落陽 THE SETTING SUN
作曲・指揮:モーリス・ジャール
Composed
and Conducted by
MAURICE JARRE
(米Intrada /
Intrada Special Collection Vol.341)
1992年製作の日本映画。監督は原作者でもある伴野
朗(1936〜2004)。出演は加藤雅也、ダイアン・レイン、ユン・ピョウ、ドナルド・サザーランド、中村梅之助、中村梅雀、星野知子、松浦豊和、嵐圭史、小牧ユカ、室田日出男、金田龍之介、にしきのあきら、芦田伸介、島田正吾、田村高廣、水野晴郎、立川談志、宍戸錠、他。脚本は藤浦敦と根本哲史。撮影は山崎善弘。日活が創立80周年を記念して中国ロケにより製作した歴史ドラマで、満州事変直前から終戦までの中国大陸を舞台に、一人の男の生き様を描く。元関東軍大尉の賀屋達馬(加藤)は、石原完爾中佐(嵐)から関東軍の戦費を極秘裡に調達する指令を受け、3年ぶりに満州の土を踏んだ。賀屋は、大財閥・劉宗仁(中村梅之助)に目をつけ、大陸浪人の土門正吾(にしきの)とともに奉天第一銀行が発行する1億元の現大洋票を奪取する。時あたかも満州事変が勃発し、賀屋は続いて満州国建設の工作資金捻出に急ぐ。その時部下の裏切りに合い、危うく金と命を奪われそうになるが、そこへ現れた馬賊の一団が彼の窮地を救った。その馬賊の女頭目は、かつて賀屋と愛を誓いあった中国人の歌姫・張蓮紅(レイン)であった……。
音楽は「アラビアのロレンス」(1962)「大列車作戦」(1964)「王になろうとした男」(1975)「砂漠のライオン」(1981)「刑事ジョン・ブック/目撃者」(1985)等のフランスの作曲家モーリス・ジャール(1924〜2009)が作曲。ジャールは、日本を舞台にしたアメリカのテレビドラマ「(TV)将軍
SHOGUN」(1980/監督:ジェリー・ロンドン、原作:ジェームズ・クラヴェル)や、日本映画「首都消失」(1987/監督:舛田利雄)、日米合作映画「クライシス2050」(1990/監督:リチャード・C・サラフィアン)といった作品のスコアも手がけており、海外の大物作曲家の中では日本に馴染みが深い人物。「Main
Title
(Revised)」は、大らかなイントロからパーカッシヴでダイナミックな主題へ展開するメインタイトルで、ジャールらしいドラマティックで大らかなメインの主題が秀逸。重層的なパーカッションと鋭いブラスも小気味良い。「Tatsuma」は、ビジーでダイナミックなアクション音楽から尺八をフィーチャーしたオリエンタルでジェントルなタッチの主題、パーカッシヴで躍動的な主題、琴による主題等へと展開。「Imperial
Army」は、サスペンスフルな主題からパーカッシヴでダイナミックな主題、ヒロイックで躍動的な主題へと展開。「Lian」は、メインの主題を織り込んだサスペンス音楽。「Manchuria」は、オリエンタルなタッチだが明らかにジャールの個性が表れたマーチから、パーカッシヴでダイナミックな主題、サスペンス音楽、メインの主題、琴や三味線、尺八をフィーチャーしたジェントルな主題へと展開。「Tougetsu」は、ダークなサスペンス音楽からジャズ風のトランペット・ソロをフィーチャーした主題、パーカッシヴでダイナミックな主題へと展開。「End
Credits」は、オリエンタルなタッチの主題からパーカッシヴでダイナミックなメインの主題へと展開するエンドクレジット。最後にエクストラとして中国風の「Puyi」、ダークなサスペンス音楽「Yamashita」、メインタイトルのオリジナル・バージョンを収録。
いかにもモーリス・ジャールらしいパワフルでパーカッシヴなスペクタクル・スコアで、オリエンタルなタッチの主題も西洋人による奇妙なエキゾティシズム表現がなく、あまり違和感を感じさせないところが巧い。オーケストラに複数のハープ、ピアノ、シンセサイザー、中国の管楽器である笙(sheng)、琵琶(pipa)、二胡(erhu)、尺八、琴、三味線を加えた構成で、更に特殊な電子楽器EWI(Electronic
Wind Instrument)とEVI(Electronic Valve
Instrument)をこれらの発明者であるジャド・ミラーとナイル・スタイナーが演奏している。また、ジャールの本領であるパーカッション部隊は、ティンパニ、バスドラム、複数の和太鼓を7人のパーカッショニストが演奏している。
公開当時に日本のビクターエンタテインメントから本作のサントラCDがリリースされているが、これはエラ・フィッツジェラルドによる主題歌等のコンピレーション・アルバムだった。ジャールのスコアは仏Universalがリリースした彼の映画音楽集「LE
CINEMA DE MAURICE
JARRE」に1曲のみ収録されていたが、この米IntradaのCDはフル・スコアの初リリースで、限定プレス。
(2016年6月)
Maurice
Jarre
Soundtrack
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