バロッコ BAROCCO
ブロンテ姉妹 LES SOEURS BRONTË

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:カルロ・サヴィーナ
Conducted by CARLO SAVINA

演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra (LES SOEURS BRONTË)

(スペインQuartet Records / QR448)

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「海辺のホテルにて」(1981)「ランデヴー」(1985)「深夜カフェのピエール」(1991)「私の好きな季節」(1992)「野性の葦」(1993)「夜の子供たち」(1996)「溺れゆく女」(1998)「かげろう」(2003)「(未公開)見えない太陽」(2019)等のアンドレ・テシネ監督(1943〜)とフィリップ・サルド(1948〜)とのコラボレーションによる2作品のカップリング。500枚限定プレス。

「バロッコ(BAROCCO)」は、1976年製作のフランス映画(日本公開は1990年11月)。出演はイザベル・アジャーニ、ジェラール・ドパルデュー、マリー=フランス・ピジエ、ジャン=クロード・ブリアリー、ジュリアン・ギオマール、エレーヌ・シュルジェール、ジャン=フランソワ・ステヴナン、ピーター・ボンケ、レニー・サック、エリーズ・フーマンス、フランス・ヴォーストマン、ヘルマート・ウデンベルグ、エイドリアン・ブライン、デレク・デ・リント、クロード・ブラッスール他。脚本はアンドレ・テシネとマリリン・ゴールディン。撮影は「ブルベイカー」(1980)「フォート・サガン」(1984)「愛と宿命の泉」(1986)等の撮影を担当し「カミーユ・クローデル」(1988)等の監督も手がけているブリューノ・ニュイッテン(1945〜)。選挙戦さなかのアムステルダムで、ボクサーのサムソン(ドパルデュー)は、有力候補者との(虚偽の)ホモセクシャルな関係をネタにした選挙妨害に加担して巨額の報酬を得るが、彼を追ってきた殺し屋(ドパルデュー、二役)に殺されてしまう。サムソンの恋人ロール(アジャーニ)は、彼を殺した男に徐々に惹かれていくが……。ヒッチコック監督の「めまい」(1958)等に着想を得たスリラー。1976年度セザール賞の助演女優賞(マリー=フランス・ピジエ)、音楽賞、撮影賞を受賞している。

フィリップ・サルドのスコアは、冒頭の「Générique」が静かなイントロに続いて、ビジーでスリリングなタッチの主題とメランコリックな主題が交互に展開するメインタイトル。「La valise」「Vent sur les affiches」「S'en sortir」「Nocturne」は、静かにややメランコリックなタッチの主題。「Romance」は、メランコリックでドラマティックなタッチからビジーでスリリングな主題へ。「Les temps modernes」は、明るく快活なサーカス音楽風の曲。「La radicale」は、陽気なダンスミュージック。「On se voit se voir (Vocal: Marie-France)」は、マリー=フランス(・ガルシア)のヴォーカルによるメランコリックでリリカルなシャンソン(作詞はアンドレ・テシネとジャック・ショーメル)。「Portrait Robot」は、静かにドラマティックなタッチから後半メランコリックな主題へ。「La poursuite」は、ビジーでスリリングなタッチの主題。「Les mers du sud」は、明るく快活なマーチ。「Romance / Mais vous vivez de quoi?」は、静かにややメランコリックな主題にダイアローグがかぶさる曲。「Les mers du sud」は、「On se voit se voir」のインストゥルメンタル版。

オーケストレーションはカルロ・サヴィーナユベール・ロスタン。上述の通り、サルドはこのスコアでセザール賞の音楽賞を受賞している。このスコアは1976年に仏BarclayレーベルからサントラLP(Barclay 930.020)が出ており、1992年にイタリアCAMレーベルから全11曲/20分半収録のCD(CAM 493362-2)が出ていたが、このQuartetレーベルのCDは全14曲を収録。

「ブロンテ姉妹(LES SOEURS BRONTË)」は、1979年製作のフランス映画(日本公開は1988年2月)。出演はイザベル・アジャーニ、マリー=フランス・ピジエ、イザベル・ユペール、パスカル・グレゴリー、パトリック・マギー、エレーヌ・シュルジェール、ローラン・ベルタン、アリス・サプリッチ、グザヴィエ・デプラ、エイドリアン・ブライン、ジュリアン・カリー、レニー・ゴダード、ジャン・ソレル、カトリーヌ・アパノヴィッチ、ピエール・バイヨー他。脚本はアンドレ・テシネ、パスカル・ボニツェールとジャン・グリュオー。撮影はブルーノ・ニュイッテン。イギリスのヴィクトリア時代を代表する小説家シャーロット、エミリー、アンブロンテ姉妹の生涯を描いた伝記映画。ヨークシャー、ソーントンの牧師の子として生まれた姉妹は、3人共同の『詩集』を発表後、それぞれ小説を執筆。シャーロット(1816〜1855)は『ジェーン・エア』(1847)、エミリー(1818〜1848)は『嵐が丘』(1847)、アン(1820〜1849)は『ワイルドフェル屋敷の人々』(1848)を発表し、イギリス文壇に多大な影響を与えた。この映画ではアジャーニがエミリー、ピジエがシャーロット、ユペールがアンを演じている。1979年度カンヌ国際映画祭公式出品作品。

フィリップ・サルドのスコアは、テシネ監督の希望によりドイツの作曲家ロベルト・シューマンのクラシック音楽を編曲したもので、スコア全体が(交響曲風に)6楽章で構成されている。「Les soeurs Brontë - Mouvement 1」は、ヴァイオリン・ソロ、ソプラノをフィーチャーした繊細でドラマティックなタッチの曲。「Les soeurs Brontë - Mouvement 2」は、快活なヴァイオリン・ソロをフィーチャーしたダークでドラマティックな曲。「Les soeurs Brontë - Mouvement 3」は、ジェントルなピアノによる曲。「Les soeurs Brontë - Mouvement 4」は、荘厳なコーラスとヴァイオリン・ソロを織り込んだ曲。「Les soeurs Brontë - Mouvement 5」「Les soeurs Brontë - Mouvement 6」は、ソプラノをフィーチャーしたドラマティックなタッチの曲。オーケストラはロンドン交響楽団。ソプラノはイギリス人のエリザベス・ハーウッド(1938〜1990)、ピアノはオーストラリアのピアニスト、ロジャー・ウッドワード(1942〜)の演奏。

このスコアは公開当時の1979年にフランスのPemaレーベルからダイアローグ入りの約20分のサントラLP(Sofrason Pema 900068)が出ており、1988年にMilanレーベルが出したアンドレ・テシネ監督とサルドのコンピレーションCD(Milan Records CD CH 343)に約7分の組曲が、2004年にUniversalレーベルが出した同様のコンピレーションCD(Universal France 982 461-9)に約4分の組曲が収録されていたが、このQuartetレーベルのCDはダイアローグを除いた全6曲を収録。

尚、上記UniversalレーベルのコンピレーションCD「Le Cinéma d'André Téchiné」には、アンドレ・テシネ監督とフィリップ・サルドとのコラボレーションによる以下作品が収録されている。

バロッコ Barocco
ブロンテ姉妹 Les soeurs Brontë
海辺のホテルにて Hôtel des Amériques
ランデヴー Rendez-Vous
(未公開)夜を殺した女 Le Lieu du Crime
(未公開)Les Innocents
深夜カフェのピエール J'Embrasse Pas
私の好きな季節 Ma Saison Préférée
夜の子供たち Les Voleurs 
溺れゆく女 Alice et Martin
かげろう Les Égarés


(2021年11月)

Philippe Sarde

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