レジェンド/光と闇の伝説 LEGEND
作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH
演奏:ナショナル・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by the National Philharmonic Orchestra
(仏Music Box Records /
MBR-199)
1985年製作のアメリカ=イギリス合作映画(日本公開は1987年8月)。監督は「オデッセイ」(2015)「エイリアン:コヴェナント」(2017)「ゲティ家の身代金」(2017)「最後の決闘裁判」(2021)「ハウス・オブ・グッチ」(2021)等のリドリー・スコット(1937〜)。出演はトム・クルーズ、ミア・サラ、ティム・カリー、デヴィッド・ベネント、アリス・プレイトン、ビリー・バーティ、コーク・ハバート、ピーター・オファレル、キラン・シャー、アナベル・ラニヨン、ロバート・ピカード、ティナ・マーティン、イアン・ロングマー、マイケル・クレイン他。脚本は「ランナウェイ」(1977)「(未公開)クラッシュ・ボーイ」(1980)等の脚本や「エンゼル・ハート」(1987)の原作を手がけたウィリアム・ヒョーツバーグ(1941〜2017)。撮影はアレックス・トムソン。VFXはロブ・ボッティン。闇の魔王に捕えられた王女を救出しようとするヒーローを描くファンタジー。
夜の闇を支配し地球を暗黒化しようとする闇の魔王(カリー)は、その野望を邪魔するユニコーンの角を取ってこいと、ゴブリンのブリックス(プレイトン)に命じた。王女リリー(サラ)は、野性の青年ジャック(クルーズ)に会いに森へと入り、ジャックは彼女にユニコーン2頭を見せる。リリーがユニコーンに触れたとき、ブリックスがその1頭に毒のついた吹き矢を刺し、驚いたユニコーンは走り去ってしまう。ジャックはユニコーンに触ったリリーに怒るが、彼女が指輪を池に投げ、それを取ってきた男と結婚するというので、ジャックは池に飛び込んで指輪を見つけようとする。一方、ブリックスは毒で弱ったユニコーンから魔法の角を切り取り、世界は突然厳しい冬に転じてしまった。リリーと離ればなれになったジャックは、妖精ガンプ(ベネント)やブラウン・トム(ハバート)、スクリューボール(バーティ)らの仲間とともに、リリー救出に出発した……。ロブ・ボッティンとピーター・ロブ=キングが1986年度アカデミー賞のメイクアップ賞にノミネートされている。製作費は約2450万ドル、全世界興行収入は約1550万ドル。
音楽は「エイリアン」(1979)でもリドリー・スコット監督と組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)が作曲しているが、アメリカ公開時にはスタジオ側の判断で、より若年層にアピールするためにタンジェリン・ドリームによるスコアに差し替えられた(欧州公開版ではジェリーのスコアが使用された)。
ゴールドスミスのスコアは、1986年にドイツのFilmtraxレーベル(Filmtrax UP-ART
86002)、1987年に日本のVictorレーベル(Victor VDP
1269)が全10曲/約46分収録のサントラCDを出しており、その後1992年にイギリスのSilva
Screenレーベルが全14曲/約71分収録のCD(Silva Screen FILMCD 045)を出しているが、Music
Boxレーベルが2021年10月にリリースしたこのCDは2枚組となっており、1枚目にスコアの拡張版(16曲)、2枚目にリマスターされた1986年盤の内容とボーナストラック2曲を収録(全28曲/約127分)。2000枚限定プレス。
CD1枚目の冒頭「Main Title / The Goblins」は、シンセサイザーを織り込んだ幻想的なタッチのメインタイトルから、ややおどけたタッチのゴブリンの主題、コーラス織り込んだ大らかなユニコーンの主題へと展開。「My
True Love's Eyes / The Cottage」は、女声ヴォーカルによるジェントルなリリーのララバイ。「The
Unicorns」は、躍動的なタッチのジャックの主題から大らかなユニコーンの主題、ジェントルな主題等がカラフルに展開する曲。「Living
River / Bumps and Hollows / The Freeze」は、女声ヴォーカルによるジェントルな主題、ダイナミックなサスペンスアクション音楽、コーラスをフィーチャーしたドラマティックなサスペンス音楽へと展開。「Darkness
Arisen」は、コーラスをフィーチャーしたダークで不気味なタッチの闇の魔王の主題(劇中では使用されなかった)。「The
Fairies / The Riddle」は、抑制されたサスペンス調からジェントルで快活なタッチの主題へ。「Sing the
Wee」は、男声コーラスによる躍動的な妖精たちの主題。「Playmates」は、ダイナミックでビジーなアクション音楽。「Forgive
Me」は、ミステリアスなタッチから大らかな主題へ。「Faerie Dance」は、明るく快活な曲。「The
Armour」は、抑制されたサスペンス音楽。「Oona / The Jewels」は、躍動的なタッチから大らかな主題へ。「The
Dress Waltz」は、コーラスをフィーチャーしたジェントルで快活なワルツで、この曲は事前に作曲・録音されてダンス・シーンの撮影時にプレイバックされた。「Darkness
Fails」は、ミステリアスなタッチから後半ダイナミックなサスペンス音楽へ。「The Ring」は、ドラマティックなサスペンス音楽から、大らかなユニコーンの主題が壮大に盛り上がる。「Reunited」は、女声ヴォーカルによるジェントルなリリーのララバイから、同じ主題がオーケストラで演奏され、大らかなユニコーンの主題が壮大に盛り上がり、男声コーラスによる躍動的な妖精の主題に女声コーラスの快活な主題が重なるフィナーレ。名曲。オーケストラとコーラスにシンセサイザーを加えた極めてドラマティックで美しいファンタジー・スコアで、ナショナル・フィルの流麗な演奏も素晴らしい。
ジェリー・ゴールドスミスが「エイリアン」でリドリー・スコット監督と初めて組んだ際には、監督からのインプットがほとんどない状態でスコアを作曲したため、元々テンプ・トラックとして付けられていたゴールドスミス作曲の「フロイド/隠された欲望(Freud)」(1962)の音楽がそのまま使われ、彼が新たに作曲したスコアは全く使われないか、別のシーンに付け替えられたりしたため、彼にとっては最悪の経験になったという。この「レジェンド/光と闇の伝説」の際は、同じ失敗を繰り返さないように初期の段階からスコットと打合せながらスコアを作曲したらしいが、それでも一部の音楽はゴールドスミスが「サイコ2(Psycho
II)」(1983)に作曲したスコアに差し替えられたりした。ゴールドスミス自身は、その時点での自らのベスト・スコアだと考えていたため、上述の通りアメリカ公開時に別のスコアに差し替えられてしまったことで大いに失望したという。
(2022年1月)
Jerry Goldsmith
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