カリブの嵐 SWASHBUCKLER

作曲・指揮:ジョン・アディスン
Composed and Conducted by JOHN ADDISON

(スペインQuartet Records / QR424)

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1976年製作のアメリカ映画(日本公開は1977年4月/イギリス等での公開題名は「THE SCARLET BUCCANEER」)。監督は「レーサー」(1969)「エリックの青春」(1975)「ジェット・ローラー・コースター」(1977)「世界崩壊の序曲」(1980)等のジェームズ・ゴールドストーン(1931〜1999)。出演はロバート・ショー、ジェームズ・アール・ジョーンズ、ピーター・ボイル、ジュヌヴィエーヴ・ビュジョルド、ボー・ブリッジス、ジェフリー・ホールダー、アヴェリー・シュレイバー、トム・クランシー、アンジェリカ・ヒューストン、バーナード・ベーレンズ、ドロシー・トリスタン、マーク・ベイカー、キップ・ニーヴン、トム・フィッツシモンズ、ルイザ・ホートン他。ポール・ホィーラーの原案を基にジェフリー・ブルームが脚本を執筆。撮影はフィリップ・ラスロップ。製作総指揮は「動く標的」(1966)「荒鷲の要塞」(1968)「爆走!」(1972)「ロング・グッドバイ」(1973)「さらば愛しき女よ」(1975)「北海ハイジャック」(1980)「エンゼル・ハート」(1987)等のエリオット・カストナー(1930〜2010)。18世紀のカリブ海を舞台にした海賊映画。イギリス領ジャマイカはデュラント総督(ボイル)の独裁下にあったが、海賊船ブラーニー・コック号のネッド・リンチ船長(ショー)は彼に反抗し、総督の部下フォリー少佐(ブリッジス)の一隊に処刑されかかっていたニック・デブレット(ジョーンズ)という若者を救い出す。総督は独裁に苦言を呈したバーネット判事の財産没収をフォリーに命じたが、財産と共に判事の妻と娘ジェーン(ビュジョルド)を乗せた馬車がリンチたちに襲われる……。
“海賊映画”といえば、かつてのエロール・フリン(1909〜1959)主演の「海賊ブラッド」(1935)「シー・ホーク」(1940)等のクラシック作品が有名だが、この「カリブの嵐」以降に製作された「パイレーツ・ムービー(THE PIRATE MOVIE)」(1982)「(未公開)キャプテン・ブーリーの大冒険(NATE AND HAYES)」(1983)「(未公開)チーチ&チョン/イエローパイレーツ(YELLOWBEARD)」(1983)「(未公開)ポランスキーのパイレーツ(PIRATES)」(1986)「カットスロート・アイランド(CUTTHROAT ISLAND)」(1995)といった作品はいずれも興行的に失敗している。

音楽は「トム・ジョーンズの華麗な冒険」(1963)「引き裂かれたカーテン」(1966)「探偵<スルース>」(1972)「シャーロック・ホームズの素敵な挑戦」(1976)「遠すぎた橋」(1977)「(TV)ジェシカおばさんの事件簿」(1984〜1996)等のイギリスの作曲家ジョン・アディスン(1920〜1998)。この「カリブの嵐」のスコアは、公開当時の1976年に米MCAレーベルより全13曲/33分収録のサントラLP(MCA Records 2096)が出ており(日本でリリースされたサントラLPはタイトルが「The Scarlet Buccaneer」になっていた)、2008年に米Intradaレーベルが同内容でCD化(Intrada Special Collection Volume 56)しているが、このQuartetレーベルのCDは2枚組となっており、1枚目に映画で使用されたオリジナルスコアと追加音楽(初収録)、2枚目に過去のサントラ盤と同じ内容をリマスターしたものを収録(全42曲/約98分)。

CD1枚目の冒頭「Swashbuckler - Main Title」は、明るくリズミックなイントロからミリタリスティックで不吉なタッチのデュラント総督の主題をはさんで、大らかなメインの主題へと展開するメインタイトル。アディスンの作品中でも最も親しみやすくキャッチーな主題の1つだろう。「Rescue」は、メインの主題を織り込んだ明るく豪快なタッチの曲で、ここで登場するダイナミックな冒険活劇調の主題が「The Coach Robbery (Film Mix)」「Foiling Folly」「The Incredible Chase - Escape」「Retreat to the Ship (Film Mix)」「Derring-Do! (Film Mix)」等でも繰り返される。「Duelist Dies」は、デュラント総督の主題を含むサスペンス音楽。「Plunder」「Assault on the Fortress (Film Mix)」は、ややとぼけったタッチのサスペンス音楽。「Torture, Erotica in Waltz Time (Extended Version)」は、ワルツ調のダークなサスペンス音楽。「The Incredible Chase - Pursuit」は、ダイナミックで豪快なアクション音楽。「Girl Fight / Into the Ocean」は、ビュジョルドVS海賊女のキャットファイト・シーンでのややコミカルなタッチの豪快なアクション音楽。「Fencing Lesson」は、ポルカ調のややコミカルなタッチで明るく躍動的な曲。「Ned and Jane」も、コミカルなタッチの曲。「Love Theme from Swashbuckler」は、ロマンティックでリリカルなタッチのラヴ・テーマ。「Nose for Trouble / Life at Stake」は、サスペンス調からダイナミックなアクション音楽へ。「Revolution / Into the Forest」「The Pickpocket Monkey (Film Mix)」は、ややとぼけったタッチの曲「Open the Gates / Prisoners Freed」は、ダークなサスペンス調から明るく盛り上がる。「End Title, End Cast (Extended Version)」は、メインの主題のリプライズによるエンドタイトル/エンドキャスト。最後に追加音楽としてアイルランド民謡のソース曲、ジャマイカ風の舞踏音楽、メインタイトルとラヴ・テーマの代替バージョンを収録。

アディスンの個性が前面に出た明るく豪快で、まさに“スワッシュバックリング”なオーケストラル・スコアで、彼のベスト作の1つ。2000枚限定プレス。
(2020年9月)

John Addison

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