(TV)スリラー THRILLER
作曲:ジェリー・ゴールドスミス
Composed by JERRY GOLDSMITH
指揮:ニック・レイン
Conducted by NIC RAINE
演奏:プラハ市フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the City of Prague Philharmonic Orchestra
(英Tadlow /
TADLOW 024) 2017
ユニヴァーサルが1931年に製作したクラシック・ホラーの名作「フランケンシュタイン」でクリーチャー役を演じたイギリス出身の名優で、「ミイラ再生」(1932)「フランケンシュタインの花嫁」(1935)「恐怖のロンドン塔」(1939)「古城の亡霊」(1963)「忍者と悪女」(1963)「(未公開)ブラック・サバス/恐怖!三つの顔」(1963)「(未公開)殺人者はライフルを持っている!」(1968)等多数の出演作があるボリス・カーロフ(1887〜1969)がホストを務めた、1960〜1962年製作の一話完結/50分×67話のアメリカ(NBC)のテレビシリーズ(日本でもテレビ放映済/「ボリス・カーロフのスリラー/恐怖の館」としてソフト発売済)。ホラーやサスペンス、ミステリのジャンルのストーリーを映像化したもので、ロッド・サーリングがホストを務めた「(TV)ミステリー・ゾーン」や、アルフレッド・ヒッチコック監督がホストだった「(TV)ヒッチコック劇場」と同趣向のシリーズ。
これはジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)がスコアを作曲した全16エピソード(オリジナルのスコアがつけられた全話中の約1/3)の中から6作品のスコアを選んでリー・フィリップスがリコンストラクトし、プラハ市フィルの演奏により2016年11月に新たに録音されたもの。尚、「(TV)スリラー」の他エピソードのスコアはモートン・スティーヴンスとピート・ルゴロが作曲している。
「THE GRIM REAPER」は、(本国で)1961年6月13日に放映されたエピソードで、監督は「(TV)チェックメイト」(1960)「(TV)シマロン」(1967)「(TV)嵐の夜の惨劇」(1972)等のハーシェル・ドーハティー(1910〜1993)。出演はウィリアム・シャトナー、ナタリー・シェイファー、ヘンリー・ダニエル、エリザベス・アレン、スコット・メリル他。ハロルド・ローラーの原案を基に「サイコ」(1960)「がい骨」(1965)「残酷の沼」(1967)「(未公開)ブラッド・ゾーン」(1971)「(未公開)アサイラム・狂人病棟」(1972)等の原作や脚本で知られる著名なホラー作家ロバート・ブロック(1917〜1994)が脚色。撮影は「犯罪組織」(1965)「(TV)太陽の流れ者」(1967)「マンハッタン無宿」(1968)等でドン・シーゲル監督と組んでいるバッド・サッカリー。人気作家のベアトリス・グレイヴス(シェイファー)は、19世紀に描かれたという鎌を持った死神の絵を購入するが、甥のポール(シャトナー)はその絵が呪われていると警告する……。尚、本作は日本で「呪いの鎌」のタイトルで1961年10月29日にテレビ放映されているらしい。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「THE GRIM REAPER Prologue」が、不安感を煽るストリングスによる曲。「THE
GRIM REAPER Suite」は、静かにドラマティックなサスペンス音楽から切るつけるようなストリングスへと展開する組曲。「THE
GRIM REAPER End Titles」は、ダイナミックでドラマティックなエンドタイトル。
「HAY-FORK AND BILL-HOOK」は、1961年2月7日に放映されたエピソードで、監督はハーシェル・ドーハティー。出演はケネス・ヘイ、オードリー・ダルトン、アラン・ネピア、アラン・ケイルー、ドリス・ロイド他。脚本は「キャプテン・アメリカ」(1971)「(TV)600万ドルの男/対決!サイボーグ国際誘拐シンジケート」(1973)「(未公開)巨大クモ軍団の襲撃」(1977)等のアラン・ケイルー。撮影は「大砂塵の男」(1968)「(TV)イスタンブール特急」(1968)「人間狩り」(1971)等のベンジャミン・H・クライン。イギリスのウェールズ州で魔術師と疑われていた老人が干し草用のくま手(hay-fork)と鉈(bill-hook)を使って残忍に殺される。スコットランドヤードのハリー・ロバーツ警部(ヘイ)は、地元の関係者たちが主張する迷信を排除しつつ捜査を進めるが、彼の妻ネスタ(ダルトン)が死の前兆である黒い犬の幻影を見始める……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「HAY-FORK AND BILL-HOOK Prologue」が、静かにミステリアスなタッチから躍動的なサスペンス音楽へと展開するプロローグ。「HAY-FORK
AND BILL-HOOK Suite」は、ドラマティックな主題から後半サスペンス音楽へと展開する組曲。「HAY-FORK
AND BILL-HOOK Finale」は、ジェントルでリリカルなフィナーレ。
「WELL OF DOOM」は、1961年2月28日に放映されたエピソードで、監督は「謎の下宿人」(1944)「戦慄の調べ」(1945)「暴走52マイル」(1966)等のジョン・ブラーム(1893〜1982)。出演はロナルド・ハワード、ヘンリー・ダニエル、トリン・サッチャー、フィンタン・メイラー、リチャード・キール他。ジョン・クレモンスの原案を基に「潜水艦X-1号」(1967)「モスキート爆撃隊」(1969)「ミッドウェイ」(1976)「未来元年・破壊都市」(1979)等のドナルド・S・サンフォードが脚色。撮影は「月世界征服」(1950)「80日間世界一周」(1956)「影なき狙撃者」(1962)「グラン・プリ」(1966)等のライオネル・リンドン。邪悪なモロック(ダニエル)と彼が従える巨漢のスティクス(キール)は、独身パーティへ向かう途中の車の運転手を殺害し、乗っていたイギリス名家出身の花婿ロバート(ハワード)と資産管理人の2人を誘拐するが……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「WELL OF DOOM Prologue」が、ダークでサスペンスフルなプロローグ。「WELL
OF DOOM Suite」は、ダークで抑制されたサスペンス音楽から後半ダイナミックで重厚なタッチへと展開する組曲。「WELL
OF DOOM Reunited」は、ジェントルな曲。
「MR.GEORGE」は、1961年5月9日に放映されたエピソードで、監督は「危険な場所で」(1951)「ジュニア・ボナー/華麗なる挑戦」(1972)「(TV)刑事コロンボ/白鳥の歌」(1973)「巨大生物の島」(1976)等に出演している女優で「(未公開)二重結婚者」(1953)「(未公開)ヒッチ・ハイカー」(1953)「青春がいっぱい」(1965)等の監督作があるアイダ・ルピノ(1918〜1995)。出演はヴァージニア・グレッグ、ハワード・フリーマン、リリアン・ブロンソン、ジーナ・ギレスピー、ジョーン・トンプキンス他。「太陽の爪あと」(1966)等で知られるホラー作家オーガスト・ダーレスの原案(スティーヴン・グレンドン名義)を基にドナルド・S・サンフォードが脚色。撮影は「喝采」(1954)「南海の冒険」(1958)「引き裂かれたカーテン」(1966)等のジョン・F・ウォーレン。孤児の少女プリシラ(ギレスピー)は彼女が継承する遺産を略奪しようと企む親戚たちに囲まれて暮らしていたが、彼女は謎の守護者“ミスター・ジョージ”に守られているのだった……。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「MR. GEORGE Prologue」が、静かにジェントルなプロローグ。「MR.
GEORGE Suite」は、抑制されたサスペンス音楽からジェントルでリリカルな主題へと展開する組曲。「MR. GEORGE
The Swing」は、ダイナミックなサスペンス音楽。
「THE POISONER」は、1961年1月10日に放映されたエピソードで、監督はハーシェル・ドーハティー。出演はマーレイ・マシスン、サラ・マーシャル、ブレンダ・フォーブス、ジェニファー・レイン、デヴィッド・フランカム他。脚本は「テキサスから来た男」(1950)「荒野の三悪人」(1951)「荒野の愚連隊」(1962)等のロバート・ハーディ・アンドリュース。撮影はベンジャミン・H・クライン。ロンドンの批評家トーマス・エドワード・グリフィス(マシスン)は美しいフランセス(マーシャル)と結婚するが、彼女には強欲な親戚たちがいてトーマスを苦しませはじめる。唯一の解決法は彼が保有する珍しい毒のコレクションだった……。19世紀に実在した作家で連続殺人犯とされるトーマス・グリフィス・ウエインライトをモデルにしたストーリー。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「THE POISONER Prologue」が、ハープシコードとストリングスによるミステリアスなタッチのプロローグ。「THE
POISONER Suite」は、ストリングスによるダークで不気味なサスペンス音楽。「THE POISONER End
Titles」は、ハープシコードをフィーチャーしたメランコリックでドラマティックなエンドタイトル。
「YOURS TRULY, JACK THE RIPPER」は、1961年4月11日に放映されたエピソードで、監督は「失われた週末」(1945)「ダイヤルMを廻せ!」(1954)「姦婦の生き埋葬」(1962)「(TV)刑事コロンボ/指輪の爪あと」(1971)「(TV)刑事コロンボ/悪の温室」(1972)等に出演し「白昼の対決」(1954)「性本能と原爆戦」(1962)等の監督作があるレイ・ミランド(1907〜1986)。出演はジョン・ウィリアムス、ドナルド・ウッズ、エドモン・ライアン、オットーラ・ネスミス、アダム・ウィリアムス他。ロバート・ブロックの原作『切り裂きジャックはあなたの友』を基に「地上最大のショウ」(1952)「宇宙戦争」(1953)「宇宙征服」(1955)「勇者カイヤム」(1957)等のバーレ・リンドンが脚色。撮影は「三匹荒野を行く」(1963)「大いなる砲火」(1967)「海底都市」(1970)等のケネス・D・ピーチ。切り裂きジャックによるロンドンでの連続殺人事件から70年後のニューヨーク。元警部のガイ卿(ウィリアムス)は、永遠の若さを得たジャックが今もこの大都市で殺人を続けていると警察に信じさせようとするが……。このブロックの原作短編は、日本で出版された短編集「切り裂きジャックはあなたの友」(ハヤカワ文庫)にも収録されている傑作。
ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、「YOURS TRULY, JACK THE RIPPER Prologue」が、マーチ調のややコミカルでダークなプロローグ。「YOURS
TRULY, JACK THE RIPPER Suite」「YOURS TRULY, JACK THE RIPPER “Not John, Jack”」も、ダークでコミカルなタッチの曲。
ラストの「END TITLES Suite」は、ジェントルな主題やダークなサスペンス音楽、ドラマティックな主題等、上記6エピソードの主題がメドレー形式で展開するエンドタイトルの組曲。
11〜20人の奏者で構成された小編成のオーケストラによるサスペンスフルなスコアで、ゴールドスミスが同時期の「(TV)ミステリー・ゾーン」(1960〜1961)に作曲したスコアに印象が近い。
(2018年5月)
Jerry Goldsmith
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