ジョン・ウィリアムス ライヴ・イン・ベルリン JOHN WILLIAMS THE BERLIN CONCERT
作曲・指揮:ジョン・ウィリアムス
Composed and Conducted by JOHN WILLIAMS
演奏:ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
Performed by Berliner Philharmoniker
(Universal Music / UCCG-40131)
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ジョン・ウィリアムス(1932〜)が、2020年1月のウィーン・フィルに引き続き、2021年10月14〜16日にクラシック音楽の名門オーケストラであるベルリン・フィルを指揮して自作の映画音楽を演奏したコンサートのライヴ録音盤。今回もCD、CDとBlu-ray、UHQ-CD/MQAとBlu-rayといった複数のバージョンが出ている。ウィリアムスの90歳の誕生日(2022年2月8日)に合わせてリリースされたもの。
収録曲は以下の通り。
CD 1
1. オリンピック・ファンファーレとテーマ Olympic
Fanfare and Theme*
2.
「未知との遭遇」から抜粋 Excerpts from "Close Encounters of the Third Kind"
3. 「遥かなる大地へ」組曲 Suite from "Far and Away"*
4. 「ハリー・ポッターと賢者の石」から ヘドウィグのテーマ Hedwig's Theme from
"Harry Potter and the Philosopher's Stone"*
5. 「ハリー・ポッターと賢者の石」から ニンバス2000 Nimbus 2000 from "Harry
Potter and the Philosopher's Stone"*
6. 「ハリー・ポッターと賢者の石」から ハリーの不思議な世界 Harry's Wondrous World
from "Harry Potter and the Philosopher's Stone"*
7. 「ジュラシック・パーク」のテーマ Theme from "Jurassic Park"
8. スーパーマン・マーチ Superman March from "Superman"*
CD 2
1. 「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」から
オートバイとオーケストラのスケルツォ Scherzo for Motorcycle and Orchestra from "Indiana Jones and
the Last Crusade"*
2.
「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」から マリオンのテーマ Marion's Theme from "Raiders of the Lost Ark"
3. 「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」から レイダース・マーチ Raiders March from
"Raiders of the Lost Ark"
4. チェロとオーケストラのためのエレジー Elegy for Cello and Orchestra*
5. 「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」から ハン・ソロの冒険 The Adventures of
Han from "Solo: A Star Wars Story"*
6. 「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」から ヨーダのテーマ Yoda's Theme from
"Star Wars: The Empire Strikes Back"*
7. 「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」から 王座の間とエンドタイトル Throne Room
& Finale from "Star Wars: A New Hope"*
8. 「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」から 王女レイアのテーマ Princess
Leia's Theme from "Star Wars: A New Hope"*
9. 「E.T.」から フライング・テーマ Flying Theme from "E.T. the
Extra-Terrestrial"
10.
「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」から 帝国のマーチ The Imperial March from "Star Wars: The Empire
Strikes Back"
*「ライヴ・イン・ウィーン」未収録曲
Blu-ray盤のコンサート映像では、ジョン・ウィリアムスがステージに登場すると観客が立ち上がって拍手を送る。この年齢(ライヴ時点で89歳)で自作を指揮することへの称賛も含まれた拍手だと思うが、さすがに歩き方がちょっと弱々しい。だが、指揮台に立ってオープニング曲の「オリンピック・ファンファーレとテーマ」を指揮しはじめると、シャキッとするところはさすが。93歳まで演奏会での指揮を続けたレオポルド・ストコフスキーや朝比奈隆の例もあるので、ウィリアムスにもまだまだ頑張ってもらいたい。
「オリンピック・ファンファーレとテーマ」は、1984年のロス・アンジェルス・オリンピックのためにウィリアムスが作曲した曲で、ベルリン・フィルのブラスのクリスプな響きが心地よい。これ以降、1曲の演奏が終わるたびに、観客はスタンディング・オベーションを送る。
「未知との遭遇」からの抜粋は、映画公開当時にズービン・メータ指揮ロス・アンジェルス・フィルの演奏用にウィリアムスが編曲した組曲をベースにしたもので、前衛的なタッチから、後半ドラマティックかつ壮大に盛り上がる。
この後、ウィリアムスがマイクを取り、ベルリン・フィルに招かれたことへの謝意を述べる(ベルリンの街を訪れたこと自体が初めてだったと)。
「遥かなる大地へ」からは、リリカルな「County Galway, June 1892」、快活な舞踏音楽調の「The
Fighting Donnellys」、大らかで希望に満ちたメインの主題「Joseph and Shannon」、ダイナミックで躍動的な「Blowing Off
Steam」と展開する組曲が演奏される。
「ハリー・ポッターと賢者の石」からは、チェレスタのソロからオーケストラへと展開する「ヘドウィグのテーマ」、木管楽器のみの演奏による軽快なタッチの「ニンバス2000」、主人公たちの友情を描いた明るく快活でジェントルな「ハリーの不思議な世界」の3曲が演奏されるが、この辺りになるとウィリアムスの指揮も調子づいてきている。
「ジュラシック・パーク」のテーマは、荘厳な主題からヒロイックなファンファーレによる主題へと展開するが、ベルリン・フィルの演奏テクニックが際立つ曲。
「スーパーマン・マーチ」の端正かつパワフルな演奏も見事。
続いてウィリアムスが「インディ・ジョーンズ」シリーズの曲を演奏すると紹介。現在ハリソン・フォードが5作目を撮影中で、自分もベルリンからロス・アンジェルスに戻ったら、その新作のスコアを作曲し始めると明かし、観客から歓声が上がる。
「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」から、躍動的でダイナミックな「オートバイとオーケストラのスケルツォ」が演奏されるが、劇中ではバイクのSEがうるさすぎて音楽がほとんど聞こえなかったので、ここで映画なしで演奏できるのは光栄とのウィリアムスのコメント。
「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」からは、ロマンティックな「マリオンのテーマ」と「レイダース・マーチ」が演奏されるが、このマーチもやはり端正な演奏(中盤にマリオンの主題が入るバージョン)。
続く「チェロとオーケストラのためのエレジー」は、1997年にウィリアムスの知人の女性ヴァイオリニストが幼い2人の子供を亡くし、その葬儀のために作曲したチェロとピアノのためのエレジーが原曲で、「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の「Regaining
a
Son」の主題が採られている。ウィリアムス自身の希望により外部から招いたソリストではなく、ベルリン・フィルの首席チェロ奏者であるブリューノ・ドルプレーが起用されており、感動的で心のこもったチェロ・ソロを披露している。エレジーだが、悲壮感はなくむしろ希望を感じさせる真摯でドラマティックな曲(葬儀だから悲しい曲、という発想ではない)。
この後、「スター・ウォーズ」関連の曲が3曲続く。
「ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー」の「ハン・ソロの冒険」は、ブラスを効かせた躍動的でダイナミックなタッチで、この映画のスコア中、唯一ウィリアムスが作曲した曲(スコア全体はジョン・パウエルが作曲)。
「スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲」からは、チェロとフルートのソロが印象的な「ヨーダのテーマ」。
「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」の「王座の間とエンドタイトル」は、上記ズービン・メータ指揮ロス・アンジェルス・フィルの組曲用のアレンジで、荘厳なマーチ部分のストリングスによる流麗なタッチ等、熱のこもった演奏が素晴らしい。この栄光に満ちたエンドタイトルは、ウィリアムスが40年以上にわたってこのシリーズに作曲した数多い曲の中でもベストの1つだろう。
ここで一旦ウィリアムスは舞台の袖に引っ込むが、すぐに戻ってきて、「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」の「王女レイアのテーマ」を演奏。ここで「ルークとレイアは兄妹と知らなかったので、2人のラヴ・テーマとして作曲した」という、いつものエピソードを披露。
更に「E.T.」の「フライング・テーマ」を演奏して、また舞台の袖に引っ込むが、またすぐに戻ってきて、コンサートでのアンコールの定番となっている「スター・ウォーズ
エピソード5/帝国の逆襲」の「帝国のマーチ」を演奏。「スーパーマン・マーチ」や「レイダース・マーチ」でもそうだが、ベルリン・フィルの観客は上品で、マーチに合わせて手拍子したりしないが、この「帝国のマーチ」の演奏が始まった時だけは思わず歓声が上がった。
ベルリン・フィルがジョン・ウィリアムスを招聘した理由の1つとして、彼の作品が同オーケストラのレパートリーの核である後期ロマン派(ワーグナーやリヒャルト・シュトラウス)の音楽スタイルに基づいているから、という点が興味深い。ベルリン・フィルの奏者たちも実に楽しそうに演奏しており、演奏中に時折視線を交わして微笑み合う光景が印象的だった。
尚、2022年夏には、ウィリアムス作曲のヴァイオリン協奏曲第2番のアルバムがリリースされる予定となっており、これはアンネ=ゾフィー・ムターがウィリアムスに作曲を委嘱したもので、ウィリアムス指揮ボストン交響楽団、ムターのソロにより2021年7月に初演されたもの。
(2022年2月)
John Williams
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