天国の日々 DAYS OF HEAVEN

作曲・指揮:エンニオ・モリコーネ
Composed and Conducted by ENNIO MORRICONE

(米Film Score Monthly / FSMCD Vol.14 No.12)

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1978年製作のアメリカ映画(日本初公開は1983年5月)。監督・脚本は「(未公開)地獄の逃避行」(1973)「シン・レッド・ライン」(1998)「ニュー・ワールド」(2005)「ツリー・オブ・ライフ」(2011)等のテレンス・マリック。出演はリチャード・ギア、ブルック・アダムス、サム・シェパード、リンダ・マンズ、ロバート・J・ウィルク、ジャッキー・シュルティス、ステュアート・マーゴリン、ティモシー・スコット、ジーン・ベル、ダグ・カーショー、リチャード・リベルティーニ、フレンチー・レモンド、サーブラ・マーカス、ボブ・ウィルソン、ミュリエル・ジョリッフィ、ジョン・ウィルキンソン、キング・コール。撮影は「クレイマー、クレイマー」(1979)「終電車」(1980)「ソフィーの選択」(1982)等のネストール・アルメンドロス「夜の大捜査線」(1967)「華麗なる賭け」(1968)「カッコーの巣の上で」(1975)等のハスケル・ウェクスラー(アルメンドロスがフランソワ・トリュフォー監督作品のために抜けた後の追加撮影を担当)。製作はバート・シュナイダーとハロルド・シュナイダー。第一次世界大戦が始まって間もない頃、貧困から抜け出そうと中西部に向けてシカゴを旅立ったビル(ギア)と妹のリンダ(マンズ)、ビルの恋人アビー(アダムズ)の3人は、テキサスの農場で麦刈り人夫の職につく。若き農場主(シェパード)はアビーを見初め、彼の命が長くない事を知ったビルは、楽な暮らしをしようとアビーに形だけの結婚を促すが……。アンドリュー・ワイエスやエドワード・ホッパーの風景画のような美しい映像は、日没後の数10分しかない“マジックアワー”の時間帯に撮影されている。1978年度アカデミー賞の作曲賞、衣装デザイン賞、音響賞にノミネートされ、撮影賞(アルメンドロス)を受賞しているほか、1979年度カンヌ国際映画祭の監督賞、1978年度全米批評家協会賞の監督賞と撮影賞、1978年度NY批評家協会賞の監督賞、1978年度LA批評家協会賞の撮影賞、1979年度英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)を受賞している。

音楽はエンニオ・モリコーネが作曲しているが、メインの主題はフランスの作曲家カミーユ・サン=サーンスによる組曲「動物の謝肉祭」の第7曲「水族館(Aquarium)」をベースにしている。CD2枚組となっており、1枚目には1978年に米Pacific ArtsレーベルよりリリースされたサントラLPの内容と、映画で使用されたモリコーネの曲を収録、2枚目にはモリコーネがこの映画のために作曲した大半の音楽(映画で未使用の曲を含む)をスレート番号順に収録している。スコア全体が4つの主要な主題により構成されており、第一主題はサン=サーンスの「水族館」をベースにしたメインの主題、第二主題「On the Road」「Happiness」は牧歌的でジェントルな曲、第三主題「Days of Heaven」「The Farmer and the Girl」はモリコーネらしいドラマティックで美しいラヴ・テーマ、第四主題「Threshing」はストイックなタッチの曲で、特に第三主題のラヴ・テーマが素晴らしい。

CD1の冒頭「Aquarium [Le Carnaval des Animaux]」は、カール・ベーム指揮ウィーン・フィルの演奏により1975年に録音された「水族館」で、フルート、グラスハーモニカ、ピアノ、ストリングスによる幻想的な曲。「We Used to Do Things (Linda Manz)」は、映画全篇のナレーターであるリンダ・マンズによる台詞とSE。「Enderlin」は、レオ・コットケの作曲・ギター演奏によるカントリー曲。「Harvest」は、第一主題のバリエーション。「Threshing」は、ストイックな第四主題。「Happiness」は、ジェントルな第二主題。「The Honeymoon」「The Return」は、メランコリックな曲。「Swamp Dance」は、ダグ・カーショーの作曲・作詞・演奏によるダンス・ソング。「The Chase」は、ダイナミックでビジーなアクション音楽。「The Fire」は、イナゴの大群が農場を襲い灯が倒れて火事になるシーンの不気味なサスペンス音楽で、後半ダイナミックに盛り上がる。モリコーネはこの映画に作曲した楽曲を映画のどこに配置してもよいと監督のテレンス・マリックに許可したが、この曲だけは火事のシーンから動かさないでほしいと言ったという。「Ashes & Dust」は、「水族館」の主題から後半ジェントルな主題へ。「Days of Heaven」は、ジェントルでドラマティックな第三主題。

これ以降は映画の中で使用されたモリコーネ作曲の楽曲で、「Main Theme (7M1 tk 8)」「In the Field (Theme 5 long version, cf. Harvest)」「Main Theme (2M1 1st part)」「After Wedding (5M2 2nd part)」「His Death (5M2 1st part)」は、「水族館」の主題のバリエーション。「The Farmer and the Girl (Theme 18 piano version)」は、モリコーネ自身のピアノ演奏による第三主題。「Bad News (3M1 tk 3)」は、サスペンス調から後半第三主題へ。「Non-Stop Work (2M1 2nd part)」は、ストイックな第四主題。「Bad News (4M3)」は、ダークでドラマティックな曲。「Empty House (5M3, cf. The Honeymoon)」は、メランコリックでストイックな曲。「On the Road (1M2 for 5M4)」「On the Road (8M1 long version, cf. Happiness)」は、ジェントルな第二主題。「They Should Leave (6M1, cf. Ashes & Dust)」は、「水族館」の主題から第三主題へ。「Bill Returns (8M2, cf. The Return)」は、ギターによるメランコリックな主題。「The Locusts and Fire (9M1, cf. The Fire)」は、火事のシーンの音楽。「The Farmer and the Girl (11M3 2nd version)」「The Farmer and the Girl (10M3, cf. Days of Heaven)」は、第三主題のバリエーション。CD2は、主として第一〜第四主題のバリエーション28曲と、ボーナストラック5曲が収録されているが、上記以外の主題では、ドラマティックで躍動的な「3M2 (Work Theme)」、アブストラクトで不気味な「Ghost Voices」、サスペンスアクション音楽「10M1 (Pursuit Theme)」「11M1 version 1 (The Chase)」、モリコーネらしいジェントルで美しい「10M2 (The Killing)」等が印象的。5000枚限定プレス。
(2011年10月)

Ennio Morricone

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