ミス・シェパードをお手本に THE LADY IN THE VAN

作曲・指揮:ジョージ・フェントン
Composed and Conducted by GEORGE FENTON

演奏:フィルハーモニア管弦楽団
Performed by the Philharmonia Orchestra

(米Sony Classical / 88875093632)

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2015年製作のイギリス映画(日本公開は2016年12月)。監督は「英国万歳!」(1994)「クルーシブル」(1996)「私の愛情の対象」(1998)「センターステージ」(2000)「(未公開)ヒストリーボーイズ」(2006)等のニコラス・ハイトナー(1956〜)。出演はマギー・スミス、ジム・ブロードベント、クレア・ハモンド、アレックス・ジェニングス、ジミー・パーカー、デボラ・フィンドレー、ロジャー・アラム、リチャード・グリフィス、パンドラ・コリン、ニコラス・バーンズ、ドミニク・クーパー、ジル・クーパー、トム・クレナーマン、グウェン・テイラー、フランシス・ドゥ・ラ・トゥール他。「プリック・アップ」(1987)「英国万歳!」(1994)「(未公開)ヒストリーボーイズ」(2006)等のアラン・ベネットが1989年に出版した自叙伝、及び同じ題名の1999年の舞台劇、2009年のBBCラジオドラマを基に脚本を執筆。撮影はアンドリュー・ダン。1970年代初めにロンドンのカムデン・タウンに引っ越してきた劇作家のアラン・ベネット(ジェニングス)は、壊れた黄色いバンに住むホームレスのエキセントリックな老女メアリー・シェパード(スミス)と出会う。町の住民たちはその老女に食事や服を与えつつも、彼女が早くよそへ行ってほしいと願っていた。ベネットは、老女がバンを自宅の私道に停めることを許し、彼女はその後15年間そこに居続けることになる……。実話をベースにしたこの映画は、カムデン・タウンのグローチェスター・クレセントにある実際の家と通りで撮影された。1989年のシェパードの死後にバンの中で見つかった手記により、彼女が若い頃に才能豊かなピアニストであったことがわかり、この映画の劇中でシューベルトとショパンのピアノ曲を演奏する若き日のシェパードを、イギリスの若手ピアニスト、クレア・ハモンドが演じている。主演のマギー・スミスが、2015年度ゴールデン・グローブの女優賞(コメディ/ミュージカル)と英国アカデミー賞の主演女優賞にノミネートされている。

音楽はニコラス・ハイトナー監督と「英国万歳!」(1994)「クルーシブル」(1996)「私の愛情の対象」(1998)「センターステージ」(2000)「(未公開)ヒストリーボーイズ」(2006)等でも組んでいるイギリスの作曲家ジョージ・フェントン(1950〜)。「Miss Shepherd's Waltz」は、ややメランコリックなタッチでテンポの速いメインのワルツで、イタリアの作曲家ニコラ・ピオヴァーニの作風に少し似たタッチ。「Moving in」は、ピアノとオーケストラによる躍動的な曲。「Two Women - Tango」「The Day Centre」は、メランコリックなタッチのタンゴ。「Re-parking」「The New Van」は、ややコミカルなタッチのタンゴ調の曲。「In Care」は、メランコリックなワルツ。「The Neighbours」は、メランコリックなタッチから後半ジェントルな主題へ。「Special Paint」は、メインのワルツを織り込んだ躍動的でダイナミックな曲。「Collision and Confession」「Curtain Down」は、ダークでトラジックな曲。「Piano Concerto No.1 in E minor, Op.11 (excerpt)」は、ショパンのピアノ協奏曲第1番の引用。「Broadstairs」「Alive and Well」「Remembering Miss Shepherd」は、快活でジェントルな曲。「Impromptu in G flat major, D.899(Op.90) No.3 (excerpt)」は、シューベルトの即興曲の引用。「Freewheeling」は、静かなイントロからヒロイックでダイナミックなタッチへ。「A Sepulchre」は、ピアノとストリングスによるジェントルで荘厳なタッチ。「Walk through the Cemetery」は、ややコミカルなタッチ。「The Ascension (Miss Shepherd's Waltz)」は、メインのワルツのリプライズ。フェントンらしい英国調の優雅でチャーミングなスコア。アラン・ベネット作の「Forty Years On」という1968年作の舞台劇に俳優として出演したジョージ・フェントンは、その後のベネットとの交友の中で彼の家の庭に住むメアリー・シェパードに実際に会った事があるという。
最後にボーナストラックとして、シューベルトの即興曲「Impromptu in G flat major, D.899(Op.90) No.3」、ショパンのピアノ協奏曲第1番「Piano Concerto No.1 in E minor, Op.11: II Romanze - Larghetto」「Piano Concerto No.1 in E minor, Op.11: III Rondo - Vivace (excerpt)」を収録。この3曲の演奏はクレア・ハモンド(ピアノ)と、ジョージ・フェントン指揮BBCコンサート管弦楽団
(2016年2月)

George Fenton

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