激突! DUEL

作曲・指揮:ビリー・ゴールデンバーグ
Composed and Conducted by BILLY GOLDENBERG

(米Intrada / Intrada Special Collection Vol.305)

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1971年製作のアメリカ映画(日本公開は1973年1月)。監督は「マイノリティ・リポート」(2002)「宇宙戦争」(2005)「ミュンヘン」(2005)「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」(2008)「タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密」(2011)「戦火の馬」(2011)「リンカーン」(2012)等のスティーヴン・スピルバーグ(1947〜)。出演はデニス・ウィーヴァー、ジャクリーン・スコット、エディ・ファイアストーン、ルー・フリッゼル、ジーン・ダイナースキー、ルシール・ベンソン、ティム・ハーバート、チャールズ・シール、シャーリー・オハラ、アレクサンダー・ロックウッド、エイミー・ダグラス、ディック・ウィッティングトン、ケアリー・ロフティン、デイル・ヴァン・シッケル、ショーン・スタインマン。「縮みゆく人間」(1957)「地球最後の男 オメガマン」(1971)「ヘルハウス」(1973)「(TV)恐怖と戦慄の美女」(1975)「ある日どこかで」(1980)「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)「奇蹟の輝き」(1998)「アイ・アム・レジェンド」(2007)「運命のボタン」(2009)「リアル・スティール」(2011)等のリチャード・マシスン(1926〜2013)が、自らの体験から着想を得た短編小説を基に脚本を執筆。撮影はジャック・A・マータ。編集はフランク・モリス。当時23歳だったスティーヴン・スピルバーグが、45万ドルの製作費により12日間で撮影したテレビ映画で、後にシーンを追加して劇場公開されたため、彼にとって初の劇場映画作品となった。今でもこれが彼の全作品中でのベスト作との評価もある、ソリッドな傑作サスペンス。セールスマンのデヴィッド・マン(ウィーヴァー)は、知人に貸した金を回収するために、カルフォルニア州のハイウェイを車で南に向っていた。その途中、前方をゆっくり走っていた巨大なタンクローリーを追い抜いた。これが事の発端だった。そのタンクローリーは轟音をたてて抜きかえしていくと、再び前方をふさいだ。この危険な追い越しに腹を立てたデヴィッドは、再度タンクローリーを追い抜き、スピードをあげてできるだけ距離をあけた。ガソリンスタンドに寄って給油したデヴィッドの車を、例のタンクローリーがなおも執拗に追跡してくる。やがってデヴィッドは、タンクローリーの運転手が明らかに殺意を抱いていることに気づくのだった……。1973年度アボリアッツ・ファンタスティック映画祭のグランプリを受賞。

音楽はスティーヴン・スピルバーグが監督したテレビ映画の「(TV)四次元への招待(Night Gallery: segment "Eyes")」(1969)「(未公開/TV)The Name of the Game - LA 2017」(1971)「(TV)刑事コロンボ/構想の死角(Columbo - Murder by the Book)」(1971)のスコアも手がけているビリー・ゴールデンバーグ(1936〜)。「Universal Emblem」は、ウォーターフォン(Waterphone)による短いスティンガーがユニヴァーサルのロゴにかぶさるオープニング。「Passing the Truck」は、不気味でアブストラクトな不協和音によるサスペンス音楽で、デヴィッドがタンクローリーの運転手の殺意を感じたところからスコアが流れ始める(それまでの18分間は全くスコアがない)。「Truck and Car Encounter」は、続くチェイス・シーンのビジーでダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Studying Drivers」「Mann's Thoughts」「Lone Driver Eating」「Truck Leaving」は、タンクローリーから逃れてハイウェイ沿いのダイナーに入ったデヴィッドが、顔を洗ってトイレから戻り、走り去ったはずのローリーが引き返して駐車してあるのに気づいて、ダイナーの客の中の誰がその運転手なのか悩むシーンの音楽。ストリングスにウォーターフォンとチェレスタを加えた、不安感を煽るようなニューロティックなタッチのサスペンス音楽が延々と続く。「Truck Stops」は、ドラマティックなサスペンス音楽から後半アブストラクトなタッチへ展開。「Hide and Seek」は、ビジーでダイナミックなサスペンスアクション音楽。「Truck Waiting #1」も、ニューロティックなタッチのサスペンス音楽。「Truck Waiting #5」は、バーナード・ハーマン作曲の「サイコ」のシャワー・シーンのスコアを想起させるショック音楽(ヒントを得たことをゴールデンバーグ自身が認めている)から不吉なサスペンス音楽へ。「Truck Racing Car」は、ダークで不気味なサスペンス音楽から後半ビジーなサスペンスアクション音楽へ。「Final Duel」は、クライマックスのダイナミックなサスペンスアクション音楽。「The Duel (End Title)」は、シンセサイザーとウォーターフォンによる獣のうめき声のような音だけで不気味な静けさを表現したエンドタイトル。この後に続く最後のクレジットは全くの無音。最後にエクストラとして、劇中のカーラジオから流れるカントリー・ウエスタンのソース音楽4曲と、エンドタイトルの代替版を収録。
ストリングス、ハープ、キーボード、ギターとパーカッションのみの39人編成のオーケストラの演奏による、明確な主題のないニューロティックで前衛的なタッチのサスペンス音楽で、劇中では極めて効果的。エミル・リチャーズが世界各国から収集した様々な珍しいパーカッションを演奏。ムーグ・シンセサイザーの演奏はポール・ビーヴァー。特に、ゴールデンバーグが「(TV)刑事コロンボ」のスコアでも多用していたウォーターフォンの不気味な音が印象的。
この作品の成功でスビルバーグは「続・激突!/カージャック」(1974)の監督に抜擢され、以降はジョン・ウィリアムスと組むようになる。
このスコアの初サントラ・リリースで、限定プレス。
(2015年5月)

Billy Goldenberg

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