陽もまた昇る THE SUN ALSO RISES
作曲・指揮:久石 譲
Composed and Conducted by JOE HISAISHI
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
Performed by Tokyo City Philharmonic Orchestra
(仏Milan Music France /
399 932-2)
2007年製作の中国=香港合作映画(原題は「太陽照常升起/Tai
Yang Zhao Chang Sheng Qi」)。2008年10月18日〜10月26日に開催された第21回東京国際映画祭の「アジアの風」部門で10月20日に上映されている。監督は「紅いコーリャン」(1987)「宋家の三姉妹」(1997)に俳優として出演し、「太陽の少年」(1994)「鬼が来た!」(2000)「ニューヨーク、アイラブユー」(2008)「さらば復讐の狼たちよ」(2010)等の監督作があるチアン・ウェン(姜文/1963〜)で、彼は「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」(2016)にもベイズ・マルバス役で出演している。出演はチアン・ウェン、ジョアン・チェン(陳冲)、アンソニー・ウォン(黄秋生)、ジェイシー・チェン(房祖名)、ツイ・ジェン(崔健)、チョウ・ユン(周韻)、コン・ウェイ(孔維)他。イエ・ミー(葉彌)の原作『天鵞絨(Velvet)』を基にシュー・ピン、グオ・シーシンとチアン・ウェンが脚本を執筆。撮影はチャオ・フェイ、リー・ピンビンとヤン・タオ。4つの独立したストーリーが語られ、それらが一筋の大きな流れによって結ばれてゆく。≪瘋≫では、1976年の中国南部の小さな村を舞台に、夢に出てきた刺繍の靴を買ったのにそれを失くしてしまったことがきっかけで奇異な行動をとるようになった母(チョウ・ユン)と、彼女に振り回される息子の東方(ジェイシー・チェン)を描く。≪戀≫では、同じく1976年、北京の高校を舞台に、教師の老唐(チアン・ウェン)と肉体関係を持ちながらも、彼の親友である小梁(アンソニー・ウォン)に秘かな想いを寄せる女医の林(ジョアン・チェン)を描く。≪槍≫では、妻(コン・ウェイ)と共に南部の村に下放された老唐が、母が失踪してしまった東方に迎えられる。≪夢≫では、約20年前に遡り、らくだに乗って新疆の砂漠を行く東方の母と老唐の妻を描く。本作品は2007年第64回ヴェネチア映画祭のコンペティション部門に出品されている。
音楽は「さらば復讐の狼たちよ」(2010)でもチアン・ウェン監督と組んでいる久石
譲(1950〜)。「Singanushiga」は、イザイティ・イリヤスのヴォーカルによる中国西部の民謡。どことなくロシア民謡風。「Prologue
/ When Madness Sets In」は、ドラマティックで躍動的なイントロ(日本の時代劇風の主題)からジェントルでリリカルな主題をはさんで躍動的な主題へと展開。「Just
Call Me Aloysha」「Madman on a Tree」「One from Her Heart」「Confession of a Secret
Admirer」は、ジェントルでリリカルな曲。「Looking for Mother」「Here She Goes
Again」「Mother's Secret Lair」「The Mother Vanishes」「The Hunt / The Lair」「The Night
of Betrayal」は、ドラマティックで躍動的な主題。「Where Is Mother」は、明るく牧歌的な曲。「Reminiscence」「A
Miraculous Recovery」「Seduction」「Final Reckoning」は、メランコリックで美しい曲。「The
Parade」は、古楽器をフィーチャーしたジェントルでエスニックなタッチ。「The Hunting Party」は、ミリタリスティックなマーチ。「Singanushiga」は、冒頭と同じ民謡の歌曲だが、ここではイェアルジャン・マハーブシーとアスハール・マイマイティによる演奏。ラストの「The
Sun Also Rises」は、ドラマティックで躍動的な主題からワルツの主題へ展開。
メロディのキャッチーさが久石らしい。アイリッシュハープ、ティン・ホイッスル(アイルランド発祥の縦笛)、バス・リコーダー、リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ、ヴィオラ・ダモーレといった古楽器をフィーチャーしたオーケストラによる演奏。
(2017年9月)
久石 譲
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