すぎ去りし日の… LES CHOSES DE LA VIE
とまどい NELLY ET MR. ARNAUD

作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE

指揮:ジャン=ミシェル・ドゥファイエ
Conducted by JEAN-MICHEL DEFAYE (LES CHOSES DE LA VIE)

(スペインQuartet Records / QR454)

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「すぎ去りし日の…」(1970)「(未公開)はめる/狙われた獲物」(1971)「夕なぎ」(1972)「友情」(1974)「(未公開)MADO」(1976)「ありふれた愛のストーリー」(1978)「(未公開)UN MAUVAIS FILS」(1980)「ギャルソン!」(1983)「僕と一緒に幾日か」(1988)「愛を弾く女」(1992)「とまどい」(1995)の11作品で組んでいるクロード・ソーテ監督(1924〜2000)とフィリップ・サルド(1948〜)の、最初と最後のコラボレーション作品のスコアをカップリングにしたCD。2人が初めて出会ったのは1968年で、ソーテが44歳、サルドが20歳の時だった。

「すぎ去りし日の…(LES CHOSES DE LA VIE)」は、1970年製作のフランス=イタリア=スイス合作映画(英語題名は「THE THINGS OF LIFE」/日本公開は1971年10月)。出演はミシェル・ピッコリ、ロミー・シュナイダー、レア・マッサリ、ジェラール・ラルティゴ、ジャン・ブイーズ、ボビー・ラポワンテ、エルヴェ・サンド、ジャック・リシャール、ベティ・ベッカーズ、ドニミク・ザルディ、ガブリエル・ドゥーセット、ロジェ・クルゼ、アンリ・ナシエ、クロード・コンフォルト、ジェリー・ブルエ他。ポール・ギマールの原作を基にクロード・ソーテ、ポール・ギマールとジャン=ルー・ダバディが脚本を執筆。撮影はジャン・ボフェティ。

自動車事故を起こした道路技師のピエール・ベラール(ピッコリ)が、その人生を走馬灯のように回想する形でドラマが展開する。彼は妻カトリーヌ(マッサリ)と別居し、弁護士である愛人エレーヌ(シュナイダー)とパリのアパートで同棲していた。エレーヌは2人でチュニスに移住することを楽しみにしていたが、カトリーヌとの間の息子ベルトラン(ラルティゴ)に会ってきたピエールは、チュニス行きを延期して家族と夏のヴァカンスを過ごしたいと言い出す。2人は口論になり、ピエールはエレーヌをアパートに帰らせ、再び家族のもとへ車を走らせた。途中のレストランで、ピエールはエレーヌ宛に別れの手紙を書く。しかし手紙を出そうとして、やはりエレーヌを愛していると悟る。エレーヌに電話をするが、不在だったのでメッセージを残す。エレーヌのもとへと車を猛スピードで走らせたピエールは、交差点でエンストを起こして立往生しているトラックを見つけ、慌ててブレーキを踏むが……。1970年度カンヌ国際映画祭の公式コンペティション出品作品。「わかれ路(INTERSECTION)」(1994/監督:マーク・ライデル、出演:リチャード・ギア、シャロン・ストーン、ロリータ・ダヴィドヴィッチ)としてリメイクされている。

フィリップ・サルド「(未公開)Sortie de secours」(1970)に続くキャリアの2作目として22歳の時に作曲したスコア。冒頭の「La chanson d'Hélène (Vocal)」は、ロミー・シュナイダーのヴォーカルにミシェル・ピッコリのモノローグが重なる主題歌。この上なく切なく美しい主題で、サルドの全作品中でも最もリリカルな曲の1つ(劇中では流れない)。作詞はジャン=ルー・ダバディ。「La chanson d'Hélène (Instrumental)」は、ややダークなタッチのイントロからピアノとストリングスによるメインの主題へ。「Générique」は、静かにドラマティックな短いメインタイトル。「Pierre et Hélène」「La Rochelle」「L'isolement」「Les choses de la vie」は、メインの主題のバリエーション。「Soirée (Mozart)」は、モーツァルト作曲のクラシック音楽。「Prélude à l'accident」「Vision de la noce et cauchemar」は、バロック調の主題からサスペンス調へ。「L'accident ralentí」は、エンジンの始動とタイヤのスキッド音のSEで始まり、ダークで陰鬱なタッチの主題へ展開。後半カー・クラッシュのSEが入る。「La mort」は、ドラマティックなイントロからクラシック調の主題へ。「Les choses de la vie (Final)」は、メインの主題のピアノの演奏によるフィナーレ。「La chanson d'Hélène (Vocal - Italian version)」は、イタリア語のヴォーカル/モノローグによる主題歌。「Les choses de la vie (Suite)」は、ダークで重厚なイントロからメインの主題、ダイナミックなサスペンス調へと展開する6分半ほどの組曲。「La chanson d'Hélène (Vocal - German Version)」は、ドイツ語のヴォーカル/モノローグによる主題歌。オーケストレーションと指揮はジャン=ミシェル・ドゥファイエ。ピアノの演奏はフィリップ・サルド。

このスコアは公開当時にフランスのPhilipsレーベルから全11曲収録のサントラLP(Philips 6311021)が出ており、その後1988年に日本のSLCレーベルから全13曲/約25分収録のCD(SLCD-1004)、1992年にイタリアのCAMレーベルから同内容のCD(CAM CSE 054)等、何度かCDがリリースされているが、このQuartetレーベルのCDには全16曲を収録。

「とまどい(NELLY ET MR. ARNAUD)」は、1995製作のフランス=イタリア=ドイツ合作映画(日本公開は1996年4月)。出演はエマニュエル・ベアール、ミシェル・セロー、ジャン=ユーグ・アングラード、クレア・ナデュー、フランソワーズ・ブリオン、ミシェル・ラロック、マイケル・ロンズデール、シャルル・ベルラン、ジャン=ピエール・ロリ、ミシェル・アルベルティーニ、コラリー・ザオネロ、グラズィエラ・デレルム、オリヴィエ・パジョ、アクレサンドル・シャピュイ、カリーヌ・フォヴィオ他。脚本はクロード・ソーテ、ジャック・フィエスキとイヴ・ウルマン。撮影はジャン=フランソワ・ロバン。

ネリー(ベアール)の夫ジェローム(ベルラン)は失業中で、彼女がパートで家計を支えていた。親友ジャクリーヌ(ナデュー)から初老の紳士ピエール・アルノー(セロー)を紹介され、アルノーはネリーが滞納した家賃分の金を融通しようと言う。ネリーは夫と別れる決心をし、自叙伝を執筆中のアルノーのためにワープロ入力の仕事を始める。一方、アルノーの編集者ヴァンサン・グラネク(アングラード)は、ネリーに出会って即座に彼女に惹かれるが……。1995年度セザール賞の13部門にノミネートされ、監督賞と主演男優賞(ミシェル・セロー)を受賞している。監督のクロード・ソーテは、過去にカフェで初老の紳士が家族には見えない若い女性に小切手を渡しているのを見て、このストーリーを思いついたという。

フィリップ・サルドのスコアは約12分の組曲「NELLY ET MR. ARNAUD (Suite)」を収録。非常にリッチで情感豊かなオーケストラルスコアで、ドラマティックかつスリリングなタッチが鮮烈で素晴らしい。サルドにしか書けない音楽だろう。この映画のためにサルドが作曲したスコアはこれが全て(過去にリリースされた下記コンピレーションCDにも約5分半の組曲が収録されていたが、今回完全な形で初収録された)。オーケストレーションはユベール・ブーゴワ。

尚、2002年に仏UniversalレーベルがリリースしたコンピレーションCD「Le Cinéma de Claude Sautet」(Universal France 013 061-2)には、クロード・ソーテ監督とフィリップ・サルドとのコラボレーションによる以下作品が収録されている。

すぎ去りし日の… Les choses de la vie
(未公開)はめる/狙われた獲物 Max et les ferrailleurs
夕なぎ César et Rosalie
友情 Vincent, François, Paul... et les autres
(未公開)Mado
ありふれた愛のストーリー Une histoire simple
(未公開)Un mauvais fils
ギャルソン! Garçon!
僕と一緒に幾日か Quelques jours avec moi
愛を弾く女 Un coeur en hiver
とまどい Nelly et Monsieur Arnaud


(2021年12月)

Philippe Sarde

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