(TV)赤と黒 LE ROUGE ET LE NOIR
作曲:フィリップ・サルド
Composed by PHILIPPE SARDE
指揮:デヴィッド・スネル
Conducted by DAVID SNELL
演奏:ロンドン交響楽団
Performed by the London Symphony Orchestra
(仏Music Box Records /
MBR-212)
1997年製作のフランス=イタリア=ドイツ合作のテレビ映画(日本では2001年8月30日と9月6日に前後編に分けてNHK衛星第2で放映済/英語題名は「THE
RED AND THE BLACK」)。監督はジャン=ダニエル・ヴェラーグ(1944〜)。出演はキャロル・ブーケ、キム・ロッシ・ステュアート、ジュディット・ゴドレーシュ、クロード・リッシュ、ベルナール・ヴェルレー、コンスタンツェ・エンゲルブレヒト、フランチェスコ・アクアロッリ、モーリス・ガレル、ルディガー・ヴォグラー、クローディーヌ・オージェ、ピエール・ヴェルニエ、カミーユ・ヴェルハーゲ、アルトゥール・グーイェ、オリヴィエ・シトルック、ジャン・ドゥ・コニック他。19世紀中期フランスの作家スタンダール(1783〜1842)が1830年に発表した小説『赤と黒』(サマセット・モームが「世界十大小説」の1つに挙げている)を基に、「ラ・ブーム」(1980)「スチューデント」(1988)「王妃マルゴ」(1994)「ルーヴルの怪人」(2001)等の脚本や「シェフと素顔と、おいしい時間」(2002)「モンテーニュ通りのカフェ」(2006)「セザンヌと過ごした時間」(2016)等の監督を手がけているダニエル・トンプソン(1942〜)とジャン=ダニエル・ヴェラーグが脚本を執筆。撮影はジェラール・ヴィニュロン。
ブザンソン近くの貧しい製材屋の末息子である野心的な青年ジュリアン・ソレル(ステュアート)は、初めは崇拝するナポレオンのような軍人を目指していたが、王政復古の世の中で聖職者として出世しようと勉学に励んでいた。彼は町長レーナル(ヴェルレー)の子供たちの家庭教師に雇われるが、レーナル夫人のルイーズ(ブーケ)に恋されて不倫の関係となる。そのことが密告により公然の事実となったため、ジュリアンは神父の薦めにより神学校に入る。そこでの優れた評価によりパリのラ・モール侯爵(リッシュ)の秘書に推薦されたジュリアンは、やがて侯爵令嬢のマチルド(ゴドレーシュ)と激しく愛し合うようになる……。タイトルの「赤と黒」は「兵士」と「僧侶」を象徴している。「007/サンダーボール作戦」(1965)でボンドガールのドミノを演じたクローディーヌ・オージェ(1941〜2019)の遺作。キャロル・ブーケも「007/ユア・アイズ・オンリー」(1981)でボンドガールのメリナを演じている。同じ原作が「赤と黒(LE
ROUGE ET LE NOIR)」(1954/監督:クロード・オータン=ララ、出演:ジェラール・フィリップ、ダニエル・ダリュー、アントネッラ・ルアルディ)等、何度も映像化されている。
音楽はフィリップ・サルド(1948〜)が作曲しており、これは本スコアの初リリースで、Music
Boxレーベルによるフランスのテレビドラマ・スコアのシリーズ「Les Grandes Musiques du Petit Écran/Great
Television Soundtracks」の第7弾。500枚限定プレス。「Générique début」は、スリリングでドラマティックなメインタイトルで、サルドらしい繊細で精密なタッチが秀逸。「Dispute」は、フルートとストリングスによる静かにジェントルな曲。「Le
cours」「Une soirée délicieuse」「Confidence」「Stanislas malade」「Visite nocturne」「Le
marquis de La Mole」「Confessions」「Aveu」「Jugement」は、静かにドラマティックなタッチの曲。「Bonaparte」「Les
adieux」「Mariage refusé」は、スリリングなタッチのジュリアンの主題。「Adultère」は、ストリングス、トランペット、ピアノによるジェントルでドラマティックなタッチで、サルドの個性が良く出た名曲。「Baignade
champêtre」「Le portrait」は、静かに繊細でジェントルな曲。「Passion」「Louise
blessée」は、美しくドラマティックなルイーズの主題。「Arrivée du Roi」は、明るく快活なタッチの曲。「Messe
(Te Deum)」は、荘厳な讃美歌。「Le séminaire」「Fiançailles
rompues」「Exécution de Julien」は、コーラスを織り込んだメランコリックでドラマティックなタッチの曲。「Visite
clandestine」「La lettre de Louise」は、メランコリックで美しい曲。「Julien et
Mathilde」「Tourment」は、ピアノによる繊細でジェントルなマチルドの主題。「Valse de la
passion」は、美しく華麗なワルツ。「Passion tumultueuse」「Cavalcade」は、躍動的でダイナミックな曲。「Le
Rouge et le Noir」「Épilogue」は、オルガンをフィーチャーした荘厳でドラマティックなバロック調の曲。「Appel
rejeté」「Derniers instants」は、静かにジェントルで美しい曲。「Générique fin」は、美しくドラマティックなエンドタイトル。最後にボーナストラックとして、コーラスなしの「Messe
(Te Deum) (sans chœurs)」「Le séminaire (sans chœurs)」「Exécution de Julien (sans
chœurs)」、ア・カペラによる「Le séminaire (A cappella)」「Fiançailles
rompues (A cappella)」「Messe (Te Deum) (A cappella)」「Exécution de Julien (A
cappella)」を収録。
スタンダールが賞賛したバッハ、ワグナー、ロッシーニといった19世紀のクラシック音楽にインスパイアされたスコアで、ロンドン交響楽団とメトロ・ヴォイシーズの合唱によりアビー・ロード・スタジオで録音されている。フィリップ・サルドが「とまどい」(1995)「ポネット」(1996)「(未公開)愛と復讐の騎士」(1997)「溺れゆく女」(1998)といった優れたスコアを連作していた時期の作品で、ファンとしては嬉しいリリース。オーケストレーションはユベール・ブージス、合唱指揮はジェニー・オグラディ、ピアノはハワード・シェリーの演奏。
(2023年1月)
Philippe Sarde
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