溝の中の月 LA LUNE DANS LE CANIVEAU

作曲・指揮:ガブリエル・ヤレ
Composed and Conducted by GABRIEL YARED

(仏Music Box Records / MBR-138) 2018

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1983年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1987年6月/英語題名は「THE MOON IN THE GUTTER」)。監督は「ディーバ (1981)「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」(1986)「ロザリンとライオン」(1989)「IP5/愛を探す旅人たち」(1992)「青い夢の女」(2000)等のジャン=ジャック・ベネックス(1946〜)。出演はジェラール・ドパルデュー、ナスターシャ・キンスキー、ヴィクトリア・アブリル、ベルティス・リーディング、ガブリエル・モネ、ドミニク・ピノン、ミレーナ・ヴコティック、ヴィットリオ・メッツォジョルノ、ベルナール・ファルシー、アンヌ=マリー・コフィネ、ジャック・エルラン、グイド・アルベルティ、カーチャ・ベルゲル、ローザ・フュメット、グラツィアーノ・ギウスティ他。デヴィッド・グッディスの原作を基にジャン=ジャック・ベネックスとオリヴィエ・メルゴーが脚本を執筆。撮影はフィリップ・ルースロ。マルセイユの波止場の路地裏で強姦された若い娘が、そのショックで自殺する。その娘の兄ジェラール・デルマ(ドパルデュー)は、妹を死に追いやった強姦犯を捕らえようと、夜の港をさまよい歩く。ジェラールは嫉妬深い愛人のベラ(アブリル)と暮らしていたが、バーで山の手の金持ちニュートン・チャニング(メッツォジョルノ)とその妹ロレッタ(キンスキー)に出会い、彼女に一目惚れしてしまう……。1983年度カンヌ国際映画祭の正式コンペティション出品作品で、同年のセザール賞の美術賞を受賞している。

音楽は「ベティ・ブルー/愛と激情の日々」(1986)「IP5/愛を探す旅人たち」(1992)でもジャン=ジャック・ベネックス監督と組んでいるガブリエル・ヤレ(1949〜)。このスコアは公開当時の1983年に仏RCAレーベルから全11曲/約34分収録のサントラLP(RCA Records PL 37780)が出ており、仏Milanレーベルが1987年に同じ内容のCD(Milan Records CDFMC 2)を、また仏Cinéfoniaレーベルが2005年に全16曲/約44分収録のCD(Cinéfonia CFY 004/Gabriel Yared Film Music Vol.4)リリースしているが、このMusic BoxレーベルのCDは2枚組で全32曲/約88分を収録したリマスター/エクスパンデッド盤。

CD1枚目の冒頭「Loretta」は、ストリングスとピアノによるしっとりと情感豊かで美しいロレッタの主題で、ヤレは撮影前にナスターシャ・キンスキーと会った時に得たインスピレーションからこの主題を作曲したという。「L'hôpital」は、静かなサスペンス調から後半リリカルな主題へ。「Valse de Loretta」は、ピアノとストリングスによるロレッタの主題のワルツ。「Folie ouvrière」は、バウンシーでアブストラクトなタッチの曲。「Chambre de Catherine」は、ロレッタの主題の幻想的なアレンジメント。「Fugue de la cathédrale」は、ドラマティックでクラシカルなタッチの曲。「La folie des docks」は、躍動的でスリリングなタッチの曲。「Danse de Bella」は、ベラがダンスを踊るシーンの軽快でトロピカルなタッチの曲。「Insert Loretta」「La dame de Shanghai」「Un autre monde」も、ロレッタの主題のバリエーション。「Tango de l'impasse」は、躍動的なタンゴ。「La lune dans le caniveau」は、鳥のさえずりのSEからロレッタの主題、そして様々な音楽要素がアブストラクトに展開する曲。「Fatalité」は、リズミックでダイナミックな曲。「Entrée de l'hôpital」は、サスペンスフルなタッチ。ラストの「Valse de Loretta (piano solo)」は、ピアノソロによるロレッタの主題。

CD2枚目にはロレッタの主題の別バージョン等のボーナストラック16曲を収録。ヴァイオリン・ソロはリオネル・ガリ、チェロ・ソロはユベール・ヴァロン、ピアノはガブリエル・ヤレの演奏。

ガブリエル・ヤレは撮影前に主要な主題のデモを作曲することをベネックス監督に提案し、バーでのタンゴやベラのダンス・シーン等のソース曲をソロ・ヴァイオリンとシンセサイザー、パーカッションにより録音した。更にメインとなるロレッタの主題も事前に作曲・録音し、ベネックス監督はドパルデューとキンスキーが最初に出会うシーン等の撮影でこれらのデモをセットで流しながら撮影した。ガブリエル・ヤレの初期の傑作スコアで、500枚限定プレス。
(2020年5月)

Gabriel Yared

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