(未公開)SARAH
無秩序 DESORDRE

作曲:ガブリエル・ヤレ
Composed by GABRIEL YARED

(仏Music Box Records / MBR-073)

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ガブリエル・ヤレ(1949〜)が1980年代に手がけたフランス映画のスコア2作品をカップリングにしたCD。

「(未公開)SARAH」は、1983年製作のフランス映画。監督・脚本は「リリィ、愛しておくれ」(1974)「(未公開)血の降る夜」(1986)「(未公開)殺ったのは誰だ!?/見知らぬ美女の死体」(1987)等のモーリス・ドゥゴーソン(1938〜1999)。出演はジャック・デュトゥロン、レア・マッサリ、ハインツ・ベネット、ジャン=クロード・ブリアリー、ガブリエル・ラズール、イヴリン・ドレス、ガブリエル・ヤレ、フレデリコ・サンタラ、ジャン=クロード・ドーファン、フランソワ・ペロー、ジェラール・ダリュー、ルネ・フェレ他。撮影はジャン=フランソワ・ロバン。火事で製作が中断した映画『SARAH』。サラ役の女優マリー(ラズール)も行方不明になってしまう。事故の原因調査のために保険会社から派遣されたアルノー・サムソン(デュトゥロン)は、監督のピエール・バランヌ(ベネット)と彼の妻で女優のカルラ・アンジェリ(マッサリ)、男優のガブリエル・ラルカーニュ(ブリアリー)等から事情を聴取するが……。ガブリエル・ヤレが劇中の映画の作曲家ポール・ジャリー役で出演している。

ガブリエル・ヤレは、ロベルト・シューマン作曲の「ピアノ五重奏曲 変ホ長調作品44」 を織り込んだ、ストリングスとシンセサイザーによるスコアを展開。「L'anniversaire」は、ややメランコリックなタッチのピアノとストリングスによる美しいメインの主題。このマリーの主題は「Marie dans la nuit」「Arnold Samson / L'amour de Marie et Arnold」「L'azur de Sarah」等でも繰り返される。「Generique debut」は、繊細でアブストラクトなタッチのメインタイトル。「A la recherche de Duparc」は、ピッチカートによるスリリングなタッチの曲。「Le retour de Sarah」は、幻想的なフレーズからストリングスによるメランコリックな主題へ。「Promenade dans l'usine」「Senechal dans les echafaudages」は、幻想的でアブストラクトな曲。「Quintette pour piano en mi bemol majeur, op. 44 (Robert Schumann)」は、シューマン作曲のピアノ五重奏曲。「Rencontre de la petite fille」は、メランコリックな曲。「Le cadavre sur la plage」「Le tournage de fin」は、スリリングなタッチの曲。「L'incendie du decor / La repetition dans le loft」は、ストリングスによるサスペンスフルなイントロからドラマティックな主題へ。「Les yeux de Sarah」は、幻想的な曲。「Vers la maison de Marie」は、静かにドラマティックな曲。「Generique de fin」は、スリリングなイントロからメインの主題へと展開するエンドタイトル。

「無秩序(DESORDRE)」は、1986年製作のフランス映画(英語題名は「DISORDER」)。監督・脚本は「イルマ・ヴェップ」(1996)「DEMONLOVER デーモンラヴァー」(2002)「クリーン」(2004)「夏時間の庭」(2008)「アクトレス〜女たちの舞台〜」(2014)等のオリヴィエ・アサイヤス(1955〜)で、これは彼の長編監督デビュー作。出演はワデック・スタンザック、アン=ジゼル・グラス、リュカ・ベルヴォー、レミ・マルタン、コリンヌ・ダクラ、シモン・ドゥ・ラ・ブロス、エチエンヌ・シコ、フィリップ・ドゥマルル、ジュリエット・メール、エチエンヌ・ダオ、フィリップ・ローダンバッシュ、マキシム・ルルー、サレム・ルドウィグ、エルヴェ・ブーシェール、ロクサンヌ・フリア他。撮影はドゥニ・ルノワール。イヴァン(スタンザック)、アンヌ(グラス)、アンリ(ベルヴォー)は音楽を通じて結びついている若者たち。彼らは楽器店で店主を殺してしまう。警察は彼らに嫌疑をかけることはないが、彼らの運命、そして彼らの近親者たちの運命は激変してしまう……。監督のアサイヤスは本作について「これはフィルム・ノワールだが、人生の様々なことに精一杯で、苦しみ、悩みながらも熱に浮かされているような、青春時代特有のロマンチックな気質の持つ暗さという意味でのノワールだ。青春期を軽く、愉快に描くことは難しい」と語っている。本作は2009年5月に東京日仏学院主催の「オリヴィエ・アサイヤス特集」で上映されている。

ガブリエル・ヤレのスコアは、ユベール・ヴァロンのチェロとヤレ自身のピアノの演奏をフィーチャーした、暗く陰鬱で深くドラマティックなタッチ。「Generique debut」は、チェロのソロによるイントロからストリングスによるダークなタッチのメインの主題へ展開するメインタイトル。スコア全体がこの主題の様々なバリエーションで構成されている。「Au bord de l'autoroute」は、抑制されたタッチ。「J'aime Yvan, seulement Yvan, lui seul」は、ダークでメランコリックな曲。「Anne et Henri au Gibus」は、幻想的なタッチ。「L'accident」は、静かにサスペンスフルな曲。「Le balcon chez Paul / Les quais」は、チェロ・ソロからダークなタッチのメインの主題へ。「Trop tard pour changer d'avis」「Je ne veux plus vous voir」「Brighton / L'aube a Newhaven」「Anne arrive a New York」「Generique de fin」も、メインの主題のバリエーション。

これらのスコアの初CD化で、500枚限定プレス。
(2015年12月)

Gabriel Yared

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