勝利への旅立ち HOOSIERS
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and
Conducted by JERRY GOLDSMITH
演奏:ハンガリー国立歌劇管弦楽団
Performed
by the
Hungarian State Opera Orchestra
(米Intrada / Intrada Special Collection Vol.226)
1986年製作のアメリカ映画(イギリス公開題名は「BEST
SHOT」。日本公開は1987年10月)。監督は「ルディ/涙のウイニング・ラン」(1993)「ムーンライト&ヴァレンチノ」(1995)「(未公開)ジェラルド・バトラー in
THE GAME OF LIVES」(2004)等のデヴィッド・アンスポー。出演はジーン・ハックマン、バーバラ・ハーシー、デニス・ホッパー、シェブ・ウーリー、ファーン・パーソンズ、チェルシー・ロス、ロバート・スワン、マイケル・オギニー、ウィル・デウィット、ジョン・ロバート・トンプソン、マイケル・サッソーン、グロリア・ドーソン、マイク・ダルゼル、スキップ・ウェルカー、ブラッド・ボイル、スティーヴ・ホラー、ブラッド・ロング、デヴィッド・ニードーフ、ケント・プール、ウエイド・シェンク、スコット・サマーズ、マリス・ヴァライニス他。脚本はアンジェロ・ピッツォ、撮影はフレッド・マーフィ。1951年のアメリカ、インディアナ州の田舎町ヒッコリーの高校バスケットボール・チームにノーマン・デイル(ハックマン)という中年男が新任コーチとして赴任してくる。彼はかつてニューヨークの名門チームのコーチだったが、試合中に暴力沙汰を起こして以来、12年間現場から遠ざかっていた。ノーマンはチームの指導を始めるが、主力選手のジミー(ヴァライニス)が前コーチの死を悼んで離脱しているチームは弱体化しており、試合は連敗を重ねる。町民たちがよそ者のノーマンに対する反感を強める中、彼を支持する女教師マイラ(ハーシー)やチームのOBであるシューター(ホッパー)の協力も得ながら、チームは徐々に力をつけていく。ついに町民からはノーマンに対するコーチ不信任案が出されるが、ジミーが町民の前で復帰宣言し、その条件として不信任案を撤回させた。ジミーが戦力に戻って俄然パワーアップしたチームは、いよいよ州大会に臨むことになる……。実話をベースにした王道のスポーツ・ドラマで、定石通りの演出だが、主演俳優たちの抑えた演技とパワフルなゴールドスミスのスコアにより強い感動をもたらす。1986年度アカデミー賞の助演男優賞(デニス・ホッパー)と作曲賞にノミネートされ、ホッパーが同年LA批評家協会賞の助演男優賞を受賞。原題名の「Hoosiers」はインディアナ州民のこと。
音楽はジェリー・ゴールドスミスで、これは数多い彼の作品中でもベスト・スコアの1つだろう。「Theme
from
Hoosiers」は、バスケットボールのリズミックな躍動感とスポーツ・ドラマの爽やかさを見事に表現したメイン・テーマ。後述する事情から個人的に実に懐かしい曲。「Main
Title - Welcome to
Hickory」は、ノーマンが車でヒッコリーにやってくるシーンに重なる大らかでジェントルなアメリカーナによるメインタイトル。この美しい主題は「Chester」「You
Did Good」「Town Meeting」「Someone I Know」「Empty
Inside」等でも様々なバリエーションで繰り返される。「First
Workout」は、リズミックなトレーニング・シーンの音楽で、バスケットボールがバウンドする音をサンプリングしたシンセサイザーによる演奏。「Get
It Up」も、リズミックでストイックなタッチ。「No More
Basketball」は、静かにジェントルな曲。「The Coach
Stays」は、ダイナミックなメインの主題のバリエーション。「The Pivot」「Get the Ball」「Last
Foul」は、パワフルなバスケットボール・シーンの音楽。「Free
Shot」は、静かに荘厳なタッチからヒロイックな主題へ。「The
Gym」も、荘厳なタッチの曲。「The
Finals」は、静かなイントロからスペクタキュラーな州大会の描写へと展開する15分以上に及ぶクライマックスの曲で、ヒロイックな勝利の瞬間へとドラマティックに展開する。名曲。上述の通り、ゴールドスミスはこのスコアでアカデミー賞にノミネートされている。
このスコアは、公開当時に米Polydorレーベルが38分収録のサントラLPをリリースしており、同じ内容のCDが日本とイギリスで出ていたが、今回米IntradaレーベルがリリースしたCDはコンプリート・スコア(約60分)の初CD化で、限定プレス。必聴盤。
この映画の製作当時にLAに映画留学していた私は、UCLAで開催されたジェリー・ゴールドスミスによる公開講義に出席し、完成したばかりのこの映画の試写を見た後で、ゴールドスミスと監督のデヴィッド・アンスポーによるティーチ・インを聴講した(司会はブルース・ブロートンだった)。その際のゴールドスミスのコメントからも、この映画とスコアに対する彼の熱い想いがひしひしと伝わってきた。その後ゴールドスミスは「ルディ/涙のウイニング・ラン」という、やはり実話をベースにしたスポーツ・ドラマでアンスポー監督と組んでおり、この作品でも傑作スコアを残している。
(2013年3月)
Jerry Goldsmith
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