アクロス・ザ・スターズ ACROSS THE STARS
作曲・編曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed, Adapted and Conducted by JOHN WILLIAMS
ヴァイオリン:アンネ=ゾフィー・ムター
Violin by ANNE-SOPHIE MUTTER
演奏:ロス・アンジェルス・レコーディング・アーツ・オーケストラ
Performed by the Recording Arts Orchestra of Los Angeles
(独Deutsche
Grammophon / B0030629-02)
グラミー賞をこれまでに4回受賞しているドイツ出身のヴァイオリニスト、アンネ=ゾフィ・ムター(1963〜)からの提案により、ジョン・ウィリアムス(1932〜)が自身の映画音楽をムターのために特別に編曲して指揮したコンピレーション。
2019年4月にL.A.のカルヴァー・シティにあるソニー・ピクチャーズ・スタジオで71人編成のオーケストラと共に録音されたもので、曲目は以下の通り。
1. スター・ウォーズ/フォースの覚醒 Rey's Theme from
Star Wars: The Force Awakens
2. スター・ウォーズ/帝国の逆襲 Yoda's Theme from Star Wars: The
Empire Strikes Back
3.
ハリー・ポッターと賢者の石 Hedwig's Theme from Harry Potter and the Philosopher's Stone
4. スター・ウォーズ/クローンの攻撃 Across The Stars (Love Theme) from
Star Wars: Attack of the Clones
5. 遥かなる大地へ Donnybrook Fair from Far Aad Away
6. SAYURI Sayuri's Theme from Memoirs of a Geisha
7. ドラキュラ Night Journeys from Dracula
8. サブリナ Theme from Sabrina
9. タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 The Duel from The Adventures of
Tintin: The Secret of the Unicorn
10. スター・ウォーズ/ジェダイの復讐 Luke And Leia from Star Wars:
Return of the Jedi
11.
シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛 Nice To Be Around from Cinderella Liberty
12. シンドラーのリスト Theme from Schindler's List
大半が元々メインの主題をヴァイオリン以外の楽器が演奏している曲なので、ウィリアムス自身がヴァイオリンの演奏用にアレンジを加えているが、それが上手く作用しているものとそうでないものがある。
冒頭の3曲(“レイのテーマ”“ヨーダのテーマ”“ヘドウィグのテーマ”)は、3楽章から成るヴァイオリン協奏曲のように構成されており、聴き応えがある。
「スター・ウォーズ/クローンの攻撃」のアナキンとパドメのラヴテーマ“アクロス・ザ・スターズ”、「スター・ウォーズ/ジェダイの復讐」の“ルークとレイア”は、いずれもシリーズ中でも特筆すべき美しさの名曲だが、あまりヴァイオリン・ソロ向きの曲ではないと感じる。
一方、「遥かなる大地へ」の“ドニーブルック・フェア”での躍動的で迫力ある演奏や、「SAYURI」での情感のこもった美しい演奏は、ムターの独壇場で見事。「ドラキュラ」の格調高いアレンジメントも素晴らしい(この曲と「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」は、ウィリアムスの親友でムターの元夫である作曲家・指揮者・ピアニストのアンドレ・プレヴィンの提案によりチョイスされたものらしい)。ラストの「シンドラーのリスト」は、元々ヴァイオリン・ソロ向けに書かれた曲であり、ムターのヴァイオリンも感動的な名演。
アンネ=ゾフィ・ムターは、スイスとドイツの国境沿いにある町ラインフェルデンの出身で、5歳からピアノを習いはじめたが、その後すぐにエルナ・ホーニヒベルガーに師事し、ヴァイオリンを学んだ。9歳からはスイス屈指の音楽家アイダ・シュトゥッキの指導を受けた。13歳でヘルベルト・フォン・カラヤンに招かれ、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団と共演、1977年にダニエル・バレンボイム指揮イギリス室内管弦楽団と共演してザルツブルク音楽祭デビュー。1980年にはズービン・メータ指揮のニューヨーク・フィルハーモニックと共演してアメリカ・デビューを飾り、1988年に北米大陸縦断コンサートを行った際にカーネギー・ホールにデビューした。1986年にロンドンの王立アカデミー音楽院ヴァイオリン科の国際学部長に任命され、その翌年にヨーロッパの才能ある若い弦楽器奏者の育成を目指すルドルフ・エバリー基金を立ち上げた。この活動は1997年にアンネ=ゾフィー・ムター基金と合体し、2008年にはアンネ=ゾフィー・ムター財団が設立された。ムターは2008年にエルンスト・フォン・ジーメンス音楽賞、2009年にフランスの現代音楽への貢献に対してレジオン・ドヌール勲章、2011年に社会的活動を通して行った人道的支援に対してエーリヒ・フロム賞を授与されているほか、ドイツ連邦共和国一等功労十字勲章、メンデルスゾーン賞、ブラームス賞、ヘルベルト・フォン・カラヤン音楽賞、バイエルン功労十字勲章、高松宮殿下記念世界文化賞等を受賞している。
ムターは、ジョン・ウィリアムスの映画音楽の信奉者であると明言しており、2017年7月のタングルウッド音楽祭ではウィリアムスが彼女のために作曲した「ヴァイオリン・ソロ、弦楽器、ハープのための《マーキングス》」の世界初演を行っている。
(2020年1月)
John Williams
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