンス・コメディで、ロートネルとサルドが初めて組んだ作品。サルドのスコアは、「L'Arabe」セルジュ・レジアニのストイックでドラマティックなヴォーカルによる主題歌(オーケストレーションはジャン・ミュジー)。サルドはこの歌を映画の最後に流すつもりで録音したが、ロートネルはコメディ映画にはシリアスすぎると考えて使わなかった。「La Valise (suite)」は、メインの主題のピアノ・ジャズ等様々なバリエーションによる組曲(オーケストレーションはユベール・ロスタン、ピアノはサルド自身の演奏)。このスコアは、イタリアCAMレーベルから1枚もののサントラCDがリリースされている。

2. 愛人関係 LES SEINS DE GLACE

1974年製作のフランス映画(英語題名は「SOMEONE IS BLEEDING」/日本初公開は1975年4月)。出演はアラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、クロード・ブラッスール、ニコレッタ・マキャヴェリ、フィオーレ・アルトヴィッティ、エミリオ・メッシーナ、アンドレ・ファルコン、ミシェル・ペイルロン他。「激突!」(1971)「ヘルハウス」(1973)「(TV)恐怖と戦慄の美女」(1975)「ある日どこかで」(1980)「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)「奇蹟の輝き」(1998)「アイ・アム・レジェンド」(2007)「運命のボタン」(2009)等のリチャード・マシスンの原作『Someone is Bleeding』を基にジョルジュ・ロートネルが脚本を執筆。撮影はモーリス・フェルー。南仏のニースでミステリアスな女性ペギー(ダルク)と出会い、強く惹かれたテレビ脚本家フランソワ(ブラッスール)は、彼女が敏腕弁護士マルク・リルソン(ドロン)の豪邸に住んでいることを知る。ペギーは過去に夫を殺し、精神鑑定の結果無罪となった過去があり、その際に彼女を弁護したのがマルクだった……。この邦題は、当時実際に愛人だったドロンとダルクの関係に便乗したものと思われる。「Les seins de glace」は、ストリングスの不協和音によるサスペンスフルなイントロから海辺のSEをはさみ、メランコリックな主題、ジェリー・フィールディング風のサスペンスアクション音楽へと展開。「Nice, l'hiver」は、メランコリックな主題。オーケストレーションはユベール・ロスタン、ヴァイオリンはミシェル・リポッシュ。このスコアは、イタリアCAMレーベルから1枚もののサントラCDがリリースされている(「(未公開)VINCENT, FRANCOIS, PAUL ET LES AUTRES」とのカップリング)。

3. (未公開)PAD DE PROBLEME!

1975年製作のフランス映画。出演はミュウ=ミュウ、ジャン・ルフェーヴル、ベルナール・メネ、アンリ・ギイベ、パウラ・ムーア、アニー・デュプレー他。脚本はジョルジュ・ロートネルとジャン=マリー・ポワレ、撮影はモーリス・フェルー。実業家のエドモン(ルフェーヴル)は、息子が彼の車を借りてトランクの中に死体を入れたまま返したことに気付かず、若い女性をナンパするが、彼女は偶然その死体を見つけてしまう……、というコメディ。「Ova tchauva (generique)」は、ブールー・フェレのストイックなヴォーカルをフィーチャーしたフラメンコ音楽。「Miou Miou」は、ドラマティックな曲。オーケストレーションはユベール・ロスタン。

4. (未公開)ON AURA TOUT VU

1976年製作のフランス映画(英語題名は「THE BOTTOM LINE」)。出演はピエール・リシャール、ミュウ=ミュウ、ジャン=ピエール・マリエール、ルネ・サン=シール、ジェラール・ジュニョ、サビーヌ・アゼマ、ジェラール・シャンブル、ミシェル・ブラン他。脚本はフランシス・ヴェベール、撮影はモーリス・フェルー。映画監督志望の広告写真家フランソワ(リシャール)は、友人の脚本家が書いた詩的なドラマのストーリーを、彼に内緒でポルノ映画会社に売り込み、監督の仕事を得ようとするが……。「Bob Morlock présente...」は、明るく快活なTV番組のテーマ音楽。「La vaginale」は、ジェントルなジャズ。「On aura tout vu (final)」は、ジェントルでややメランコリックなワルツ(この主題は後にロートネルの提案により「チェイサー」のメインタイトルに流用されている)。オーケストレーションと指揮はカルロ・サヴィーナ。

5. (未公開)ILS SONT FOUS CES SORCIERS!

1978年製作のフランス映画(英語題名は「THESE SORCERERS ARE MAD」)。出演はジャン・ルフェーヴル、アンリ・ギイベ、ジュリアン・ギオマール、ルネ・サン=シール、カトリーヌ・ラシャン、ダニエル・セッカルディ他。脚本はジョルジュ・ロートネル、ノルベール・カルボノー、アルベール・カントフとクロード・ムロー。撮影はアンリ・ドカエ。泥酔して地元の神仏の像に小便をかけてしまった2人の男(ルフェーヴル、ギイベ)が、邪教の呪いをかけられる、というホラー・コメディで、サルドはかつてのハマー・フィルムのジェームズ・バーナードによるホラー音楽へのオマージュとしてこのスコアを書いたという。「Ils sont fous ces sorciers!」は、ピアノとオーケストラによるダークでストイックな主題からダイナミックなタッチへ。「L'esprit de l'ile」は、美しくジェントルなストリングスとピアノの主題から笑い声のSEをはさんでややコミカルなタッチへ。「Envoûtement」は、サスペンス音楽。オーケストレーションと指揮はカルロ・サヴィーナ。

6. (未公開)ATTENTION, UNE FEMME PEUT EN CACHER UNE AUTRE!

1983年製作のフランス映画(英語題名は「MY OTHER HUSBAND」)。出演はミュウ=ミュウ、ロジェ・アナン、エディ・ミッチェル、ラシッド・フェラシュ、アングリッド・ルリアン、ヴァンサン・バラゾーニ、ドミニク・ラヴァナン他。脚本はジャン=ルー・ダバディ、撮影はアンリ・ドカエ。パリで外科医の助手を務めるアリス(ミュウ=ミュウ)は、夫のフィリップ(アナン)と子供を残して田舎へ引越し、ヴァンサン(ミッチェル)と恋に落ちて2人の子供を作る。彼女はフィリップと離婚しておらず、ヴァンサンと結婚もしていない。やがて2人の男は互いの存在を知るようになり……。「Attention, une femme...(ouverture)」は、快活で躍動的な序曲。サルドらしいシャープなタッチの曲で秀逸。「...peut en cacher une autre」は、ジェントルなピアノとストリングスに、ヒューバート・ロウズのフルートをフィーチャー。オーケストレーションと指揮はピーター・ナイト。

7. ソフィー・マルソー/恋にくちづけ JOYEUSES PAQUES

1984年製作のフランス映画(英語題名は「HAPPY EASTER」/日本初公開は1985年6月)。出演はジャン=ポール・ベルモンド、ソフィー・マルソー、マリー・ラフォレ、ロージー・ヴァルト、ミシェル・ボーヌ、マリー=クリスティーヌ・デスクアール他。脚本はジャン・ポワレとジョルジュ・ロートネル、撮影はエドモン・セシャン。南仏コートダジュールに住む中年実業家ステファン・マルジェル(ベルモンド)は、美貌の妻ソフィ(ラフォレ)がいながらも浮気に余念がないプレイボーイ。旅行に出かけるソフィを空港まで送ったステファンは、ジュリー(マルソー)という18歳のパリ娘を口説いて車に同乗させ、自宅に連れ込む。そこに旅立ったはずのソフィが現われ、焦った彼はジュリーが前妻との間にできた娘だと嘘をついてしまう……。「Joyeuses Pâques」は、ロマンティック・コメディにふさわしい明るくライトなタッチの主題。「Suspense et poursuite」は、軽快なサスペンス音楽。「Stéphane sentimental」は、メインの主題のジェントルなアレンジメント。オーケストレーションと指揮はビリー・バイヤーズ、サックスはフィル・ウッズ、チェロはチャールズ・マックラッケン、トロンボーンはジッグス・ホイガム、ピアノはマイク・モラン、コントラバスはポール・ウエストウッド、パーカッションはフランク・リコッティの演奏。

8. ラ・メゾン/惨劇の館 LA MAISON ASSASSINEE

1988年製作のフランス映画(英語題名は「MURDERED HOUSE」/日本初公開は1990年12月)。出演はパトリック・ブリュエル、アンヌ・ブロシェ、アニエス・ブランショ、イングリッド・ヘルト、ヤン・コレット、ジャン=ピエール・サンティエ他。ピエール・マニャンの原作を基にジョルジュ・ロートネルとジャッキー・キュキエが脚本を執筆。撮影はイヴ・ロダレック。天涯孤独の24歳の青年セラファン・モンジュ(ブリュエル)は、第一次大戦の兵役を終えて故郷へ戻り、そこで初めて自分の出生の秘密を知る。24年前、何者かによって一家5人が惨殺される事件が起き、唯一救出されたのがセラファンだった。彼は事件のあった廃墟の館を訪れ、復讐を誓う……。「La maison assassinée」は、ダークなサスペンス音楽から後半はメランコリックな主題へ。「Le retour de Séraphin」は、ミステリアスなタッチからジェントルな主題へ。「Dénouement et final」は、ジェントルなタッチからドラマティックな主題へ。オーケストレーションはビリー・バイヤーズ。オーケストラはロジェ・ベルティエ指揮パリ管弦楽団。バンドネオンの演奏はマルセル・アゾーラ。

TITRE BONUS:

最後にボーナストラックとして、「ソフィー・マルソー/恋にくちづけ」の主題のバリエーションによるハーモニカやフィドルをフィーチャーした明るく陽気なタッチの「Pour Jean-Paul (variation sur le theme de Joyeuses Paques)」と、「LA VALISE」の主題のバリエーションによるストイックなタッチの「Pour Georges (variation inedite sur le theme de La Valise)」を収録。それぞれ、サルドがベルモンドとロートネルに捧げて新たに録音した曲だが、サルドをはじめとしたフランス人作曲家のスコアには、このように俳優や監督のために書いた曲がよく登場する。

(2011年6月)

Philippe Sarde

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2011  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.