(未公開)片目のシェリフ BLACK PATCH
(未公開)ザ・マン/大統領の椅子 THE MAN

作曲:ジェリー・ゴールドスミス
Composed by JERRY GOLDSMITH

指揮:ウィリアム・T・ストロンバーグ
Conducted by WILLIAM T. STROMBERG

演奏:ロイヤル・スコティッシュ・ナショナル管弦楽団
Performed by Royal Scottish National Orchestra

(米Intrada / INT 7168)

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ジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)のフィルモグラフィー中でもオリジナル音源が紛失しており、サントラ盤が発売されていなかった2作品のスコアを、リー・フィリップスがリコンストラクトし、2021年10月に新録音されたもので、Kickstarterによるクラウドファンディングにより実現したプロジェクト。

「(未公開)片目のシェリフ(BLACK PATCH)」は、1957年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でテレビ放映済)。製作・監督は、「インディアン峠の死闘」(1957)「(TV)ローレス・イヤーズ」(1959)「青春の海」(1968)等のアレン・H・マイナー(1917〜2004)。出演はジョージ・モンゴメリー、ダイアン・ブリュースター、トム・ピットマン、レオ・ゴードン、ハウス・ピータース・Jr、ホルヘ・トレヴィーニョ、リン・カートライト、ピーター・ブロッコ、テッド・ジャック、ストローザー・マーティン、ギルマン・ランキン、ネッド・グラス、ジョン・オマリー、セバスチャン・キャボット、ジョン・ミッチャム他。脚本は、本作に出演もしているレオ・ゴードン。撮影はエドワード・コールマン。南北戦争で片目を失くし黒いアイパッチをつけていることから“ブラック・パッチ”と呼ばれる保安官クレイ・モーガン(モンゴメリー)が保安官を務めるニュー・メキシコの町に、彼の戦友のハンク・ダナー(ゴードン)が妻のヘレン(ブリュースター)とやって来る。ダナーは銀行強盗で追われており、モーガンは彼を逮捕しなければならなかった……。

これはジェリー・ゴールドスミスが最初に手がけた劇場映画のスコア。「Prologue」は、ヒロイックなファンファーレのイントロから、抑制されたタッチ、サスペンス調へと展開するプロローグ。「Player Piano (Main Titles)」は、明るく快活なサルーン・ピアノによるメインタイトル。「Carl Meets Helen」「Welcome Home」は、ジェントルなタッチの曲。「Clay Meets Helen」「The Gift」「Mixed Emotions」「Love Reunited」は、静かにドラマティックな曲。「Hank Gives Up」「Lock Up」は、ドラマティックなサスペンス音楽。「The Fight」は、ダイナミックなアクション音楽。「The Discovery」「Town Gossip」「The Gun」は、抑制されたサスペンス音楽。「Carl's Love」は、ジェントルでリリカルな曲。「Tough Guy」「The Showdown」「The Duel」は、ダイナミックなサスペンス音楽。「Finale (Extended Version)」は、ヒロイックな主題によるフィナーレ(拡張版)。最後にエクストラとしてフィナーレの映画版「Finale (Film Version)」も収録。トランペットを意図的に除いたオーケストラによる演奏。一番最初の作品から、明確にゴールドスミスの個性が表れている。

「(未公開)ザ・マン/大統領の椅子(THE MAN)」は、1972年製作のアメリカ映画(日本では劇場未公開でテレビ放映済)。監督は「地球爆破作戦」(1970)「(TV)アメリカを震撼させた夜」(1975)「マッカーサー」(1977)等のジョセフ・サージェント(1925〜2014)。出演はジェームズ・アール・ジョーンズ、マーティン・バルサム、バージェス・メレディス、リュー・エアーズ、ウィリアム・ウィンダム、バーバラ・ラッシュ、ゲオルグ・スタンフォード・ブラウン、ジャネット・マクラフラン、マーティン・E・ブルックス、サイモン・スコット、パトリック・ノウルズ、ロバート・ドキ、アン・セイモア、エドワード・フォークナー、ジャック・ベニー他。「非常線」(1953)「B52爆撃隊」(1957)「チャップマン報告」(1962)「逆転」(1963)等のアーヴィング・ウォーレス(1916〜1990)の原作を基に、「(TV)ミステリー・ゾーン」(1959〜1965)「5月の7日間」(1963)「(TV)夜空の大空港」(1966)「猿の惑星」(1968)「(TV)四次元への招待」(1970)等のロッド・サーリング(1924〜1975)が原案と脚本を執筆。撮影はエドワード・C・ロッソン。ビルの倒壊事故で現職のアメリカ合衆国大統領が死亡し、副大統領が高齢と健康問題を理由に大統領就任を辞退したため、上院仮議長のダグラス・ディルマン(アール・ジョーンズ)が史上初の黒人大統領となるが……。バラク・オバマの合衆国大統領就任(2009年1月20日)の37年前の作品。当初はテレビ映画として製作されたが、アメリカでは劇場公開された(出来が良かったから、という説と、物議をかもしそうな題材にスポンサーがビビったから、という説がある)。

ジェリー・ゴールドスミスのスコアは、冒頭の「Douglass Dilman (Main Titles)」が彼の個性がよく出た荘厳なファンファーレによるメインタイトル。「They Want a President」は、静かにジェントルで荘厳な曲。「The Lincoln Memorial」は、重厚かつ荘厳な曲。「The Oval Office」「Let Him Loose」「Protests」は、ダイナミックで重厚なタッチの曲。「An Invisible Man」「Mrs. Blore」は、静かにドラマティックなタッチ。「Fishing」は、抑制されたサスペンス調から後半明るく快活なタッチへ。「Will They Make It?」は、抑制されたサスペンス音楽。「Hail to the Chief and End Credits」は、アメリカで大統領が登壇するときに演奏される「大統領万歳(Hail to the Chief)」に続いて荘厳なファンファーレによるエンドクレジットへ。このスコアはヴァイオリンを除いたオーケストラによる演奏となっている。
(2022年7月)

Jerry Goldsmith

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