(未公開)ワイルド・ギース II WILD GEESE II
作曲・指揮:ロイ・バッド
Composed and Conducted by ROY BUDD
演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra
(ドイツCaldera Records / C6022)
1985年製作のイギリス=オーストラリア合作映画(日本では劇場未公開でビデオ発売・TV放映済/TV放映時のタイトルは「ワイルドギース2」)。監督は「女王陛下の007」(1969)「ゴールド」(1974)「ロジャー・ムーア/冒険野郎」(1976)「(未公開)デス・ハント」(1981)「(未公開)トップレディを殺せ」(1986)等のピーター・ハント(1925〜2002)。出演はスコット・グレン、バーバラ・カレラ、エドワード・フォックス、ローレンス・オリヴィエ、ロバート・ウェッバー、ロベルト・フライターク、ケネス・ヘイ、ストラットフォード・ジョンズ、デレク・トンプソン、ポール・アントリム、ジョン・テリー、イングリッド・ピット、パトリック・ステュワート、マイケル・ハーバー、デヴィッド・ラムズデン他。「ワイルド・ギース」(1978)のダニエル・カーニーの原作『The
Square Circle』を基に「十二人の怒れる男」(1957)「ワイルド・ギース」(1978)「シャレード'79」(1978)「シーウルフ」(1980)「(未公開)ファイナル・オプション」(1982)等のレジナルド・ローズ(1920〜2002)が脚本を執筆。撮影はマイケル・リード。製作はユアン・ロイド。ナチスドイツの親衛隊大将だった戦犯ルドルフ・ヘス(1894〜1987)をベルリンのシュパンダウ刑務所から脱出させてライヴ出演させ、極秘情報を暴露させようと企むテレビ局の重役マイケル(テリー)とキャシー(カレラ)は、ヘスの救出を傭兵のジョン・ハダッド(グレン)に依頼する。刑務所を偵察していたハダッドは、ストレーブリング(フライターク)率いる東ドイツのスパイ一味に拉致されるが、からくも逃亡。ハダッドは友人で元イギリス軍人のアレックス・フォークナー(フォックス)と合流し、ヘス救出作戦の準備を進めるが……。「ハムレット」(1948)「探偵<スルース>」(1972)「マラソン
マン」(1976)「(未公開)ブラジルから来た少年」(1978)等のイギリスの名優サー・ローレンス・オリヴィエ(1907〜1989)がヘスを演じており、これは彼のキャリア最期の出演作の1つ。傭兵アクション映画の傑作「ワイルド・ギース」(1978/監督:アンドリュー・V・マクラグレン、出演:リチャード・バートン、ロジャー・ムーア、リチャード・ハリス、ハーディ・クリューガー)を製作したユアン・ロイドは、この続編の製作に当り、前作でアレン・フォークナー大佐を演じたリチャード・バートン(1925〜1984)に同じ役で出演してもらうべく準備を進めていたが、バートンが撮影開始の10日前に死去したため、急遽エドワード・フォックス(1937〜)がフォークナー大佐の弟役で出演することになった。この映画はリチャード・バートンに捧げられており、冒頭に前作のフッテージから編集した映像が流れる。
音楽はユアン・ロイド製作の「マーベリックの黄金」(1971)「太陽にかける橋/ペーパー・タイガー」(1975)「ワイルド・ギース」(1978)「シーウルフ」(1980)「(未公開)ファイナル・オプション」(1982)のスコアも手がけているイギリスの作曲家ロイ・バッド(1947〜1993)。「Main
Title」は、ミリタリスティックなイントロからヒロイックでダイナミックな主題へと展開する豪快なメインタイトルで、前作「ワイルド・ギース」の傑作スコアに通ずるパワフルなタッチ(この音楽は冒頭のリチャード・バートンのフッテージに重なるので、敢えて前作のスコアのタッチを再現している)。後半はメインの主題を織り込んだリズミックなサスペンス音楽へと展開する。「Cat
and Mouse in Berlin」は、バッドが得意とするジャズ・ベースのサスペンス音楽で後半はダイナミックなアクション音楽へ。「Solitary
Confinement」は、ドラマティックでストイックなタッチの曲。「Moving Around Spandau」は、メインの主題を織り込んだジャズ・ベースのサスペンス音楽からアクション音楽へ展開。「The
Wall」「Plot and Deceit」「Escape」も、サスペンス音楽。「The Romance Begins」は、ピアノによるドラマティックなメインの主題。「Attempt
to Free Hess」は、起伏に富んだダイナミックなサスペンス音楽。「End Titles」は、メインの主題から豪快なマーチへと展開するエンドタイトル。「Say
You'll Be Mine」は、オペラ歌手ピーター・ホフマンの大らかなヴォーカルによるメランコリックでドラマティックなメインの主題で、映画では未使用(この曲の歌詞はロイが妻シルヴィアのために数年前に書いたものらしい)。前作はアフリカを舞台にした傭兵アクション映画だったが、この続編はベルリンを舞台にしたスパイ・スリラーとなっているため、バッドのスコアもストレートなオーケストラル・スコアにジャズ・ベースのサスペンスアクション音楽を加えた構成となっている。
最後にボーナストラックとして、ロイ・バッドの未亡人であるシルヴィア(ロイは1993年8月に46歳の若さで脳出血により急死している)のオーディオ・コメンタリーが収録されているが、ロイの作曲スタイルは、ピアノを弾きつつ作曲していく一般的な手法ではなく、ロンドンの街を延々とひとりで歩き回りながら頭の中で全ての音楽を作曲し、帰宅して一気に楽譜に書き落とすというやり方だった、というコメントが興味深い。
このスコアは、公開当時にオランダのCBSレーベルからサントラLP(CBS Records /
26462)が出ており、その後2000年に「ワイルド・ギース」「(未公開)ファイナル・オプション」のスコアを含めた海賊盤CD(Wild Records /
WR-CD 54192)が出ていたが、このCalderaレーベルのCDは初の正規盤CDで、サントラLPと同じ内容。
プロデューサーのユアン・ロイドがこの映画のスコアについて語っているインタビューが以下のサイトで見られる(英語版):
Wild Geese II: Euan Lloyd in discussion about Roy Budd
https://vimeo.com/147703316
(2017年12月)
Roy Budd
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