ミスター・マム MR. MOM
作曲・指揮:リー・ホールドリッジ
Composed and Conducted by LEE HOLDRIDGE
(スペインQuartet Records / QR416)
1983年製作のアメリカ映画(日本公開は1984年5月)。監督は「ドラキュラ都へ行く」(1979)「テンプテーション
15才」(1989)「スーパー・タッチダウン」(1991)等のスタン・ドラゴッティ(1932〜2018)。出演はマイケル・キートン、テリー・ガー、フレデリック・コーラー、タリーシン・ジャフェ、コートニー・ホワイト、ブリタニー・ホワイト、マーティン・マル、アン・ジリアン、ジェフリー・タンバー、クリストファー・ロイド、トム・レオポルド、グレアム・ジャーヴィス、キャロリン・シーモア、マイケル・アライモ、ヴァルリ・ブロムフィールド他。脚本は「ブレックファスト・クラブ」(1985)「ときめきサイエンス」(1985)「フェリスはある朝突然に」(1986)等の監督・脚本や「ホーム・アローン」(1990)「ベートーベン」(1992)「101」(1996)「フラバー」(1997)等の脚本を手がけたジョン・ヒューズ(1950〜2009)。撮影はヴィクター・J・ケンパー。ある日突然主夫となった男と、彼の代わりに働きはじめた妻を描くコメディ。デトロイトの自動車工場に勤める技師ジャック・バトラー(キートン)は、ある日会社の業績不振のためにレイオフを宣告された。家計を維持するため、妻のキャロライン(ガー)は広告代理店に勤めることになり、代わりにジャックは長男のアレックス(コーラー)を学校へ送っていき、スーパーに寄って買物をし、下の子供のケニー(ジャフェ)やミーガン(双子のコートニーとブリタニー・ホワイトが2人1役)の世話をし、洗濯をする。そんな彼に、未亡人のジョーン・ハンプトン(ジリアン)が下心を隠して接近してくる。一方、キャロラインは自分の提出した宣伝プランがクライアントに採用され、(これまた下心を隠した)社長のロン・リチャードソン(マル)から重宝されるようになるが……。全世界興行収入は約6478万ドル。ジョン・ヒューズが妻の不在時に2人の子供の面倒を見たときの自らの悲惨な体験をプロデューサーのローレン・シュラー・ドナーに話し、彼女が大うけしたのをきっかけに脚本を執筆したという。今から35年以上前のアメリカでは“主夫”の概念自体がコメディ映画のネタになるほど異例だったということだろう。翌年にテレビ映画「(未公開/TV)MR.
MOM」(監督:テリー・ヒューズ、出演:バリー・ヴァン・ダイク、レベッカ・ヨーク、ブレンドン・ブリンコー他)としてリメイクされている。
音楽は「(TV)エデンの東」(1981)「ミラクルマスター/七つの大冒険」(1982)「スプラッシュ」(1984)「私が愛したグリンゴ」(1989)「(未公開)ロング
ウェイ ホーム 遥かなる故郷 イスラエル建国の道」(1997)「(TV)アヴァロンの霧」(2001)等のリー・ホールドリッジ(1944〜)。このスコアの初リリースで、前半にモノラル音源のコンプリートスコア21曲、後半に現存するステレオ音源14曲(内容はモノラル音源と一部重複)を収録。「Mr.
Mom (Main Title)」は、トランペット、サックスをフィーチャーした明るくジェントルなメインタイトルで、このメインの主題は「Fired」「First
Day at Work / Awesome Job / A Good Day」「Another Good Day」「Fond Farewell /
Hollywood」「Bedroom Eyes」等でも登場する。「The Bet」は、明るく躍動的な曲。「Crazy
Days」「Finale」は、快活なマーチ調の曲。「Man Against Vacuum」は、ジョン・ウィリアムス作曲の「ジョーズ」の主題のパロディ(キャロラインが掃除機に“ジョーズ”というニックネームを付けていたことから)。「More
Crazy Days」は、ダイナミックなサスペンス音楽で、ここでも「ジョーズ」が登場。「Fast Exit」は、ビジーでダイナミックな曲。「Missing
Her」は、ピアノをフィーチャーしたリリカルでジェントルな曲。「Troubled Soap」は、ずっと家にいて昼ドラにはまってしまったジャックが見る(昼ドラ調の)夢のシーンの音楽で、ピアノ・コンチェルト風のドラマティックな曲。アメリカで1973年からテレビ放送されていたソープオペラ(昼ドラ)「The
Young and the Restless」の「ナディアのテーマ」(作曲:バリー・デ・ヴォーゾン、ペリー・ボトキン・Jr)の引用を含む。「Woobie」は、ジェントルなタッチの曲。「Dining
Room / Off to Work」は、リリカルな主題からメインの主題へと展開するホールドリッジらしい優しい曲。監督はこのシーンでクロード・ドビュッシー作曲のピアノ曲『月の光(Clair
de
Lune)』を使いたかったが、この曲の著作権を管理する弁護士から許諾が下りなかったため、ホールドリッジがメインの主題をドビュッシー風のアレンジにしたという。「Mr.
Mom (End Title)」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル。最後に追加音楽としてジェントルなソース曲「Smooth
Source」、重厚でダイナミックな怪獣音楽「Monster Tunes」、陽気なマーチ「Racing
Day」を収録。
リー・ホールドリッジが手がけた「続・あの空に太陽が」(1978)「続ある愛の詩」(1978)「スプラッシュ」(1984)といったラヴ・ストーリーやロマティック・コメディの音楽に通ずる、明るくジェントルなスコア。1000枚限定プレス。
(2020年7月)
Lee Holdridge
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