ウィンストン・チャーチル/ヒトラーから世界を救った男 DARKEST HOUR

作曲・指揮:ダリオ・マリアネッリ
Composed and Conducted by DARIO MARIANELLI

(独Deutsche Grammophon / 00289 479 8533)2018

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2017年製作のイギリス=アメリカ合作映画(日本公開は2018年3月)。監督は「プライドと偏見」(2005)「つぐない」(2007)「ハンナ」(2011)「アンナ・カレーニナ」(2012)「PAN 〜ネバーランド、夢のはじまり〜」(2015)等のジョー・ライト(1972〜)。出演はゲイリー・オールドマン、クリスティン・スコット・トーマス、ベン・メンデルソーン、リリー・ジェームズ、ロナルド・ピックアップ、スティーヴン・ディレイン、ニコラス・ジョーンズ、サミュエル・ウエスト、デヴィッド・スコフィールド、リチャード・ラムズデン、マルコム・ストーリー、ヒルトン・マクレー、ベンジャミン・ホイットロウ、ジョー・アームストロング、エイドリアン・ローリンズ、デヴィッド・ストラザーン他。脚本はアンソニー・マクカーテン。撮影はブリューノ・デルボネル。第二次世界大戦時に英国首相に就任し、ヒトラーの脅威に敢然と立ち向かったウィンストン・チャーチル(1874〜1965)の伝記ドラマ。1940年5月、ヒトラー率いるナチス・ドイツの前にフランスは陥落寸前で英国にも侵略の脅威が迫る中、前海軍大臣のウィンストン・チャーチル(オールドマン)が新首相に就任した。国民には人気があったが、度重なる失策で党内はもちろん国王ジョージ6世(メンデルソーン)からも信頼を得られずに弱音を吐くチャーチルを、妻のクレメンティーン(トーマス)は優しく叱咤する。就任直後の演説では勝利を目指して徹底抗戦を誓ったが、戦況は悪化の一途を辿り、ドイツ軍に追い込まれた英国軍がフランスのダンケルクで絶体絶命の状況を迎える。英国上陸も現実の脅威となる中、犠牲を回避すべくドイツとの和平交渉を主張する外相ハリファックス(ディレイン)の必死の説得を受けるチャーチルだったが……。製作費は約3000万ドル、全世界興行収入は約1億5085万ドル。

2017年度アカデミー賞の作品賞、撮影賞、美術賞、衣装デザイン賞にノミネートされ、同賞の主演男優賞(ゲイリー・オールドマン)とメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞している他、同年のゴールデン・グローブの男優賞(ドラマ)、英国アカデミー賞の主演男優賞とメイクアップ&ヘアー賞、放送映画批評家協会賞の主演男優賞とヘア&メイクアップ賞を受賞している。
ゲイリー・オールドマンの特殊メイクで日本人として初めてアカデミー賞のメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した辻 一弘(1969〜)は、ロス・アンジェルス在住のメイクアップアーティストで、ディック・スミスに師事し、リック・ベイカーの工房シノベーションスタジオに所属して「メン・イン・ブラック」「PLANET OF THE APES 猿の惑星」「グリンチ」等に携わった。その後現代美術の分野に転向していたが、本作でオールドマンから「あなたが(特殊メイクのオファーを)受けなければ私はこの作品には出ない」と言われ、映画界復帰を決意したという。

音楽はジョー・ライト監督と「プライドと偏見」(2005)「つぐない」(2007)「路上のソリスト」(2009)「アンナ・カレーニナ」(2012)等でも組んでいるダリオ・マリアネッリ(1963〜)。「Prelude」は、メランコリックでドラマティックなピアノによる前奏曲。「Where Is Winston?」は、ティンパニの連打からダイナミックでストイックな主題へと展開。「Full English」は、躍動的でサスペンスフルなタッチ。「A Telegram from the Palace」「One of Them」「First Speech to the Commons」「Just Before the Dawn」は、ピアノをフィーチャーしたメランコリックなタッチの曲。「Winston and George」は、ピアノをフィーチャーしたジェントルでドラマティックな曲。「The War Rooms」「From the Air」「Dynamo」「We Must Prepare for Imminent Invasion」は、ダイナミックでストイックな曲。「I Wouldn't Trust Him with My Bicycle」「History Is Listening」は、躍動的な曲。「Radio Broadcast」は、静かにドラマティックな主題から後半ストイックなタッチへ。「An Ultimatum」「The Words Won't Come」は、ダークなタッチの曲。「District Line, East, One Stop.」「We Shall Fight」は、メランコリックなタッチのピアノから後半ドラマティックなタッチへ展開。

重厚でクラシカルなスコア。ピアノの演奏はアイスランド出身のヴィキングル・オラフソン(Víkingur Ólafsson/1984〜)。ホルンはニコラス・コース、バスーンはエイミー・ハーマンの演奏。
ダリオ・マリアネッリは本スコアで英国アカデミー賞の作曲賞と放送映画批評家協会賞の音楽賞にノミネートされている。
(2019年9月)

Dario Marianelli

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