ラスト・シューティスト  THE SHOOTIST
エルダー兄弟  THE SONS OF KATIE ELDER

作曲・指揮:エルマー・バーンステイン
Composed and Conducted by ELMER BERNSTEIN

(米La-La Land Records / LLLCD 1254)

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ジョン・ウェイン(1907〜1979)が主演し、エルマー・バーンステイン(1922〜2004)が音楽を担当した西部劇2作品のスコアをカップリングにしたCD。ジョン・ウェインは数多くの西部劇を含む200本以上の作品に出演したハリウッドの伝説的スターで、バーンステインはこの2作品の他にも「コマンチェロ」(1961)「勇気ある追跡」(1969)「100万ドルの血斗」(1971)「ビッグケーヒル」(1973)といったウェイン主演の西部劇のスコアを手がけている。

「ラスト・シューティスト(THE SHOOTIST)」は、1976年製作のアメリカ映画(日本初公開は1979年7月)。監督は「(未公開)ボディ・スナッチャー/恐怖の街」(1956)「殺し屋ネルスン」(1957)「突撃隊」(1961)「殺人者たち」(1964)「刑事マディガン」(1967)「マンハッタン無宿」(1968)「真昼の死闘」(1969)「白い肌の異常な夜」(1971)「ダーティハリー」(1971)「突破口!」(1973)「ドラブル」(1974)「テレフォン」(1977)「アルカトラズからの脱出」(1979)等のドン・シーゲル(1912〜1991)。出演はジョン・ウェイン、ローレン・バコール、ロン・ハワード、ジェームズ・ステュワート、リチャード・ブーン、ヒュー・オブライアン、ビル・マッキーニー、ハリー・モーガン、ジョン・キャラディーン、シェリー・ノース、リック・レンツ、スキャットマン・クローザース、グレッグ・パルマー、アルフレッド・デニス、メロディ・トーマス・スコット他。グレンドン・スウォーサウトの原作を基にマイルズ・フッド・スウォーサウトとスコット・ヘイルが脚本を執筆。撮影はブルース・サーティース。1901年、老ガンマンのJ・B・ブックス(ウェイン)はネバダ州のカーソン・シティにやって来て旧友のホステトラー医師(ステュワート)に身体の痛みを相談し、末期がんであると診断される。ホステトラーの紹介でロジャース夫人(バコール)の下宿に滞在することにしたブックスは偽名を使って正体を隠すが、夫人の息子ギロム(ハワード)は彼が過去に30人もの人を殺し西部に名をとどろかせたガンマンであると突きとめてしまう。噂は町中に広まり、ブックスを倒して名を上げようとするガンマンたちが彼の命を狙いはじめる……。実際にがんで他界したジョン・ウェインが、その生涯で演じたキャラクターの集大成のようなガンマンを演じた作品で、彼の遺作。ドン・シーゲルの抑制されたインテリジェントな演出も見事。過去にウェインが出演した「赤い河」(1948)「ホンドー」(1953)「リオ・ブラボー」(1959)「エル・ドラド」(1966)のフッテージを組み合わせてブックスの生涯を紹介するイントロダクションが秀逸。ウェイン自身はこれが最後の作品になると思っていなかったらしいが、これほど完璧な遺作を遺した俳優はあまりいないだろう。1976年度アカデミー賞の美術監督・装置賞、同年の英国アカデミー賞の主演女優賞(ローレン・バコール)にノミネートされている。

エルマー・バーンステインのスコアは、冒頭の「Main Title (Theme From The Shootist)」が、リズミックでパーカッシヴなイントロからヒロイックなメインの主題へと展開するメインタイトル。「“D”/ Prognosis」は、サスペンス調からジェントルな主題、ダークな主題へと展開。「Ride」は、バースンテインらしい素朴で躍動的な主題。「Attack」は、サスペンス調からパーカッシヴなアクション音楽へ。「Pain / Promise」は、トラジックなタッチから後半ジェントルな主題へ。「Farewells」は、静かにドラマティックなタッチからメインの主題へと展開。「Sweeney」は、サスペンスフルなスウィーニー(ブーン)の主題。「Shootout」は、メインの主題からサスペンス音楽、パーカッシヴなアクション音楽へと展開するクライマックスの酒場での決闘シーンのスコア。「Decision / Epilogue」は、メインの主題の静かなバリエーションによるエピローグ。


「エルダー兄弟(THE SONS OF KATIE ELDER)」は、1965年製作のアメリカ映画。監督は「ナイアガラ」(1953)「炎と剣」(1954)「アラスカ魂」(1960)「西部開拓史」(1962)「サーカスの世界」(1964)「ネバダ・スミス」(1966)「5枚のカード」(1968)「勇気ある追跡」(1969)「ロンメル軍団を叩け」(1970)等のヘンリー・ハサウェイ(1898〜1985)。出演はジョン・ウェイン、ディーン・マーティン、マーサ・ハイヤー、マイケル・アンダーソン・Jr、アール・ホリマン、ジェレミー・スレート、ジェームズ・グレゴリー、ポール・フィックス、ジョージ・ケネディ、デニス・ホッパー、シェルドン・オールマン、ジョン・ライテル、ジョン・ドゥーセット、ジェームズ・ウェスターフィールド、リス・ウィリアムス他。タルボット・ジェニングスの原作を基にウィリアム・H・ライト、アラン・ワイスとハリー・エセックスが脚本を執筆。撮影はルシアン・バラード。ジョン(ウェイン)、トム(マーティン)、マット(ホリマン)、バッド(アンダーソン・Jr)のエルダー4兄弟は、母親の葬式に出席するためテキサスの故郷の町に帰って来た。そこで彼らは、保安官のビリー(フィックス)からエルダー牧場がヘイスティングスという男に乗っ取られ、父親が何者かに殺されてしまったと聞かされる。4人は犯人探しを始めるが、疑わしきヘイスティングスが乗っ取りに対する復讐を警戒し、先回りして執拗な邪魔立てをする。そして、彼の策略によって4人は保安官殺しの濡れ衣を着せられ、さらに殺し屋の奇襲を受けたマットが殺されてしまう……。ウェインが一度がんに罹り、肺を摘出して病気を克服する過程で出演した作品。

エルマー・バーンステインのスコアは、「Main Title (Theme From The Sons of Katie Elder)」が、明るく豪快なメインタイトルで、「荒野の七人」や「コマンチェロ」と並ぶ“クラシック・バーンステイン”。「Texas Is a Woman (instrumental)」は、のどかでジェントルな曲。「The Elders Fight」は、明るく快活でコミカルな曲。「Dangerous Journey」は、躍動的でヒロイックな曲。「Trouble in Town」「Return to Town」「Hastings Ranch」は、メインの主題を織り込んだサスペンス音楽。「The Sons of Katie Elder (vocal by Johnny Cash)」は、カントリー歌手ジョニー・キャッシュのヴォーカルによるダイナミックでヒロイックな主題歌(作詞はアーニー・シェルドン)。「Rebuked」「Katie's Bible」は、ジェントルなタッチ。「Memories of Clearwater」は、メランコリックなギターをフィーチャーした曲。「Sheriff Ambushed」は、サスペンス音楽。「Texas Is a Woman (narration by John Wayne)」は、ジョン・ウェインのナレーション入りのトラック。ラストに公開当時シングル盤でリリースされたアーニー・シェルドンのヴォーカルによる主題歌「The Sons of Katie Elder (vocal by Ernie Sheldon)」を収録。

「ラスト・シューティスト」はサントラ音源の初リリース、「エルダー兄弟」は公開当時にColumbiaレーベルからリリースされていたサントラLP(再録音音源)の初CD化(サントラ音源は紛失)で、2000枚限定プレス。
(2013年6月)

Elmer Bernstein

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