ザ・リバー THE RIVER

作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS

(米Intrada / Intrada Special Collection Volume 441)

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1984年製作のアメリカ映画(日本公開は1986年2月)。監督は「女狐」(1967)「華麗なる週末」(1969)「11人のカウボーイ」(1972)「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」(1973)「ローズ」(1979)「黄昏」(1981)「わかれ路」(1994)「(TV)DEAN/ディーン」(2001)等のマーク・ライデル(1929〜)。出演はメル・ギブソン、シシー・スペイセク、シェーン・ベイリー、ベッキー・ジョー・リンチ、スコット・グレン、ドン・フッド、ビリー・グリーン・ブッシュ、ジェームズ・トルカン、ボブ・W・ダグラス、アンディ・スタール、リサ・スローン、ラリー・D・フェレル、スージー・トゥーミー、ケリー・トゥーミー、フランク・ホイト・テイラー他。ロバート・ディロンの原案を基にロバート・ディロンとジュリアン・ダリーが脚本を執筆。撮影は「脱出」(1972)「愛のメモリー」(1976)「未知との遭遇」(1977)「ディア・ハンター」(1978)「ミッドナイトクロス」(1981)等のヴィルモス・ジグモンド

大雨により常に浸水する農村地帯を舞台に、先祖伝来の土地を守ろうとする貧しい農民と、土地開発に乗り出してくる冷酷な大企業の対立を描くドラマ。トム・ガーヴィー(ギブソン)は、妻メイ(スペイセク)や2人の子供たちルイス(ベイリー)、ベス(リンチ)と共に5世代続くテネシーの農地を守りながら生活していた。雨期になると近くの川が氾濫して農地に浸水するので作物の被害が大きく、借金を負い、銀行からのローンも断わられる状況だった。一方、メイのかつての恋人で製粉会社の次期社長と見込まれるジョー・ウエイド(グレン)は、大がかりなダム建設計画を進めるために水没予定地の農地を買い上げつつあった。ジョーはトムに土地を手放すよう説得するが、トムは頑なに拒むのだった……。メル・ギブソンは実父がテネシー出身だったことから(メルはニューヨークで生まれ、幼少期にオーストラリアに移住している)この映画の主演を強く希望し、監督のマーク・ライデルに自分をキャストするよう掛け合ったが、ライデルは彼のオーストラリア訛りを気にしていた。その懸念を払拭するためにメルは完璧なテネシー訛りをマスターしてライデルにデモンストレーションし、役を得たという。製作費は約1800万ドル、全世界興行収入は約1149万ドル。1984年度アカデミー賞の主演女優賞(シシー・スペイセク)、撮影賞、作曲賞、音響賞にノミネートされ、音響編集のケイ・ローズが特別業績賞を受賞している他、同年のゴールデン・グローブの女優賞(ドラマ)と音楽賞にノミネートされている。

音楽は「華麗なる週末」(1969)「11人のカウボーイ」(1972)「シンデレラ・リバティー/かぎりなき愛」(1973)でもマーク・ライデル監督と組んでいるジョン・ウィリアムス(1932〜)で、彼はライデルが俳優として出演した「ロング・グッドバイ」(1973)のスコアも手がけている。このスコアは公開当時の1984年にMCAレーベルが全11曲/約37分収録のサントラLP(MCA-6138)を出しており、同じ内容のCDがVarese Sarabandeレーベル(VSD-5298)からも出ていたが、このIntradaレーベルのCDは前半に上記サントラ盤のリマスターされたトラック、後半に未発表曲を含むコンプリートスコアを収録している(全28曲/約79分)。

前半の1曲目「The River」は、明るく躍動的なイントロからリズミックでジェントルかつ大らかなメインの主題、ドラマティックなラヴ・テーマへと展開する曲。「Growing Up」「The Pony Ride」は、ギターをフィーチャーしたジェントルなタッチの曲。「Love Theme from The River」は、静かにドラマティックなタッチからトランペット・ソロによるやや気だるいタッチのドラマティックなラヴ・テーマへ。「The Ancestral Home」は、大らかでドラマティックな主題が後半力強く盛り上がる。名曲。「Rain Clouds Gather」は、静かなタッチから徐々にサスペンスが高まる曲。「From Farm to Factory」は、明るく躍動的な主題からラヴ・テーマへ。「Back from Town」は、ドラマティックなタッチからメインの主題へ。「Tractor Scene」は、サスペンス音楽。「A Family Meeting」は、ラヴ・テーマからメインの主題へ。「Young Friends Farewell」は、ギターをフィーチャーしたドラマティックな曲。
後半のコンプリートスコア中で未発表だった曲「Leaving Home」は、ダークなタッチのサスペンス音楽。「The Family」は、メインの主題のギターによる明るくジェントルなタッチの演奏。「The Kids Separate」も、ギターをフィーチャーしたジェントルな曲。「Dialing the Hospital」は、ラヴ・テーマのバリエーション。「Telephone Call」は、明るく躍動的なタッチからラヴ・テーマ、メインの主題へ。「The Hotel」は、フルートによるドラマティックなイントロからトランペットによるラヴ・テーマへ。「Releasing the Doe」は、明るく快活なイントロからトランペットによるラヴ・テーマへ。最後にエクストラとして「The Family (Alternate)」「The Ancestral Home (Alternate)」「Leaving Home (Film Version)」の別バージョンを収録。

トランペット・ソロによるラヴ・テーマが印象的なスコア。上述の通り、ジョン・ウィリアムスはこのスコアでアカデミー賞の作曲賞とゴールデングローブの音楽賞にノミネートされている。限定プレス。
(2020年7月)

John Williams

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