愚か者の船 SHIP OF FOOLS

作曲・指揮:アーネスト・ゴールド
Composed and Conducted by ERNEST GOLD

(米Monstrous Movie Music / MMM-1962)

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1965年製作のアメリカ映画。製作・監督は「渚にて」(1959)「ニュールンベルグ裁判」(1961)「おかしなおかしなおかしな世界」(1963)「招かれざる客」(1967)「サンタ・ビットリアの秘密」(1969)「オクラホマ巨人」(1973)「ドミノ・ターゲット」(1976)等のスタンリー・クレイマー。出演はヴィヴィアン・リー、シモーヌ・シニョレ、ホセ・ファーラー、リー・マーヴィン、オスカー・ウェルナー、エリザベス・アシュレイ、ジョージ・シーガル、ホセ・グレコ、マイケル・ダン、チャールズ・コーヴィン、ハインツ・リューマン、リリア・スカラ、バーバーラ・ルナ、アルフ・クジェリン、クリスチャン・シュミットマー他。キャサリン・アン・ポーターの原作を基にアビー・マンが脚本を執筆。撮影はアーネスト・ラズロ、特殊効果はアルバート・ホイットロック。ドイツでヒットラー政権が誕生した1933年のある日、メキシコのヴェラクルスからドイツのブレーメルハーフェンに向って客船ベラ号が出航した。船客の1人グロッケン(ダン)は、自らも含めてこの船には愚か者たちがあふれていると考え、ベラ号を“愚か者の船”と呼ぶ。船長のティーレ(コーヴィン)は、長年の航海仲間の船医シューマン(ウェルナー)が、心臓病のためこの航海を最後に下船することを寂しく感じている。船客には、狂信的なナチの信奉者リーバー(ファーラー)や、外交官の夫と離婚したばかりのメアリー(リー)、球団をお払い箱になったプロ野球選手テニー(マーヴィン)などがいて、様々な喜怒哀楽のドラマを繰り広げていた。ある日船はキューバに寄港し、数百人の砂糖労働者を3等船室に収容するが、同時にカナリー群島のテネリーフェに護送される政治犯の伯爵夫人(シニョレ)も1等船客として乗船させる……。多彩な登場人物たちによるドラマを“グランド・ホテル形式”で描いた作品で、ヴィヴィアン・リーの最後の出演作。1965年度アカデミー賞の作品賞、主演男優賞(ウェルナー)、主演女優賞(シニョレ)、助演男優賞(ダン)、脚色賞、衣装デザイン賞(白黒)にノミネートされ、撮影賞(白黒)と美術監督・装置賞(白黒)を受賞している。

音楽は、スタンリー・クレイマー監督と「渚にて」「ニュールンベルグ裁判」「おかしなおかしなおかしな世界」「サンタ・ビットリアの秘密」等でも組んでいるオーストリア出身の作曲家アーネスト・ゴールド(1921〜1999)。「Main Title」は、ダイナミックなイントロから、ヴェラクルスを描写した軽快なラテンダンス音楽へと展開し、中盤でドラマティックかつトラジックなラヴテーマが挿入されるメインタイトル。このラヴテーマはゴールドの「戦争のはらわた」や「さよならミス・ワイコフ」の主題にも通ずる非常に感動的な曲で、「Bedside Manner」では静かなアレンジメントにより演奏される。後半の「The Visit」「Goodbye」でもこの主題が繰り返される。これら以外の曲は、船上での晩餐等のシーンで流れるワルツやチャールストン等の舞踏音楽で、「Captain's Table」「Debonair Denny」「A Minority of Two」「Manco」「Irgendwie, Irgendwo, Irgendwann」「Cold Hearts & Hot Heads」「The Gorplander Waltz」「The Party」等、オーストリアの作曲家らしい明るく優雅でジェントルな曲が連続。「Heute Abend Geh'n Wir Bummeln / Auf Der Reeperbahn」は、ホセ・ファーラーとクリスチャン・シュミットマーによるドイツ語の歌。「Charleston for Fools」は、サスペンス音楽と陽気なチャールストンが交互に展開する曲。「Curtain Calls」は、ゴールドらしい快活なマーチ。「End Credits」は、ラヴテーマのリプライズによるエンドクレジット。このスコアは、映画公開当時にゴールド自身のアレンジにより、アーサー・フィードラー指揮ボストン・ポップス管弦楽団が演奏したLPが米RCAレーベルよりリリースされており、同じアルバムが英ArtemisレーベルによりCD化もされているが、今回米Monstrous Movie MusicがリリースしたCDはゴールドの指揮によるオリジナル・スコアの初リリースで、1000枚限定プレス。
(2012年6月)

Ernest Gold

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