(未公開)SERIAL

作曲・指揮:ラロ・シフリン / ケニー・アスチャー(未使用スコア)
Composed and Conducted by LALO SCHIFRIN / KENNY ASCHER (Unused Score)

(スペインQuartet Records / QR197)

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1980年製作のアメリカ映画。監督は「(TV)トンチキ恋愛講座」(1978)「(TV)影の追跡」(1983)等のビル・パースキー(1931〜)で、これは唯一の長編劇場映画作品。出演はマーティン・マル、テューズデイ・ウェルド、ジェニファー・マカリスター、サム・チュウ・Jr.、サリー・ケラーマン、アンソニー・バッタリア、ビル・メイシー、ニタ・タルボット、パメラ・ベルウッド、バーバラ・ローデス、アン・ウェルドン、ピーター・ボナーズ、ジョン・フォン、クリストファー・リー、パッチ・マッケンジー他。サイラ・マクファデン(1937〜)の原作『The Serial: A Year in the Life of Marin County』を基にリッチ・ユースティスと「(未公開)フリスコ・キッド」(1979)等のマイケル・エライアスが脚本を執筆。撮影はレックスフォード・L・メッツ。1970年代のカリフォルニア・ライフとヒッピー文化を風刺したコメディで、日本では劇場未公開/ビデオ未発売だが、アメリカではカルト的人気のある作品。ハーヴェイ・ホルロイド(マル)は、サンフランシスコ湾岸地帯の北部にあるマリン郡に住む中間管理職。彼の妻ケイト(ウェルド)は女性の自意識向上を目指すグループに加わり、娘のジョーニー(マカリスター)はカルト宗教「The Sunnies」のメンバーになってしまう。ハーヴェイ自身も、スーパーマーケットで働く18歳のキャッシャー係との不倫に走るが……。クリストファー・リー(1922〜2015)が、ハーヴェイに助言を与えるヘッドハンターで、実はゲイの暴走族のリーダーでもあるラックマン・スカル役で珍しくコメディ演技を見せている。

音楽はラロ・シフリン(1932〜)が作曲。1970年代風のディスコやファンク、ロック、ジャズを織り込んだキャッチーなスコアを展開。「Main Title (A Changing World)」は、ノーマン・ギンベルの作詞、マイケル・ジョンソンのヴォーカルによるライトなタッチの主題歌で、このメインの主題がスコア全体を通して何度も登場する。「A Changing World (Bolero)」は、メインの主題の優雅なボレロ調アレンジメント。「A Changing World (Kama Sutra)」「A Changing World (Kama Sutra 2)」は、メインの主題のシタールによる演奏。「Spenser's Rock」「Weekend Freaks」「I Wanna Talk to You」「Road Reamers」は、キャッチーなロック。「Functional Music」「Chamber of Venus」は、ライトなジャズ。「Flower Blossoms」は、明るくブリージーなタッチ。「Getting My Life Together」「Have Fun Sam」は、華麗なディスコ調の曲。「House of Oriental Harmony」は、曲名通りオリエンタルなタッチ。「Mr. Magic」「It's Got to Feel Good」は、女性グループのヴォーカルをフィーチャーしたディスコ。「A Changing World (Chase)」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Kate's Waltz」は、ジェントルなワルツ。「Musicians」は、メランコリックなタッチ。「End Credits (A Changing World)」は、主題歌のリプライズによるエンドクレジット。最後に主題歌のシングル・バージョン「A Changing World (Single version)」「Kate's Waltz (Alternate)」の代替テイク、ヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲「Excerpt from Concerto for Four Violins in B Minor, Op.3 (Vivaldi)」2曲を収録。

この映画のスコアは、当初「スター誕生」(1976)や「(未公開)マペットの夢みるハリウッド」(1979)等のアメリカのジャズ・ピアニスト/作曲家ケニー・アスチャー(1944〜)が作曲していたが、彼のスコアはリジェクトされ、ラロ・シフリンが新たにスコアを作曲している。このQuartetレーベルのサントラはCD2枚組となっており、1枚目にシフリンのスコア(全30曲)、2枚目に使用されなかったアスチャーのスコア(全28曲)を収録。1000枚限定プレス。

ケニー・アスチャーが手がけた作品には
「(未公開/TV)The Ernie Sigley Show」(1974〜1975)
「スター誕生(A Star Is Born)」(1976)
「(未公開/TV)The Muppet Show」(1978〜1980)
「(未公開)マペットの夢みるハリウッド(The Muppet Movie)」(1979)
「(未公開/TV)The Muppets: A Celebration of 30 Years」(1986)
等がある。
ケニー・アスチャーは1977年の「スター誕生」でゴールデン・グローブの音楽賞を受賞し、英国アカデミー賞の作曲賞(アンソニー・アスキス映画音楽賞)にノミネートされている他、1979年の「(未公開)マペットの夢みるハリウッド」でアカデミー賞の音楽(編曲・歌曲)賞と歌曲賞(『The Rainbow Connection』)にノミネートされている。

(2015年12月)

Lalo Schifrin

Kenny Ascher

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