(未公開)LIONHEART
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
演奏:ハンガリー国立交響楽団
Performed by the Hungarian State Symphony Orchestra
(米Varese Sarabande
/ VCL 0421 1213)
1987年製作のアメリカ=ハンガリー合作映画。監督は「大将軍」(1965)「猿の惑星」(1968)「パットン大戦車軍団」(1970)「ニコライとアレクサンドラ」(1971)「パピヨン」(1973)等のフランクリン・J・シャフナー(1920〜1989)。出演はエリック・ストルツ、ガブリエル・バーン、ニコラ・カウパー、デクスター・フレッチャー、デボラ・バリモア、ニコラス・クレイ、ブルース・パーチェイス、ニール・ディクソン、ペニー・ダウニー、ナディム・サワラ、ジョン・フランクリン=ロビンス、クリス・ピット、マシュー・シム、ポール・リス、サミ・デイヴィス他。メノ・メイエスの原案を基にリチャード・ウッテンとメノ・メイエスが脚本を執筆。撮影はアレック・ミルズ。製作総指揮にフランシス・フォード・コッポラ、製作にタリア・シャイアが参加している。
中世のフランスで、家を飛び出した若き騎士ロベール・ネラ(ストルツ)は、孤児たちが奴隷商人に捕らえられそうになっているのを見て、彼らを救うために子供たちの十字軍を率いて獅子心王リチャード(ディクソン)のもとへと向かう決意をする。一方、子供たちを奴隷としてイスラム教徒に売り払おうと企むブラック・プリンス(バーン)が、彼らをつけ狙う……。1212年にフランス人の少年が数千人の子供たちを率いてエルサレムを目指した“子供たちの十字軍”の実話にインスパイアされている。製作費は約1150万ドル。カナダの劇場で10週間程度上映されたがアメリカでは劇場公開されず、ほぼストレートにビデオ市場に行ってしまったため、映画自体の評価は概して低いが、後述するように私は1986年に完成したばかりの本作を試写で見たことがあり、シャフナー監督の格調高い演出と見事なスコアに強い感銘を受けた。
音楽は、フランクリン・J・シャフナー監督と「七月の女」(1963)「猿の惑星」(1968)「パットン大戦車軍団」(1970)「パピヨン」(1973)「海流のなかの島々」(1977)「(未公開)ブラジルから来た少年」(1978)でも組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)で、これは彼らの最後のコラボレーション作品であると共に、ゴールドスミスのベスト・スコアの1つだろう。オーケストラにシンセサイザーを加えた演奏で、主要なキャラクターに個別の主題をつけたライトモチーフの手法が用いられている。
このスコアは1987年にVarese Sarabandeレーベルが全9曲/約42分収録のサントラLP/CD(VCD
47282)と、追加で全11曲/約40分収録の「Volume2」LP/CD(VCD 47288)、更にこの2枚を組み合わせ「The Epic Symphonic
Score」と銘打った全15曲/約62分収録のダイジェスト盤CD(VSD-5484)を1994年にリリースしているが、今回同じVareseレーベルから2021年6月にリリースされた「The
Deluxe Edition」は、CD2枚組で全22曲/約82分(未発表曲を2曲追加)を収録。2000枚限定プレス。
CD1枚目の「The
Castle」は、ヒロイックなリチャード王の主題による短いファンファーレから中世風の快活な主題へと展開するオープニング曲。「The
Ceremony」は、荘厳でヒロイックなメインの主題(ロベールの主題)の静かなアレンジメント。「Bring Him Back」は、シンセサイザーをフィーチャーしたメインの主題のバリエーション。「Failed
Knight」は、重厚でダイナミックなアクション音楽。「The Circus」は、アラビックで躍動的なタッチの主題から、後半はヒロインであるブランシュ(カウパー)のメランコリックな主題へ展開。このブランシュの主題はメランコリックな主題と、ロベールとのロマンスを描いたリリカルで美しい主題に分解されるが、ここでは前者を「ブランシュの主題」、後者を「ラヴ・テーマ」としている。「Robert
and Blanche」は、リリカルで美しいロベールとブランシュのラヴ・テーマから後半躍動的な主題へ。「Bondage」は、ブランシュの主題からブラック・プリンスの主題へ。「Black
Prince」は、ダークなタッチのブラック・プリンスの主題。
CD2枚目の冒頭「Children in
Bondage」は、サスペンスフルなタッチからダークで躍動的な主題へ。「The Future」は、ラヴ・テーマからメインの主題へ。「Gates
of Paris」は、ラヴ・テーマの短いフレーズから躍動的な主題へ。「Paris Underground」は、スリリングなタッチからブラック・プリンスの主題へ。「The
Road from Paris」は、メインの主題のバリエーションによる快活なマーチ。「The Banner / The New
Court」は、メインの主題の荘厳な演奏からラヴ・テーマ、ヒロイックなリチャード王の主題へと展開し、メインの主題がダイナミックに盛り上がった後にメインの主題の快活なマーチ調のアレンジメントに展開。「The
Dress」は、ラヴ・テーマからブランシュの主題へ。「Mathilda」は、ロジャー・ムーアの長女デボラ・バリモア(デボラ・ムーア)演じる女剣士マチルダのイギリス民謡風の主題から、メインの主題へと展開し、中盤のロベールとマチルダの馬上槍試合のシーンではマチルダの主題が躍動的でダイナミックに演奏される。「The
Plague」は、ダークで不吉なタッチからメインの主題、マチルダの主題、ラヴ・テーマ、ブランシュの主題、ブラック・プリンスの主題へと展開。「Forest
Hunt」は、サスペンス調からブラック・プリンスの主題、メインの主題、躍動的なサスペンス音楽へ。「The Lake」は、メランコリックなブランシュの主題からラヴ・テーマへ。「The
Wrong Flag」は、ヒロイックで躍動的なマーチからブラック・プリンスの主題、リチャード王の主題へ。「Final
Fight」は、ブラック・プリンスの主題を織り込んだダークなサスペンスアクション音楽。「King Richard / End
Title」は、ヒロイックなリチャード王の主題からメインの主題とマチルダの主題を織り込んだダイナミックで重厚なアクション音楽、メインの主題へと展開し、ラヴ・テーマが壮大に盛り上がった後に、メインの主題の荘厳でヒロイックなマーチによるエンドタイトルで締めくくる。このエンドタイトルでの格調高いマーチは、ゴールドスミスが自作自演コンサートでも好んで演奏した曲で、感動的な名曲。
ジェリー・ゴールドスミスは1968年の「猿の惑星」、1970年の「パットン大戦車軍団」、1973年の「パピヨン」、1978年の「(未公開)ブラジルから来た少年」と、シャフナー監督作品で4度オスカーにノミネートされており、この2人は監督と作曲家のベスト・コラボレーションの一例だった。
この映画の製作当時にロス・アンジェルスに留学していた私は、UCLAで開催されたジェリー・ゴールドスミスによる公開講義に出席し、完成したばかりのこの映画の試写を見た後で、ゴールドスミスと監督のフランクリン・J・シャフナーによるティーチ・インを聴講した(司会はブルース・ブロートンだった)。随分昔の話になるが、映画、スコア、そしてゴールドスミスとシャフナーの温かい対話が強く印象に残っており、個人的にも思い出深い作品。
各CDの収録曲は以下の通り。
●1987年CD(第一集)Varese
Sarabande VCD / 47282
1. The Ceremony (02:42)
2. Falled Knight (03:18)
3. Robert and Blanche (03:49)
4. Children in Bondage (05:02)
5. The Banner (05:58)
6. The Lake (03:37)
7. Mathilda (05:57)
8. The Wrong Flag (03:16)
9. King Richard (08:34)
Total Duration: 00:42:13
●1987年CD(第二集)Varese
Sarabande VCD / 47288
1. The Castle (01:26)
2. The Circus (03:07)
3. Gates of Paris (02:09)
4. The Plague (05:33)
5. Final Fight (03:13)
6. The Road from Paris (02:04)
7. The Dress (02:23)
8. Forest Hunt (07:45)
9. Paris Underground (04:09)
10. Bring Him Back (02:39)
11. The Future (05:45)
Total Duration: 00:40:13
●1994年CD(ダイジェスト盤)Varese Sarabande / VSD-5484
1. The Ceremony (02:42)
2. Failed Knight (03:18)
3. The Circus (03:07)
4. Robert and Blanche (03:49)
5. Children in Bondage (05:02)
6. The Road from Paris (02:04)
7. The Lake (03:37)
8. The Banner (05:58)
9. The Castle (01:26)
10. Mathilda (05:57)
11. The Wrong Flag (03:16)
12. The Dress (02:23)
13. Forest Hunt (07:45)
14. Final Fight (03:13)
15. King Richard (08:34)
Total Duration: 01:02:11
●2021年CD(The Deluxe
Edition)Varese Sarabande / VCL 0421 1213
Disc 1
1. The Castle (1:26)
2. The Ceremony (2:49)
3. Bring Him Back (2:39)
4. Failed Knight (3:21)
5. The Circus (3:07)
6. Robert and Blanche (3:49)
7. Bondage (1:51)
8. Black Prince (1:55)
Disc 2
1. Children in Bondage (5:02)
2. The Future (1:58)
3. Gates of Paris (2:09)
4. Paris Underground (4:09)
5. The Road from Paris (2:04)
6. The Banner / The New Court (5:58)
7. The Dress (2:23)
8. Mathilda (5:57)
9. The Plague (5:33)
10. Forest Hunt (7:45)
11. The Lake (3:37)
12. The Wrong Flag (3:16)
13. Final Fight (3:14)
14. King Richard / End Title (8:36)
Total Duration: 01:22:38
(2021年7月)
Jerry Goldsmith
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