ゴヤの名画と優しい泥棒 THE DUKE
作曲・指揮:ジョージ・フェントン
Composed and Conducted by GEORGE FENTON
(スペインQuartet Records / QR478)
2020年製作のイギリス映画(日本公開は2022年2月)。監督は「ノッティングヒルの恋人」(1999)「チェンジング・レーン」(2002)「恋とニュースのつくり方」(2010)「ウィークエンドはパリで」(2013)「エリザベス
女王陛下の微笑み」(2021)等のロジャー・ミッシェル(1956〜2021)で、これは2021年9月に他界した彼の最後の劇映画監督作品。出演はジム・ブロードベント、ヘレン・ミレン、フィオン・ホワイトヘッド、アンナ・マックスウェル・マーティン、マシュー・グード、ジャック・バンデイラ、エイミー・ケリー、シャーロット・スペンサー、ジェームズ・ウィルビー、ジョン・ヘファーナン、マイケル・ホジソン、アンドリュー・ハヴィル、クリフ・バーネット、ヴァル・マクレイン、チャールズ・エドワーズ他。脚本はリチャード・ビーンとクライヴ・コールマン。撮影はマイク・エリー。
1961年のイギリス。60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン(ブロードベント)は、理想主義の楽天家で仕事が長続きせず、家計はもっぱら妻ドロシー(ミレン)の稼ぎに頼っていた。孤独な高齢者のために公共放送BBCの受信料無料化を求める活動に熱心に取り組んでいたケンプトンは、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから盗み出したゴヤの名画「ウェリントン公爵」を人質に、高齢者の受信料を無料にするよう政府に要求するのだったが……。全世界興行収入は約1221万ドル。製作総指揮に名前を連ねているクリストファー・バントンは、ケンプトン・バントンの孫で、祖父の実話である本作の企画を映画会社に持ち込んだ。イギリスでは2000年以降、75歳以上の高齢者の受信料支払いが免除されている。
音楽は「ガンジー」(1982)「狼の血族」(1984)「遠い夜明け」(1987)「永遠の愛に生きて」(1993)「アンナと王様」(1999)「ディープ・ブルー」(2003)「アース」(2007)「(TV)フローズン
プラネット」(2011〜2012)「スノー・ロワイヤル」(2019)等のイギリスの作曲家ジョージ・フェントン(1950〜)。「The
Duke: Opening Credits」は、ダイナミックなビックバンド・ジャズによるオープニング。「Kempton
Burton and the Heist」は、トランペット・ソロをフィーチャーしたややコミカルなタッチから、後半リズミックなジャズ・ベースのサスペンス音楽へ。「Marion」「Marion
(Interlude)」は、ピアノをフィーチャーした静かにメランコリックな曲。「No Clues Yet」「Jackie's
Story」は、ジャズ・ベースのサスペンス音楽。「Dorothy Remembers」は、ピアノによるメランコリックな主題を織り込んだ抑制されたサスペンス音楽。「Kempton's
Place」は、ビックバンド・ジャズ。「The Goya's Returned」は、ややコミカルなタッチな曲。「The
Boatshed」「Jury's Out」「The Verdict」は、ピアノをフィーチャーしたジェントルでリリカルな曲。「The
Resolution」は、ピアノとストリングスによる静かにメランコリックな曲。「The Gallery
(Jerusalem)」は、サー・チャールズ・ヒューバート・H・パリー(1848〜1918)作曲の荘厳でドラマティックな聖歌『エルサレム』。「The
Duke Theme」は、ビックバンド・ジャズによるメインの主題のリプライズ。
1960年代を描写したややノスタルジックなタッチのジャズと、ピアノとストリングスによる優しい主題が印象的なスコア。オーケストレーションはジョージ・フェントンとジュリアン・カーショー。クラリネットはハワード・マッギル。サックスはニック・モス、ジェイミー・タルボット、フィル・トッド、ミック・フォスター。トランペットはマイク・ロヴァット、パット・ホワイト、アンドリュー・ギャザーコール。トロンボーンはマーク・ナイティンゲール、アンディ・ウッド、デイヴ・ステュワート。チューバはオーウェン・スレイド。ギターはジョン・パリセリ。ピアノはサイモン・チェンバーレイン。ドラムスはイアン・トーマス。ベースはクリス・ローレンス。
(2022年6月)
George Fenton
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