L.A.コンフィデンシャル L.A. CONFIDENTIAL

作曲・指揮:ジェリー・ゴールドスミス
Composed and Conducted by JERRY GOLDSMITH

演奏:ハリウッド・スタジオ交響楽団
Performed by the Hollywood Studio Symphony

(米Varese Sarabande / VCL 1122 1230)


1997年製作のアメリカ映画(日本公開は1998年7月)。製作・監督は「ゆりかごを揺らす手」(1991)「激流」(1994)「ワンダー・ボーイズ」(2000)「8 Mile」(2002)等のカーティス・ハンソン(1945〜2016)。出演はケヴィン・スペイシー、ラッセル・クロウ、ガイ・ピアース、ジェームズ・クロムウェル、キム・ベイシンガー、ダニー・デヴィート、デヴィッド・ストラザーン、ロン・リフキン、マット・マッコイ、ポール・ギルフォイル、パオロ・セガンティ、エリザベス・グランリ、サンドラ・テイラー、サイモン・ベイカー=デニー、ブレンダ・バーキ他。「ザ・コップ」(1987)「ブラック・ダリア」(2006)「フェイク シティ ある男のルール」(2008)等のジェームズ・エルロイ(1948〜)の原作を基に、「ミスティック・リバー」(2003)「マイ・ボディガード」(2004)「ボーン・スプレマシー」(2004)「サブウェイ123 激突」(2009)等の脚本や「ペイバック」(1999)「悪霊喰」(2003)「42 〜世界を変えた男〜」(2013)「レジェンド 狂気の美学」(2015)等の監督を手がけているブライアン・ヘルゲランド(1961〜)とカーティス・ハンソンが脚本を執筆。撮影はダンテ・スピノッティ。

1953年のロス・アンジェルス。ダウンタウンのカフェで元刑事を含む6人の男女が惨殺され、ロス市警は捜査を開始。事件の背後に白ユリの館と呼ばれるハリウッド女優に似せた娼婦たちを擁する売春組織の存在が浮かぶ。殺された刑事の相棒だった熱血漢のバド・ホワイト刑事(クロウ)は、高級娼婦リン・ブラッケン(ベイシンガー)に接近するが、いつしか彼女と恋に落ちる。野心家で出世のためには手段を選ばないエド・エクスリー警部補(ピアース)は、捜査方針をめぐってバドと対立。そこでエドは『LAコンフィデンシャル』というタブロイド誌の記者シド・ハジェンス(デヴィート)と結託して羽振りをきかせる狡猾なジャック・ヴィンセンス刑事(スペイシー)に協力を求める。捜査が進むうち、街のボスだったミッキー・コーエン(ギルフォイル)逮捕後の縄張りをめぐるヘロイン取引等の利権争いが事件に絡んでいることが判明するが……。演出・脚本・個性派俳優の競演、スコアと、いずれも第一級の犯罪サスペンス。1997年度アカデミー賞の作品賞、監督賞、撮影賞、音楽賞(オリジナルドラマ)、美術賞、音響賞、編集賞にノミネートされ助演女優賞(キム・ベイシンガー)と脚色賞を受賞している他、同年の全米批評家協会賞の監督賞、脚本賞、NY批評家協会賞の監督賞、脚本賞、LA批評家協会賞の監督賞、脚本賞、撮影賞、ゴールデン・グローブの助演女優賞を受賞している。製作費は約3500万ドル、全世界興行収入は約1億2622万ドル。

音楽は「激流」(1994)でもカーティス・ハンソン監督と組んでいるジェリー・ゴールドスミス(1930〜2004)で、上述の通り彼はこのスコアでアカデミー賞にノミネート(17回目)されている。このスコアは製作当時の1997年にVarese Sarabandeレーベルより全11曲/約30分収録のサントラCD(Varese Sarabande VSD-5885)が出ていたが、同じVareseレーベルが2022年11月にリリースしたこのThe Deluxe Edition CDは全39曲/約73分収録で、2000枚限定プレス。CDの前半に映画で使用されたスコア、後半に1997年のサントラ盤の内容を収録。「Bloody Christmas」は、シンセのリズムに重厚なティンパニが加わり、パワフルなブラスとストリングスによるダイナミックでスリリングな主題へと展開する曲。「Turn It in / The Deal」「Susan Lefferts」「The Facts」「Ex-Cop」「Patchett's Dead」は、抑制されたサスペンス音楽。「The Badge」は、トランペットとピアノによる抑制されたタッチの曲。「The Café」「Late Arrival / The Raid」は、トランペットとピアノをフィーチャーした不吉なサスペンス音楽。「The I.D. / Odds」は、パーカッションとブラスによる抑制されたサスペンス音楽。「Questions」「Back-Up」「Don't Move」「Good Lad」は、パーカッシヴなサスペンス音楽。「Bud and Lynn」「False Information」は、トランペットによる気だるくハードボイルドなバドとリンの主題で、ゴールドスミスの傑作スコア「チャイナタウン」に通ずるタッチ。「Rats / A Gift」「The Perp / Know Him?」は、ダークで不吉なタッチのサスペンス音楽。「Rodents」「Rollo Tomasi」「Not So Dumb After All」「Out of the Rain」は、トランペットをフィーチャーした抑制されたサスペンス音楽。「Photos」「Records」「Out the Window」「Shootout」は、パーカッシヴでダイナミックなサスペンスアクション音楽。「The Keys」は、リズミックなサスペンス音楽。ラストの「The Victor」は、ジェントルなトランペット・ソロから大らかなホルンに展開するエンディング。

ジェリー・ゴールドスミス自身が作曲家としてのキャリア初期を過ごした1950年代ロス・アンジェルスで展開するハードボイルド・ミステリの情感を見事に表現したスコアで、同じくL.A.を舞台にした「チャイナタウン」のスコアと同様、トランペットがメインの楽器としてフィーチャーされている。オーケストレーションはアーサー・モートンとアレクサンダー・カレッジ。トランペットとフリューゲルホルンのソロはマルコム・マクナブ。
(2023年1月)

Jerry Goldsmith

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