(未公開/TV)WEBS AND OTHER WONDERS
作曲:ジョン・スコット
Composed by JOHN SCOTT
(米Dragon's Domain Records / DDR726)
1985年製作のイギリスのドキュメンタリー番組(オックスフォード・サイエンティフィック・フィルムズが製作し、1985年5月19日にアングリア・テレビジョンが放送)。様々な蜘蛛の生態を描いた自然ドキュメンタリーで、製作・監督・ナレーションはイギリスの動物学者マルコム・J・ペニー。
音楽を作曲したジョン・スコット(1930〜)は、1970年代にイギリスの霊長類学者で国連平和大使のジェーン・グドール(1934〜)によるドキュメンタリー作品のスコアを手がけており、その内の1本「(未公開/TV)THE
WILD DOGS OF AFRICA」(1973/監督は当時のグドールの夫であるラービック男爵)で、彼にとって初のエミー賞を受賞している。同時期にイギリスのドキュメンタリー映画製作会社オックスフォード・サイエンティフィック・フィルムズが自然ドキュメンタリーを製作しており、グドール作品のプロデューサーの1人で「野生のエルザ」(1965)「ラムの大通り」(1971)等に出演した俳優のビル・トラヴァース(1922〜1994)が、オックスフォード社にスコットを推薦したという。ちょうどその頃、スコットはロンドンに電子楽器のスタジオを自ら設立したところで、全く費用をかけずにスコアを提供することができた。スコットはオックスフォード社が製作した4本のドキュメンタリー番組「(未公開/TV)SEXUAL
ENCOUNTERS OF THE FLORAL KIND」「(未公開/TV)DRIFTERS」「(未公開/TV)BUGS」「(未公開/TV)WEBS AND
OTHER WONDERS」のスコアを手がけている。
ジョン・スコットが「(未公開/TV)WEBS
AND OTHER WONDERS」に作曲したスコアは、上述の通り全編がシンセサイザーによる演奏で、冒頭の「Webs
and Other Wonders」は、グレゴリオ聖歌の『怒りの日(Dies irae)』の旋律を引用したメランコリックなタッチの曲。この『怒りの日』は「死」を表す旋律として多くのクラシック音楽や映画音楽に引用されているが、クラシックではベルリオーズの「幻想交響曲」(1830)第5楽章やリストの「死の舞踏」(1849)、映画音楽では「シャイニング」(1980)のメインタイトルが有名。「Crab
Spider」「Net Casting Spider」も『怒りの日』の引用による曲。「Male Pursuer Offers
Prey」「Lace Web Spider」「Garden Spider」は、静かに幻想的なタッチの曲。「Female
Pursuer Lays Eggs」は、静かにドラマティックな曲。「Lenethia and Blackbird」「Bolas
Spider」は、明るく快活なタッチの曲。「Black Widow and Scorpion」は、黒後家蜘蛛とサソリの死闘を描写したミリタリスティックでサスペンスフルなタッチの曲。「Robber
Spider」は、ダークで不吉なタッチ。「Lucky Bugs」は、ラグタイム調の軽妙なタッチの曲。「Closing
Credits」は、『怒りの日』の引用によるクロージング曲。
このスコアの初リリースで、500枚限定プレス。
(2021年12月)
John Scott
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