(未公開)はめる/狙われた獲物 MAX ET LES FERRAILLEURS
友情 VINCENT, FRANÇOIS, PAUL ET LES AUTRES

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:ジャン=ミシェル・ドゥファイエ、カルロ・サヴィーナ
Conducted by JEAN-MICHEL DEFAYE, CARLO SAVINA

(スペインQuartet Records / QR418)

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クロード・ソーテ監督(1924〜2000)とフィリップ・サルド(1948〜)のコラボレーションによる2作品のスコアをカップリングにしたCD(500枚限定プレス)。ソーテ監督とサルドは、この2作品以外にも「すぎ去りし日の…」(1970)「夕なぎ」(1972)「ありふれた愛のストーリー」(1978)「ギャルソン!」(1983)「僕と一緒に幾日か」(1988)「愛を弾く女」(1992)「とまどい」(1995)等でも組んでおり、これらのスコアを集めたコンピレーションCDが過去にフランスのMilanレーベル(Milan CDCH 318)とUniversalレーベル(Universal 013 061-2)から出ている。

「(未公開)はめる/狙われた獲物(MAX ET LES FERRAILLEURS)」は、1971年製作のフランス=イタリア合作映画(日本では劇場未公開でビデオ発売済)。出演はミシェル・ピッコリ、ロミー・シュナイダー、ベルナール・フレッソン、フランソワ・ペリエ、ジョルジュ・ウィルソン、ボビー・ラポワン、フィリップ・レオタール、ミシェル・クレトン、ベティ・ベッケール、アンリ=ジャック・ユエ、ドミニク・ザルディ、ダニー・ジャッケ、ダニエル・デュルー、ジャック・カンセリエ、モーリス・オーゼル他。クロード・ネロンの原作を基にジャン=ルー・ダバディ、クロード・ソーテとクロード・ネロンが脚本を執筆。撮影はルネ・マテラン。連続窃盗犯グループを逮捕することができずに焦るパリ警察の刑事マックス(ピッコリ)は、昔の戦友で今は盗難車を扱ったりしているアベル・モレスコ(フレッソン)に、彼の愛人の娼婦リリー(シュナイダー)を通じて銀行強盗を画策させ、現行犯逮捕すべく罠をかける。マックスの思惑通りに強盗一味は一網打尽になるが、共犯者としてリリーも逮捕されてしまう……。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Générique (Thème)」がリズミックでストイックなタッチの主題によるダイナミックなメインタイトル。「Max et Abel」は、メインの主題を織り込んだサスペンス音楽。「Description des ferrailleurs」「Rue d'Argonne (Part 1)」は、リズミックな曲。「À la longue vue」「Rue d'Argonne (Part 2)」「Destruction et Rédemption de Max」は、抑制されたサスペンス音楽。「Lily et Max」は、女声スキャットを織り込んだメランコリックな主題から抑制されたサスペンス音楽へ。「Le bal des Ferrailleurs」は、メインの主題のバリエーション。「Abel et Lily」は、やや気だるいタッチの曲。「Juke-Boxes chez Saidani」は、ロックのソース曲。「Capture des ferrailleurs」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Max et les ferrailleurs (Vocal: Mouloudji, Lyrics by Eddy Marnay)」は、ムールージのヴォーカルによる主題歌(作詞はエディ・マルネイ)。「Max et les ferrailleurs (Unrleased Score Suite)」は、メインの主題を含むスコアの組曲。犯罪ドラマにふさわしいハードボイルドなタッチのスコア。オーケストラの指揮はジャン=ミシェル・ドゥファイエ

このスコアは公開当時の1971年にフランスのPemaレーベルより約26分収録のサントラLP(Pema PEM 80 100)が出ており、その後イタリアのCAMレーベルより1992年(CAM CSE 089)と2000年(CAM 501264-2/「すぎ去りし日の…」とカップリング)にCD化されているが、これらのCDはメインタイトルのスピードが誤っていたり一部ステレオの曲がモノラルになっていたりした。このQuartet盤ではこれらが修正されており、最後に未収録だった組曲が追加されている。

「友情(VINCENT, FRANÇOIS, PAUL ET LES AUTRES)」は、1974年製作のフランス=イタリア合作映画。出演はイヴ・モンタン、ミシェル・ピッコリ、セルジュ・レジアニ、ジェラール・ドパルデュー、ステファーヌ・オードラン、マリー・デュボワ、ウンベルト・オルシーニ、リュドミラ・ミカエル、アントネッラ・ルアルディ、カトリーヌ・アレグレ、ベティ・ベッケール、イヴ・ガブリエリ、ジャン・カペル、モハメド・ガルール、ジャック・リシャール他。クロード・ネロンの原作を基にクロード・ソーテ、クロード・ネロンとジャン=ルー・ダバディが脚本を執筆。撮影はジャン・ボフェティ。小さな工場を経営するヴァンサン(モンタン)、医者のフランソワ(ピッコリ)、作家のポール(レジアニ)は、昔からの友人。彼らは中年になった今、それぞれが悩みを抱えている。ヴァンサンは妻カトリーヌ(オードラン)と別居しており、離婚の瀬戸際。ポールはスランプに陥り、新作の筆が進まない。フランソワは妻ルーシー(デュボワ)の浮気に悩んでおり、彼女に思わず暴力をふるってしまう。さらにヴァンサンは、金銭問題による工場の倒産の危機という苦境に立たされる……。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Vincent, François, Paul et les autres...」マルセル・アゾーラの演奏によるバンドネオンをフィーチャーしたジェントルでどこか懐かしいタッチのメインの主題。数多いサルドの作品中でも最も印象深く、心に染み入る名曲の1つ。このメインの主題が「Route de nuit」「Taxi」「Lucie et Julia」「Autrefois」「Ballade」「Convalescence」等、スコア全体を通して繰り返される。「Catherine」は、ピアノによるメランコリックなタッチのカトリーヌの主題。「Course à l'argent」は、リズミックなタッチの曲。「Isolement」は、ダークでドラマティックなタッチの曲。「Becaru-Farina」は、躍動的な曲。「Final」は、メインの主題のリプライズによるフィナーレ。最後に予告編の音楽「Vicent, François, Paul et les autres... (film-annonce)」を収録。オーケストラの指揮はカルロ・サヴィーナ

このスコアは公開当時の1974年にフランスのPolydorレーベルより全12曲収録のサントラLP(Polydor 2393 096)が出ており、その後イタリアのCAMレーベルより1992年(CAM CSE 046)と2000年(CAM 493261-2)にCD化されている(いずれも「愛人関係」とのカップリング)が、これらは既にコンプリートスコアだった。このQuartet盤はリマスターされ、これまで未収録だった予告編の音楽が追加されている。

(2020年9月)

Philippe Sarde

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