(未公開/TV)REBECCA

作曲・指揮:クリストファー・ガニング
Composed and Conducted by CHRISTOPHER GUNNING 

(独Caldera Records / C6011)


1997年製作のイギリス=ドイツ=アメリカ合作によるテレビドラマ(190分×2話)。監督は「(TV)炎の反逆者」(1988)「(TV)インディ・ジョーンズ/若き日の大冒険」(1992)等のジム・オブライエン(1947〜2012)。出演はチャールズ・ダンス、ダイアナ・リグ、ジェラルディン・ジェームズ、ジーン・アンダーソン、エミリア・フォックス、フェイ・ダナウェイ、ジョナサン・ケイク、トム・チャドボン、デニス・リル、ジョン・ブランウェル、ルーシー・コフー、ジョン・ホーズレー、ジョナサン・ストークス、ティモシー・ウエスト、イアン・マクディアミッド他。「巌窟の野獣」(1939)「情炎の海」(1944)「鳥」(1963)「赤い影」(1973)等のダフネ・デュ・モーリエ(1907〜1989)の原作を基にアーサー・ホップクラフトが脚本を執筆。撮影はレックス・メイドメント。エミリア・フォックス演じるヒロイン(原作でも名前はない)がイギリス紳士マキシム・ドゥ・ウィンター(ダンス)に見初められて結婚し、マンダレーと呼ばれる彼の屋敷にやって来るが、そこでは1年前に死んだ前妻レベッカの見えない影が全てを支配していた……。同じ原作が1940年にアルフレッド・ヒッチコック監督により「レベッカ」として映画化されており、ローレンス・オリヴィエがマキシム、ジョーン・フォンテインがヒロインを演じた。また、1979年にはイギリスのBBCがジェレミー・ブレット、ジョアンナ・デヴィッド、アンナ・マッセイの出演によりテレビドラマ化している(監督はサイモン・ラングトン)。ヒッチコック版ではジュディス・アンダーソンが演じた、前妻レベッカに心酔し後妻であるヒロインに冷たく当る家政婦のダンヴァース夫人を、この1997年版のドラマでは「女王陛下の007」(1969)「(未公開)シェークスピア連続殺人!!血と復讐の舞台」(1973)「(TV)検察側の証人」(1982)「(TV)ゲーム・オブ・スローンズ」(2013〜2015)等のダイアナ・リグが演じている。また、1997年版でヒロインを演じているエミリア・フォックスは、1979年版で同じ役を演じたジョアンナ・デヴィッドの娘である。ヒッチコック版では、前妻レベッカを知る関係者が「信じられないような美女だった」と証言するだけで、回想シーンでもレベッカを登場させず観客のイマジネーションに委ねる演出としていたが、1997年版のドラマではルーシー・コフーが実際にレベッカを演じている。

ヒッチコック版のスコアはフランツ・ワックスマン、1979年版は「地球最後の男 オメガマン」(1971)「(TV)ロアルド・ダール劇場/予期せぬ出来事」(1979〜1988)等のロン・グレイナーが作曲しているが、この1997年版ドラマのスコアはイギリスの作曲家クリストファー・ガニング(1944〜)が担当。「Opening and Main Title」は、牧歌的で美しいオープニングから、モーレイ・ウェルシュ演奏のチェロとハープ、ピアノをフィーチャーした重厚でドラマティックなレベッカの主題によるメインタイトルへ展開。この印象的な主題は、ダンヴァース夫人のレベッカへの執着を表現した「Mrs. Danvers' Obsession」「The Second Mrs. De Winter Investigates the West Wing」「Conflict」「Mrs. Danvers' Nightmare」「Rebecca's Theme」「No One Could Match My Lady for Spirit」「A Night of High Drama」等でも登場する。「Courting」「Max Enjoys His Estate」は、ジェントルで美しい曲。「Manderley」「Falling in Love」「The Proposal」は、ヒロインとマキシムの関係を描いた明るく優雅でロマンティックな曲。「The Second Mrs. De Winters' Turmoil」「Shipwreck in the Cove」「Max and the Second Mrs. De Winter」は、ドラマティックな曲。「Mrs. Danvers Is Chastised」は、メランコリックなタッチから後半ジェントルな主題へ。「Preparations for the Ball」は、明るく快活な曲。「The Anguish of Mrs. Danvers」は、ダークでメランコリックなタッチから、後半メインの主題を織り込んだダイナミックでドラマティックなサスペンス音楽へ。「Manderley Destroyed」は、重厚でダイナミックな曲。「Closing Credits」は、メインの主題のリプライズによるクロージング。ゴッシク・ロマンの雰囲気を濃厚に再現したレベッカの主題と、美しくロマンティックなヒロインとマックスの主題を中心に構成されたリッチなオーケストラル・スコア。クリストファー・ガニングは、原作小説を読んでおらず、ヒッチコック監督による旧作も観ずに作曲を行ったが、後にヒッチコック版を見て、ワックスマンのスコアにはロマンティックな要素が足りないと感じ、作品自体も今回のドラマ版の方が優れていると感じたという。
CaledraレーベルのCDでは恒例になっているが、最後に作曲家自身のコメンタリーが収録されており、ここではガニングがこのスコアを手がけた際の経緯を語っている。
(2016年1月)

Christopher Gunning

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