ナポレオン  NAPOLEON

作曲・指揮:カール・デイヴィス
Composed and Conducted by CARL DAVIS

演奏:フィルハーモニア管弦楽団
Performed by Philharmonia Orchestra

(英Carl Davis Collection / CDC028)

★TOWER.JPで購入
cover
このCD(輸入盤)を購入する

「戦争と平和」(1919)「鉄路の白薔薇」(1922)「世界の終り」(1930)「椿姫」(1934)等のフランスの巨匠アベル・ガンス(1889〜1981)が1927年に監督・脚本を手がけたサイレント映画の超大作。出演はアルベール・デュードネ、ウラジミール・ルーデンコ、エドモンド・ヴァン・デール、アレクサンドル・クービツキー、アントナン・アルトー、アベル・ガンス、ジナ・マネ、スザンヌ・ビアンケッティ、マルゲリート・ガンス、イヴ・デュードネ、フィリップ・エリア、ピエール・バチェフ、ユージェニー・ビュフェ、アチョ・チャカトゥーニー、ニコラ・コリーヌ他。撮影はジュール・クリュジェ、レオンス=アンリ・ビュレル、ジャン=ポール・ムンドヴィレールとニコライ・トポルコフ。フランス第一帝政の皇帝ナポレオン・ボナパルト(1769〜1821)の、寄宿学校での少年時代からイタリア遠征における勝利までの前半生を描いた作品で、当初ガンスは本作品を第1部としてナポレオンの生涯を全6部作で描くという壮大な構想を持っていたが、トーキーの出現や製作・上映に要する莫大な資金等の問題により、実現しなかった(1959年にオーソン・ウェルズ、クラウディア・カルディナーレ、レスリー・キャロン、ジャック・パランス等の出演による続編「(未公開)ナポレオン/アウステルリッツの戦い(AUSTERLITZ)」は監督している)。「トリプル・エクラン」と呼ばれる3台の映写機を利用したシネマスコープ的上映方式を採用(後半20分間)した超大作で、オリジナルは12時間にも及ぶと言われるが、当時アメリカではMGMによって大幅に短縮されて公開され、日本でも昭和7年10月に万世橋シネマ・パレスで17.5ミリ版によってひっそりと公開されただけだった。その後、1981年にフィルム・ヒストリアンのケヴィン・ブラウンローが235分の短縮版としてレストレーションを行い、これの配給権を取得したフランシス・フォード・コッポラが1981年にニューヨークのラジオ・シティ・ミュージック・ホールで公開した(日本でも同じバージョンが1982年10月に公開)。

1927年のオリジナルには「鉄路の白薔薇」(1922)「レ・ミゼラブル」(1933)「罪と罰」(1935)等のフランスの作曲家アルトゥール・オネゲル(1892〜1955)によるスコアが付いていたが、1981年のレストレーション版については、主として米国市場向けにフランシスの父カーマイン・コッポラ(1910〜1991)作曲のスコアが、欧州市場向けにブラウンローより委託されたカール・デイヴィス(1936〜)作曲のスコアが新たに製作され、各々劇場公開時に作曲家指揮のオーケストラによりライヴ演奏された。カール・デイヴィスのスコアは、1983年に英Chrysalisレーベルよりデイヴィス指揮レン管弦楽団の演奏による全14曲収録のLPがリリースされており、同じ内容のCDが1994年に英Silva Screenレーベルより出ている。その後、デイヴィスは2016年11月にBritish Film InstituteによりリリースされたDVD/BD用に5時間半のスコアを作曲・録音しており、ここで紹介しているCDはそのハイライト(全39曲)をCD2枚組に収録したもの。

CD1枚目の冒頭「Overture」は、静かに荘厳なイントロから優雅な主題へと展開する序曲。「Snowball Fight」「Pillow Fight」は、躍動的な曲。「Future General」は、ヒロイックで快活な曲。「Eagle of Destiny」は、荘厳で格調高いメインの主題で、デイヴィスの作曲した主題の中でもベストの1つだろう。この主題は「The Eagle's Return」「Fragments」「Call to Arms」等でも登場する。「Mort aux tirans」は、ストイックなタッチから後半はフランス国歌の『ラ・マルセイエーズ』が引用されるが、この曲は「Teaching the Marseillaise」「On the Run」等でも繰り返し引用される。「Reunion」「The Death of Marat」は、静かにメランコリックな曲。「Picnic」は、ジェントルな曲。「Denounced」は、躍動的でミリタリスティックな曲。「Double Tempest」は、重厚でダイナミック。「Nelson」「Babel」「Dancing in the Rain」は、イギリスの愛国歌『ルール・ブリタニア』の引用。「The Plan」は、イギリス軍擲弾兵部隊の行進曲である『ブリティッシュ・グレナディアーズ』の引用。CD2枚目の冒頭「The Drums of the 6th」は、メインの主題を織り込んだ躍動的でミリタリスティックな曲。メインの主題は「The Hero of Toulon」「Saviour of Paris」「At Last」「Two Weddings」「Making an Army」「Peroration」等でも登場。「The Hurdy Gurdy Suite」は、快活なマーチ。「Imprisoned」は、メランコリックな曲。「Dossiers」「The Fan」「Do You Like Him」は、静かに優雅な曲。「St Just」は、重厚でドラマティック。「Vaudeville」「On with the Dance」は、明るく快活なタッチ。「Ghosts」「The Beggars of Glory」は、『ラ・マルセイエーズ』を織り込んだ曲。ラストの「Clouds」は、荘厳かつヒロイックな曲。クラシック音楽等を巧みに織り込んだ格調高いスコア。
(2017年1月)

Carl Davis

Soundtrack Reviewに戻る


Copyright (C) 2017  Hitoshi Sakagami.  All Rights Reserved.