(未公開)最後の標的 LE CHOC
愛人関係 LES SEINS DE GLACE

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:ピーター・ナイト
Conducted by PETER KNIGHT (LE CHOC)

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra (LE CHOC)

(仏Music Box Records / MBR-186)

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フィリップ・サルド(1948〜)がアラン・ドロン主演の2作品に作曲したスコアをカップリングにしたCD(500枚限定プレス)。

「(未公開)最後の標的(LE CHOC)」は、1982年製作のフランス映画(日本では劇場未公開でビデオ発売・テレビ放映済/テレビ放映時タイトルは「必殺ビッグガン/最後の標的」、英語題名は「CONTRACT IN BLOOD」)。監督は「(TV)暗黒の戦士/ハイランダー 超空編」(1992)「(TV)ポンパドール夫人」(2006)等のロバン・ダヴィ(1943〜)。出演はアラン・ドロン、カトリーヌ・ドヌーヴ、フィリップ・レオタール、エチエンヌ・シコ、ジャン=ルイ・リシャール、カトリーヌ・ルプランス、フランソワ・ペロー、フェオドール・アトキン、フランク=オリヴィエ・ボネ、ミリアム・ピサケーヌ、ピーター・ボンク、ダニー・コーガン、ジャン=ジャック・シフェール、ステファーヌ・オードラン、アレクサンドラ・ステュワルト他。ジャン=パトリック・マンシェットの原作『眠りなき狙撃者(La position du tireur couché/The Prone Gunman)』を基にロバン・ダヴィ、アラン・ドロン、ドミニク・ロベレとクロード・ヴェイヨーが脚本を執筆。撮影はピエール=ウィリアム・グレン。凄腕の殺し屋マルタン・テリエ(ドロン)は、組織を抜け引退を考えていることを友人のミシェル(シコ)だけに話す。マルタンは組織のボスであるコックス(ペロー)から最後の仕事の報酬を受け取り、引退の意思を告げるが、コックスはそれを許さず、殺し屋たちを差し向ける……。ドロンとドヌーヴはジャン=ピエール・メルヴィル監督の「リスボン特急」(1972)でも共演している。この「(未公開)最後の標的」と同じ原作が「ザ・ガンマン(THE GUNMAN)」(2015/監督:ピエール・モレル、出演:ショーン・ペン、イドリス・エルバ、ハビエル・バルデム)として映画化されている。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Ouverture」ウェイン・ショーターのサックス・ソロをフィーチャーした明るくジェントルでどこか懐かしいタッチのラヴ・テーマによる序曲。「Générique (Choc Melody)」は、サックスによるストイックなマーチ調の主題からロック調へ展開するメインタイトルで、この主題は「La Malle (1re partie)」「Solitude」でも繰り返される。「L'Amour」は、サックスによるラヴ・テーマのジェントルな演奏。「La Malle (2e partie)」は、リリカルでややミステリアスなタッチの主題で、この主題は「La Folie」「Le Danger」「Plénitude」でも登場する。「Symphonie Dindons」は、ラヴ・テーマから後半クラシカルなタッチへ。「Coup de Foudre」は、リリカルでジェントルな曲。「Commando Schroeder」は、アップビートなサスペンス音楽。「Tendresse」「Le Charme」「La Joie」も、ラヴ・テーマのバリエーション。「Le Défi」は、抑制されたサスペンス調からリズミックなタッチへ。ラストの「L'Épopée」は、サスペンス調からメインの主題へと展開する曲。ピアノ、ストリングス、サックスをフィーチャーした情感豊かで華麗なスコア。オーケストレーションと指揮はピーター・ナイト。演奏はロンドン交響楽団。

このスコアは1982年に仏General Musicレーベルから全13曲/約26分収録のサントラLP(General Music/WEA 803033)が出ており、2009年に仏Universalレーベルがリリースしたフィリップ・サルド=ロバン・ダヴィ監督作品集CD(Universal Music France 982 458 2)に12曲が収録されていたが、このMusic BoxレーベルのCDには全17曲/約34分を収録。

「愛人関係(LES SEINS DE GLACE)」は、1974年製作のフランス=イタリア合作映画(日本公開は1975年4月/英語題名は「SOMEONE IS BLEEDING」「ICY BREASTS」)。監督は「女王陛下のダイナマイト」(1966)「チェイサー」(1978)「警部」(1978)「(未公開)ジャン=ポール・ベルモンドの道化師/ドロボー・ピエロ」(1980)「(未公開)プロフェッショナル」(1981)「ウエディングベル/Mr.レディMr.マダム3」(1986)「レプスキー絶体絶命/その男凶暴につき」(1989)等のジョルジュ・ロートネル(1926〜2013)。出演はアラン・ドロン、ミレーユ・ダルク、クロード・ブラッスール、フィオーレ・アルトヴィッティ、エミリオ・メッシーナ、アンドレ・ファルコン、ミシェル・ペイルロン、フィリップ・カステッリ、ジャン=ピエール・ロレイン、ジャン・ルイジ、マリオ・ダルザック、ニコレッタ・マキャヴェリ他。「激突!」(1971)「ヘルハウス」(1973)「(TV)恐怖と戦慄の美女」(1975)「ある日どこかで」(1980)「トワイライトゾーン/超次元の体験」(1983)「奇蹟の輝き」(1998)「アイ・アム・レジェンド」(2007)「運命のボタン」(2009)等のホラー/サスペンス小説の名手リチャード・マシスン(1926〜2013)の長編デビュー作『Someone Is Bleeding』を基にジョルジュ・ロートネルが脚本を執筆。撮影はモーリス・フェルー。冬のニース海岸でミステリアスな女性ペギー・リステル(ダルク)と出会い、強く惹かれたテレビ脚本家フランソワ・ローラン(ブラッスール)は、やがて彼女が敏腕弁護士マルク・リルソン(ドロン)の豪邸に住んでいることを知る。フランソワを邸宅に招いたリルソンは、ペギーが過去に夫を殺し、精神鑑定の結果無罪となっているが、その際に彼女を弁護したのが自分だったと語る……。この邦題は、当時実際に愛人だったドロンとダルクの関係に便乗したもので、マシスンの原作が日本で出版された際にも同じタイトルが使われた。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Seule」が女声ヴォーカル入りのメランコリックなタッチのメインの主題で、この主題は「Rêverie」「Regrets」「Apaisement」「Empathie」「Culpabilité」「Ensemble」でも登場する。「Trauma」「Cauchemar」「Trouble」「Obsession」「Résolution」は、不吉なサスペンス音楽。「Malaise」「Intimidation」「Contre-coup」は、不気味なタッチのサスペンス音楽。「Paranoïa」「Mélancolie」「Agression」「Panique」「Menace」は、ダイナミックなサスペンス音楽。ラストの「Seul」は、メインの主題により締めくくる。サルドにしてはかなりストレートなサスペンス音楽。オーケストレーションはユベール・ロスタン。ヴァイオリンはミシェル・リポッシュの演奏。

このスコアは公開当時に仏Polydorレーベルと日本のTamレーベルからシングル盤のサントラが、その後1984年にイタリアのPhoenixレーベルから「暗黒街のふたり」とカップリングにしたサントラLP(Phoenix PHCAM 05)が、1992年と2000年にイタリアCAMレーベルから「友情」とカップリングにしたサントラCD(CAM CSE 046、CAM 493261-2)が出ており、また2011年に仏Universalレーベルがリリースしたフィリップ・サルド=ジョルジュ・ロートネル監督作品集(Universal Music France 2769790)に2曲が収録されていたが、このMusic BoxレーベルのCDには全21曲/約23分半を収録。

(2021年2月)

Philippe Sarde

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